新国立劇場における芸術監督とその役割

新国立劇場が果たす役割は、国際的水準の質の高い舞台芸術作品を自ら企画・制作し、日本の文化発信の拠点のひとつとなることです。同時にできるだけ多くの観客の皆様が集い満足していただく劇場となるという使命があります。新国立劇場の運営責任は新国立劇場運営財団が担っていますが、公演の芸術面は、オペラ、舞踊、演劇の三人の芸術監督がそれぞれの部門の最高責任者として、芸術上の責任を負っています。

芸術監督の仕事

新国立劇場が主催する公演は、高い芸術性を創生しつつも国民の皆様からのご支援と共感を得なければなりません。この二つの難しい課題をともに果たすために、芸術監督は、担当分野の芸術面での最高責任者として、劇場全体としてふさわしいかどうかについても考慮したうえで、シーズンごとのラインアップの決定とひとつひとつの公演の責任を負っています。

芸術監督の任期と就任まで

芸術監督の任期は、一期4年で、再任されることもあります。
次期芸術監督予定者は、公演の企画と制作に長い時間を要する舞台芸術の特性から、現監督の任期(4年)が満了する2年前に選考され、監督就任までの2年間は芸術参与として監督になってからの公演の諸準備に当たります。

芸術監督の選任

次期芸術監督予定者の選任については、財団の規程に定められており、オペラ、舞踊、演劇の部門ごとの選考委員会において審議されます。この委員会は、理事、評議員及び外部委員10名以内の委員で構成されます。ここでの審議の結果は、直近の理事会に諮り、その決議を経て、理事長が芸術参与(次期芸術監督予定者)を任命します。その後、芸術参与としての2年間の後、定款に基づき、理事会の決議を経て理事長が芸術監督に任命します。

選考委員会や理事会での議論の内容は人事に関するものであり、他の組織や事業体と同様に公表しておりません。その理由は、席上多くの個人名やその資質、評価などが話し合われており、自由闊達なご意見をいただくために非開示を前提としているからです。

芸術性と採算性

新国立劇場の運営は、貴重な国の税金が投入されるとともに、観客の皆様の入場料をはじめとして民間企業や多くの個人の寄付金・協賛金によって成り立っています。新国立劇場運営財団は、国立ゆえに「採算性に縛られず」に活動することが許されるとは考えておりません。

国や日本芸術文化振興会からの事業委託費が毎年削減されるなかで、芸術性と採算性のバランスの調和を図りながら、企画・制作を効率的に推進し、より質の高い公演を内外に発信することが求められています。
その実現のために、芸術監督をはじめ、劇場役職員一同は、我が国の現代舞台芸術の拠点としての充実と発展を図るために努力を続けています。

歴代芸術監督

<オペラ>
畑中良輔(1993年4月~1999年6月)
五十嵐喜芳(1999年7月~2003年9月)
トーマス・ノヴォラツスキー(2003年10月~2007年8月)
若杉弘(2007年9月~2009年7月)
尾高忠明(2010年9月~2014年8月)
飯守泰次郎(2014年9月~2018年8月)
大野和士(2018年9月~)

<舞踊>
島田 廣(1993年4月~1999年6月)
牧 阿佐美(1999年7月~2010年8月)
デヴィッド・ビントレー(2010年9月~2014年8月)
大原永子(2014年9月~2020年8月)
吉田 都(2020年9月~)

<演劇>
藤田 洋(1993年4月~1996年3月)
渡邊浩子(1996年4月~1998年6月)
栗山民也(2000年7月~2007年8月)
鵜山 仁(2007年9月~2010年8月)
宮田慶子(2010年9月~2018年8月)
小川絵梨子(2018年9月~)