演劇研修所ニュース
第17期生 朗読劇『ひめゆり』稽古場だより
いよいよ8月10日(木)に初日を迎える朗読劇『ひめゆり』。この公演が新国立劇場小劇場デビューとなる第17期生から、この朗読劇にかける意気込みと見どころを日替わりでお届けいたします。
石垣伸子役:根岸美利(ねぎし・みり)
【意気込み】
沖縄戦から78年経った現在。
戦争を体験された語り部の方々が減っていく中、私たちが次世代の語り部として伝えていくことに、強い使命感を感じています。
沖縄研修を経て、つい最近、出演者同士で、実際の場所を想像して体験する「旅ワーク」というものをしました。壕の中の体験をしたのですが、外から聞こえてくる様々な人の声や、艦砲射撃や空襲の音、新たに壕に入ってくる兵隊さん等...本当の戦争を体験した方々からしたら、そんな簡単に表されるものではないと思われるかもしれませんが、私はその時、ひめゆり学徒隊として傷ついた人を助けなければいけないのに、今まででは味わったことのない恐怖が襲ってきて、全く動くことができませんでした。それでも兵隊さん達を必死に看病し続けた、当時の学徒隊の方々の勇気は、本当に計り知れないと思いました。
たくさん知り、たくさん感じたことと真摯に向き合い、私の心と身体を通じて演じる"石垣伸子"、ひいては、朗読劇『ひめゆり』という作品が、1人でも多くの方に「平和の尊さ」を考えるきっかけになれるように、魂を込めてお届けいたします。
【見どころ】
戦争が始まってからの彼女たちが体験したこと、でもそれ以前に、学生生活を楽しんでいたこと、「教師になる」という目標を持って勉強を頑張っていたこと、そして何より、沖縄の地をとても愛していたことも、この朗読劇『ひめゆり』の魅力です。
それらの魅力を詰めて、朗読劇ならではの、「言葉」を大事に、みなさんの想像力を掻き立てます。
岡田勝義、杉田少尉 ほか役:樋口圭佑(ひぐち・けいすけ)
【意気込み】
私は「戦争」のことを歴史の教科書や海外のニュースでしか認識していませんでした。それは私が「平和」な生活をしてきたということだと思います。
戯曲に書いてある文字をただ読むのではなく、生きている人間が発する目的をもった「言葉」にするために、戯曲を何度も読み、他の本や映像などの資料で当時のことを調べ、現地の沖縄にも行かせて頂きました。
「平和」は当たり前ではありません。数年後、再び戦争が起こるかもしれません。一人の「人間」として、あくまで心情ではなく事実を、朗読劇という形で「言葉」を届けたいと思います。
【見どころ】
この作品は78年前の沖縄戦をひめゆり学徒隊の方たちの視点から描いています。悲惨な場面もありますが「将来は教師になる!」と夢見る生徒たちの姿は、ただ環境や時代が違うだけで、現代の若者と何も変わらないと思います。
昔の戦争の話だという先入観は捨てて、今の自分にもつながる話だと思って、観て頂きたいです。
島袋キヨ役:小林未来(こばやし・みく)
【意気込み】
年月が流れ、戦争体験者である語り部の方が年々少なくなっている今日、戦争を知らない私達が過去の出来事に歩み寄り、思いを馳せなければ、大切な記憶が失われていってしまう。そのことに恐怖を感じ、また、自分がやらなければという責任を感じています。
現代に生きる私達が、過去に生きた方々を演じることの意味。そして、この過去の出来事を「朗読劇」という手法を用いて上演することの意義を模索しながら、台本に書かれている言葉一つ一つと向き合う日々です。
この作品を「過去にそんなことがあったんだ」で終わらせないために。
向き合い続けます。
【見どころ】
この物語は、決して現在と無関係ではない、過去に実際に起きた出来事のお話です。
ご覧いただく登場人物の一人ひとりには、それぞれに抱える思いがあり、人生があります。舞台上で懸命に生きる人々を、どうかじっくりと観て、感じていただきたいと思います。 劇場でお待ちしております。
東風平恵位役:田崎奏太(たさき・そうた)
【意気込み】
音楽教師の東風平恵位を演じます。宮古島出身の彼は生徒への愛が深く、最期まで教師としての使命を全うした人物です。そんな彼に対する愛と尊敬の念が日々深くなってゆくのを感じています。
戦時を生きた人々を演じることには大いなる責任が伴います。最期まで全力で生きた彼らのご意志、ご遺族の方々、すべてに敬意を表して舞台に立ちます。
朗読劇『ひめゆり』に終わりはありません。この物語は現在までずっと続いているのです。劇を観る人にとって、戦争という人類にとっての永遠のテーマを改めて考えるキッカケになる作品にできるよう本番当日まで邁進していきます。
【見どころ】
朗読劇では俳優の「声」というものが何よりも大切になります。我々研修生が日々研鑽を積んで、鍛え上げてきた明瞭で聴き心地の良い声でお送りする朗読劇『ひめゆり』を是非とも劇場に足を運んで観劇していただきたく思います。私が独唱する童謡「ふるさと」は必見です。
西平英夫役:立川義幸(たてかわ・よしゆき)
【意気込み】
今回、朗読劇『ひめゆり』という作品に向き合う上で一番に心がけることは、責任感です。実際に起きた戦争を題材とした作品を扱うこと、そして実際にその戦時下の中で生きていた人を演じること、決して生半可な気持ちではいられません。
沖縄へ行き、壕やガマを見学したり、語り部の方のお話を伺ったりしたことは、私たちにとって本当に良い経験となりました。
自分たちは、色々な人に協力していただいて、さまざまな方の想いを受け継いでこの作品を演じる。そして戦争を知らない世代に、沖縄戦がどういうものだったかを、俳優として語り継ぎ、観客の皆様に想いを手渡しできたらと思っています。
この作品をご覧になった後、何か一つでも残るモノがあればと願います。
【見どころ】
みどころは、解散命令後の最後の指示を出すところです。私が演じる西平英夫さんは学徒隊長で、戦時下色々な決断を迫られました。何度も引き裂かれる思いをしたなかで、いよいよ最後の指示を出すとき、たくさんのジレンマ、矛盾を感じながらも隊長として言葉を喋ります。自分を律して言葉を選ぶ姿を、生徒を愛する1人の先生の姿を感じていただければと思います。
仲宗根政善役:佐々木優樹(ささき・ゆうき)
【意気込み】
「戦争を経験し苦しんだ方たちが、戦争が終わった今も、苦しいなか 戦争を語り続けている。平和な世界を守るため 今も苦しみながら闘っている。」
沖縄での研修の際に、現地のガイドの方が伝えてくださった言葉です。
決して当たり前ではない 幸せ に溢れた僕たちの毎日
「今」を生きる自分たちに出来ることはなんだろう
自分たちの祖父・祖母の世代が繋いでくれた平和のバトンを今度は自分がしっかりと受け継いでいかなければならない、繋いでいきたいと強く思いました。
史実やデータからだけではわからない、沖縄戦で起きたこと、その事実を、舞台を通して、「今」を生きる人たちに感じてもらえるように、精一杯努めます。
【見どころ】
沖縄戦を生きた方たちの葛藤です。
「死とはなんだ、生とはなんだ、義とはなんだ」
守りたい信念を貫く選択肢がなくなったとき、人はどう決断するのでしょうか。
学徒隊生存者の方たちは 人間が人間でなくなる それが戦争だと語ります。
教員たちの生徒を守りたい想い、学徒隊の傷ついた兵隊さんを1人でも救いたいという想い、その想いに のしかかる戦争の実態。
彼等は沖縄戦をどのように生き、どのような決断に迫られていたのか、彼等の葛藤を届けることで、「今をどう生きるか」のエネルギーになりたいです。
守下ルリ役:飯田桃子(いいだ・ももこ)
【意気込み】
「語る」とはどういうことか。
私は、人の想いを繋ぎ、これからを生きる人達に渡すことだと思います。そしてそれは死者の想いであっても、生者の想いであっても、同じように大切に渡す必要があると思います。
17期生としての初舞台は、沖縄戦を題材とした朗読劇です。
私は「語る」1人として、覚悟をもって舞台に立ちます。
戦争を体験していない私達が今できることは、事実を正面から伝えることです。
私達の身体を通して言葉にするからこそ、お客様に想像していただけるものや渡せるものがあると信じて、誠実に向き合っていきます。
【見どころ】
私は、守下ルリさんを演じます。
ルリさんは、実際にひめゆり学徒隊として戦時中を懸命に生き抜き、戦後もその体験を後世に語り継いでくださっていた方です。
沖縄で古くから大切にされている「命どぅ宝」という言葉。これは、おきなわの言葉で「命こそもっとも大切だ」という意味です。
この作品が、"命"について改めて考えていただけるきっかけとなればと思います。