舞踊芸術監督
吉田都

新国立劇場バレエ団は1997年の発足以来、目覚ましい発展を遂げてきました。レパートリーは19世紀の古典作品から、20世紀の名作、現代の振付家の作品まで多岐にわたります。このような発展を遂げられたのも、歴代の芸術監督の強い信念と、ダンサーたちの鍛錬の賜物であり、芸術監督としての私の使命は、それらをしっかりと受け継ぎつつ、私自身が海外で学んだ経験も生かし、バレエ団をさらなる飛躍に導くことであると考えています。

上演する演目は、バレエ団のレベル維持に欠かせない古典を中心としながらも、優れた現代作品をバランスよく取り入れ、ダンサーたちの様々な面を楽しんでいただける幅広いラインアップを目指します。同時に、劇場の財産となるような新たな作品づくりにも挑んでまいります。バレエ団では、ダンサーたちの振付家としての才能を発掘し、育成するプロジェクトを実施していますが、将来的にはその中から生まれた作品も、積極的にラインアップに取り入れていく所存です。

一方で、継続して質の高い舞台をつくっていくためには、ダンサーたちの働く環境の整備が重要です。国立のカンパニーとは言え、新国立劇場バレエ団のダンサーたちを取り巻く状況には、まだまだ改善の余地があります。彼らが自らの職業に誇りを持ち、仕事に集中できる環境を整えることも、劇場の果たすべき大切な役割のひとつであると考えています。

その他、教育普及プログラムやチャリティ公演の実施等、バレエを通じた社会貢献活動の充実も視野に入れつつ、日本で唯一、国立の劇場に所属するバレエ団としてふさわしいカンパニーを目指します。ひとりでも多くの方に劇場に足を運んでいただき、バレエの魅力に触れていただけるよう尽力してまいりますので、引き続き温かいご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

プロフィール

9歳でバレエを習い始め、1983年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞受賞。同年、英国ロイヤルバレエ学校に留学。84年、サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ(現バーミンガム・ロイヤルバレエ)へ芸術監督ピーター・ライトに認められて入団。88年にプリンシパル昇格。95年に英国ロイヤルバレエへプリンシパルとして移籍、2010年に退団するまで英国で計22年にわたり最高位プリンシパルを務める。
日本国内では1997年の開場記念公演『眠れる森の美女』をはじめ、新国立劇場バレエ公演での99年『ドン・キホーテ』『シンデレラ』、2000年『ラ・シルフィード』、04年『ライモンダ』ほか、数多くの公演に主演している。
ローザンヌ国際バレエコンクール審査員を務めるほか、後進の育成にも力を注いでいる。バレリーナとしての功績と共にチャリティ活動を通じた社会貢献が認められ、04年「ユネスコ平和芸術家」に任命される。12年には国連UNHCR協会国連難民親善アーティストに任命。
01年芸術選奨文部科学大臣賞、06年英国最優秀女性ダンサー賞、11年第52回毎日芸術賞など受賞多数。07年に紫綬褒章並びに大英帝国勲章(OBE)受賞、17年文化功労者、19年菊池寛賞。