2月修了公演『ドン・ジョヴァンニ』稽古場便り・連載⑤湯浅 貴斗
修了公演『ドン・ジョヴァンニ』(2月23日初日)では、研修生たちが役どころに正面から向き合い、その感性に全力で取り組んだ成果をご披露します。
3年次の第22期生たちにとってはこの公演が実質的なプロの歌手としてのデビューとなり、今後の歌手活動に大きく影響する大切な舞台となります。
現在、研修生たちは公演に向けて本格的にリハーサルを重ねています。
当公演が修了公演となる第22期生たちのコメントを連載でご紹介します。
今回の登場は、湯浅 貴斗(第22期生)です。
〈皆様へのメッセージ〉
今年度でオペラ研修所を修了させていただきます、22期生の湯浅貴斗と申します。
以前、この場をお借りして入所のご挨拶をさせていただいてから、あっという間の三年間がもうすぐ過ぎようとしております。
二年目にして世界がコロナ禍に突入し、まだまだ世間が予断を許さない苦しい状況の中、本研修所ではこのように定期公演をほぼ問題なく上演させていただけていること、感謝の念に堪えません。
稽古、公演におきましても厳重な感染予防対策を努めておりますので、皆様には安心してご来場いただければ幸いです。
この度は、伝説の好色家ドン・ジョヴァンニの従者レポレッロを演じさせていただきます。
おそらく一度も女性に拒まれたことがないであろうドン・ジョヴァンニですが、ドンナ・アンナに手をつけようとして失敗し、助けに入った父親を殺して「殺人」という一線を超えてしまったことを機に、狙った女性を立て続けに手に入れられなくなるという今までにない一日を送ることになります。
そんな彼に振り回されて、時には見張りに、時にはおとりに、時には身代わりにと酷くこき使われるレポレッロですが、ジョヴァンニとのやり取りからは主従関係にありながらも、冗談を言い合ったり、たまに失礼な本音をぶつけたりと、どこか長年付き添った夫婦漫才コンビのような深い親しみが見受けられます。
奔放なジョヴァンニに振り回される生活にうんざりしていることは本心でありながらも、もはや人間業とは思えない自由な生き方、矜持や魅力に憧れを抱いている。
そんな二面性をもつレポレッロこそが、ジョヴァンニの唯一の理解者であると思えてしかたありません。
文句は言うけれど長いものに巻かれているのが大好き。何よりも自分の身の安全が一番大事で、逃げ足の速さは天下一品。一方で主人の悪行を窘めてみたり、人並みに同情心も持ち合わせている。
あらゆる二面性を持ち、最も人間らしい複雑な人間性を与えられている、最も喜劇的なキャラクター。
人間誰しも、心の中に小さなレポレッロが存在するはずです...。
三年間学ばせていただいたことを、この役を通して皆様にお見せできるよう、日々稽古に励んでおります。
ご来場を心よりお待ちしております。
湯浅 貴斗 Yuasa Takuto バス 【レポレッロ】
大阪音楽大学卒業。同大学院修了。『イオランタ』レネ王役、『悩める劇場支配人』ドン・クリソーボロ役、『ジャンニ・スキッキ』ベット・ディ・シーニャ役で出演。レパートリーに『フィガロの結婚』バルトロ。
『ドン・ジョヴァンニ』リハーサル風景(写真右・湯浅 貴斗)
オペラ研修生による「LE PROMESSE 2021~アリアコンサート~」(2021年11月公演)撮影:平田真璃