演劇研修所ニュース

第20期生 広島国内研修レポート

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2026年8月8日(土)より上演の朗読劇『風が吹くとき』は、イギリスの田舎町でのどかに暮らす夫婦のもとに世界戦争勃発と核ミサイル飛来の一報が届いてからの数日を描いたレイモンド・ブリッグズの作品です。その稽古開始に際し、被爆地・広島に赴き、原爆の被害や放射線の及ぼす影響の大きさ、平和の大切さを学ぶ3泊4日の現地研修を行いました。この国内研修は、「全日本空輸株式会社による新国立劇場若手俳優育成のための国内研修事業支援」により実現しました。

研修生たちにとってこの4日間は、作品の前提となる知識を得ると同時に、歴史を知ること・学ぶことの重要性を再確認する大変貴重な機会となりました。

研修生からの感想と共に、研修の様子をお届けします。


1日目
【見学場所】原爆ドーム、広島平和記念資料館

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原爆ドーム
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島平和記念資料館の前で

広島に到着後まず向かったのは、原爆ドーム、そして広島平和記念資料館です。

1日目は広島平和記念資料館に行きました。資料館では被爆体験伝承講話も聞かせていただきました。その中で現在被爆体験を語ることのできる方が少なくなっているため、伝承者の方々が様々な活動を通して被爆体験を残そうとしている取り組みがあることを、今回初めて知ることができました。そして実際の衣服や焼け焦げたお弁当箱などの展示を見たり、当時の人の声を間近で感じて、深く心に突き刺さるものがありました。この日は台風の影響もなく良い天気で、広島の綺麗な空や街の中で、平和について改めて考える1日となりました。



2日目
【見学場所】袋町小学校平和資料館、旧日本銀行広島支店、本川小学校平和資料館、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館、被爆遺構展示館


2日目は、1日目の平和記念資料館の見学を踏まえ、広島市内を見学しました。
袋町小学校では、当時書かれた伝言板がそのまま残っており、自分が負傷しながらも多くの人が家族の安否を知りたいとこの学校に訪れた事がわかりました。
旧日本銀行広島支店は、原爆投下の2日後から営業を再開した銀行です。実際にその営業所の窓口などを拝見する事ができました。
この日最後に見学したのは本川小学校です。爆心地からおよそ410mととても近い距離で被爆した小学校には、地下の焼け焦げた部分がそのまま残っていました。81年前の状態を生で見学することで、当時の悲惨さをよりリアルに考える事ができる貴重な時間を過ごしました。

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旧日本銀行広島支店
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爆心地である島病院前の石碑

3日目
【見学場所】平和記念公園、平和記念公園レストハウス、放射線影響研究所

3日目の午前中は「PEACE PARK TOUR VR」に参加しました。平和記念公園内の5つのスポットでVRゴーグルを装着し、原爆投下前と後を疑似体験することで当時の状況を鮮明に感じることが出来ました。午後は放射線影響研究所の見学をしました。放射線は日常に溢れており、私たちの生活の中でよい使い方が出来る一方で、それに苦しむ人がいるのも事実だということを考え続けなくてはいけないと感じました。

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平和記念公園内「原爆の子の像」の前で
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4日目
【見学場所】宮島、厳島神社


最終日には宮島を訪れました。世界遺産である厳島神社を参拝し、公演の成功を祈願しました。また、戦国時代から武将たちが能を奉納してきた、国内唯一である海上の能舞台を拝見し、舞台芸術の歴史を実感するとともに、身の引き締まる思いでした。宮島は、広島での慰問演劇公演の中で被爆した俳優・丸山定夫が亡くなった地です。今回の研修で学んだことを思い返し、81年前に原子爆弾の投下により被爆された方々へ思いを馳せるとともに、今過ごすことができている時間のかけがえのなさを深く感じました。

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厳島神社
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海上の能舞台

~4日間を振り返って~

・今回の広島研修を通して、これまで学んできた事以上に核兵器の実相を知り、体感する事ができました。現代において多くの情報を得ることは容易です。しかし歴史的な出来事として何が起こったか以上にその時代、その場所で人が何を思いながら生きていたのかということを知ることは、実際の場所で残された資料や言葉を通してでしか感じる事ができないと改めて思いました。広島で感じたことは俳優である以上に人として、きちんと知った上で考え続ける必要のあるものだと国内研修を通して考えました。そして広島で生きていた人たちの人生を知り、感じた上で作品を真摯に作っていきたいと思いました。


・学校での勉強、映画などで広島で何が起きたかは知っていた。しかし実際に広島に行って広島平和記念資料館で資料や証言を見ても、原爆ドームを見ても、被曝建造物を見ても、何が起きたらこうなるのかと言う疑問しか出てこなかった。本当に起きた出来事なのか。想像も絶する事というのは本当に起きないと実感できないのだと恐怖を感じたのを覚えている。戦争という言葉の重み、二度と起こしていけないという意味が心に刻み込まれた4日間だった。


・今回の研修を経て一番強く残ったのは、当時確かにそこにあった人々の生活でした。広島には、お一人お一人が日々を生きていらっしゃった証が、そしてその日々が奪われてしまった痕跡が至るところにありました。どんなことがあっても奪われていいはずがない。とても他人事ではいられませんでした。展望台から眺めた広島の街には、原子爆弾の痕跡を残し、当時のことを語り続ける場所と、今この時を息づいている広島の街、今この時を広島で生きていらっしゃる方々の営みがありました。生きていく人の力強さと、そのかけがえのなさ、尊さを感じました。今この世界を生きる一人の人間として私にできることを考え続けながら、朗読劇『風が吹くとき』を大切に作って参ります。


・4日間の研修を経て、現地でしか得られないものをたくさん学びました。それまで知識としてしか認識できていなかった原爆の事や、放射線の事をよりリアルに想像できるようになりました。それでもまだ考える事や調べたい事は尽きません。広島に行った事でやっと第一歩を踏み出せたような気がします。今このときにこの作品を上演する理由、私達が俳優として平和に対してできる事は何かを考えながら、作品と向き合っていきたいです。


・今回の国内研修では、ANA様のご支援のおかげで大変貴重な4日間を経験させていただきました。広島を訪れ、被爆の実相や放射線被害について実際に見て学んだことで、原爆は決して過去の出来事ではなく、未来へ語り継ぐべき歴史であると強く感じました。また、広島の人々の歴史や日常に触れたことで、作品や平和について考える視点が大きく変わり、表現者としても多くの学びを得ることができました。この経験を忘れることなく、これからは原爆の被害について考え続け、自分の表現を通して学びを生かしていきたいと思います。


・広島で過ごした4日間は今回の公演のための研修というだけでなく、自分がなぜこの先も演劇を続けていきたいのかをより明確にするための機会だったのかもしれません。原子爆弾についての事実に触れるうちに、原爆による日常の破壊はあまりにも突然で、もう二度と繰り返してはならないのだと改めて強く感じました。研修先でお話を聞かせてくださった方々と同じように、私は芝居という手段で伝えているのだと、自分にできることとは何かを考え続けます。

・袋町小学校を訪れた際に、担当の方が私たちの質問に対して丁寧に当時の様子を伝えてくださるだけでなく、私と一対一で会話してくださったことが印象に残っています。情報が溢れるこの社会で、検索すればすぐに事実や手段を知ることはできますが、人と直接話さなければわからない温度や感覚があると感じました。私は戦争に対して負のイメージが大きく、見るだけ考えるだけで悲観的になるところで止まっていました。しかし、広島で出会った皆さんには、感情だけで喋るのではなく、事実をきちんと伝える力強さがありました。平和ボケしている私たちの心に今一度、「安らかに眠ってください 同じ過ちは繰り返しませぬから」という碑文を刻み、日々を歩みたいと思います。


・今回の広島研修を通して、「調べても調べても 全然足りない」ということを痛感しました。私はこれまでの人生で戦争は一度も経験したことがありません。体験談を読んだりするので精一杯です。1945年8月6日に広島で起きた事の苦しみや辛さはどれだけ考えても一生わからないと思います。私たちにできる事は ただ、忘れないことだと思います。世界を平和にする!なんて事は私の力では到底無理な話に感じますが、起きたことをただ忘れない。日本人として 誰かの心に残し続けることが私たちの役目だと思います。そして、私はそれを演劇を通じて誰かの心に残したいと思いました。

・国内研修で81年前原子爆弾が実際に投下された地である広島を訪れることが出来たことは大きな経験でした。今も残っている被爆した小学校は、自分の通っていた小学校と同じ様な普通の小学校でした。原子爆弾は日常の中に突然やってきて、一瞬で多くのものを奪っていった。今生きている私と81年前に被爆した小学生はなんら変わらぬ人間なのだと感じました。実際に足を運んだからこそ深く感じることができました。