「キーン 或いは狂気と天才」の立ち稽古も佳境に入って来ました。
木の地肌むき出しの、稽古用の大道具。仮の稽古着に仮の小道具。それぞれに確固たる存在理由もなく、息吹がありません。稽古場の始まりは、何となくモノトーンの世界です 。
やがて全体を通して稽古したり、改めて各場面を丁寧に何度か繰り返し、芝居がじっくりと練られていきます。演出家の狙いもそれぞれの俳優に伝わり、稽古場にも本番用の衣裳・小道具が続々と集まり、様々なモノが絶妙に組み合っていきます。
俳優の中に新たな人格が生まれていき、俳優はもちろんスタッフが扱う小道具・衣裳にも命が吹き込まれていき、それぞれの場所でちゃんとその存在理由を自己主張をし始めます。
しかし一方では、はたしてそれがイメージ通りなのか、実際に使ってみて不都合がないか、全体のトーンにちゃんと調和しているか、そんなことを各部署のスタッフが、確かめています。
音楽もできあがりました。演奏者はそれに熟練し、芝居の要求にいつでも応えられるようになってます。音響関係のスタッフは、それに合わせて、客席のどこでもちゃんと聞こえるように、仕掛けを考えています。
遠く離れた大道具の工場では、突貫工事で大道具が作られていっています。デザイナーが現場で、細かく指示を出しています。
衣裳も揃ってきました。実際に着る人間に合わせて変更や、生活感を出すための工夫があったり、ぎりぎりま作業が続きます。衣裳に合わせた髪型も決まれば、衣裳に合わせ装身具もあります。
目に見えて、急に稽古場が色つき始めました。
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