舞踊芸術監督
吉田都

2020/2021シーズンより新国立劇場の舞踊芸術監督に就かせていただくことになりました。
この劇場とは1997年に開場記念公演『眠れる森の美女』でオーロラ姫を踊らせていただいたご縁がありますので、今回の拝命は身の引き締まる気持ちがあるとともに、ご縁ある場所での新たな活動を楽しみにする思いもあります。
新国立劇場バレエ団はこの23年間でめざましい発展を遂げてきました。これは歴代の芸術監督の強い信念、そしてダンサーたちの情熱と鍛錬の賜物です。こうして積み上げてこられたことを大切にしつつ、私が海外で学んできたことを惜しみなく伝えることで、新国立劇場バレエ団のさらなる進歩を目指して参ります。
バレエ公演では古典作品の上演を中心に、クラシックバレエの伝統を守りつつ、大原芸術監督が推し進めていらっしゃる「テクニックだけではなく表現力の向上」を引き続き目指してゆきたいと考えております。あわせて、新国立劇場バレエ団の宝となるような新たな作品創りにも挑戦していく所存です。

2020/2021シーズンの幕開けとして『白鳥の湖』を新制作にて上演する予定でおりましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の世界的影響により、来年秋に延期することが決定いたしました。
『白鳥の湖』の上演延期に伴う代わりの演目には、世界中の人々にとって未曾有の脅威となった今回の出来事をバレエ団一丸となって克服し、大原現監督からのバトンを引き継ぐ意味も込めて、この5月に上演が予定されていた『ドン・キホーテ』を選びました。依然として先の見えない状況ではありますが、ダンサーと共に一歩ずつ励んでいく所存ですので、是非公演を楽しみにお待ちいただければ幸いです。
クリスマスシーズンの12月にはイーグリング振付の『くるみ割り人形』を、新春の「ニューイヤー・バレエ」では新国立劇場バレエ団初演となるバランシンの『デュオ・コンチェルタント』、久々の上演となるビントレーの人気作品『ペンギン・カフェ』、そして古典バレエ『パキータ』抜粋の3作品をお楽しみいただきます。
2月のトリプル・ビル公演「吉田都セレクション」では『テーマとヴァリエーション』に加え、2つの新制作バレエを上演いたします。現在世界各国で活躍している振付家デヴィッド・ドウソンがJ.S.バッハのピアノコンチェルトに振り付けた『A Million Kisses to my Skin』。もうひとつは巨匠ハンス・ファン・マーネンがA.ピアソラのタンゴとバレエを融合させた大人のバレエ『ファイヴ・タンゴ』です。こちらのプログラムではダンサーたちのこれまでにない、いろいろな面をご覧になれると思います。
5月のゴールデン・ウィークにはお洒落でエスプリのきいた、プティによる『コッペリア』を、6月にはルイザ・スピナテッリの格調高く美しい衣裳と美術も楽しめる、牧阿佐美改訂版のグランドバレエ『ライモンダ』でシーズンを締めくくります。

ダンス公演では、新国立劇場で生まれた名作の一つ『Shakespeare THE SONNETS』を新国立劇場バレエ団のダンサーを含めたキャストにより再々演いたします。この作品は2011年の初演以来、中村恩恵と首藤康之の代表作として高い評価を受けてきました。たった二人で演じるシェイクスピア作品の登場人物を、今回は首藤氏と共に、新国立劇場バレエ団のプリンシパル・ダンサーがダブルキャストで演じます。
3月の『舞姫と牧神たちの午後 2021』は、日本を代表する振付家・ダンサー達が競演するダンス・コンサートです。2005年に同じ企画で上演された公演から生まれ、幾度となく再演を重ねた『Butterfly』(振付:平山素子&中川 賢)と「DANCE to the Future 2019」で発表された『Danae』(振付:貝川鐵夫)の2作品で、新国立劇場バレエ団のダンサー達も参加いたします。
7月には実力と個性を持ち合わせたメンバーによる迫力ある群舞などにより、日本を代表するコンテンポラリー・ダンスカンパニーとして活躍するCo.山田うんが登場いたします。国内外で意欲作を発表してきた勢いのあるカンパニーの、大人もこどもも楽しめる新作ダンス公演にどうぞご期待ください。

歴代の芸術監督が築き上げてこられた実績に恥じぬよう、より一層、皆様にご満足いただけるよう精一杯努めて参りたいと思っております。新国立劇場のバレエ、ダンス公演にたくさんのお客様がお越しくださることを心より願っております。

プロフィール

9歳でバレエを習い始め、1983年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞受賞。同年、英国ロイヤルバレエ学校に留学。84年、サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ(現バーミンガム・ロイヤルバレエ)へ芸術監督ピーター・ライトに認められて入団。88年にプリンシパル昇格。95年に英国ロイヤルバレエへプリンシパルとして移籍、2010年に退団するまで英国で計22年にわたり最高位プリンシパルを務める。
日本国内では1997年の開場記念公演『眠れる森の美女』をはじめ、新国立劇場バレエ公演での99年『ドン・キホーテ』『シンデレラ』、2000年『ラ・シルフィード』、04年『ライモンダ』ほか、数多くの公演に主演している。
ローザンヌ国際バレエコンクール審査員を務めるほか、後進の育成にも力を注いでいる。バレリーナとしての功績と共にチャリティ活動を通じた社会貢献が認められ、04年「ユネスコ平和芸術家」に任命される。12年には国連UNHCR協会国連難民親善アーティストに任命。
01年芸術選奨文部科学大臣賞、06年英国最優秀女性ダンサー賞、11年第52回毎日芸術賞など受賞多数。07年に紫綬褒章並びに大英帝国勲章(OBE)受賞、17年文化功労者、19年菊池寛賞。