バレエ作品紹介:「ニューイヤー・バレエ」『ライモンダ』『海賊』よりパ・ド・ドゥ
2020年1月「ニューイヤー・バレエ」公演で上演する『ライモンダ』『海賊』よりパ・ド・ドゥについて、より一層公演をお楽しみいただけるよう、過去のアトレ誌に掲載された作品紹介を掲載いたします。
華やかなパ・ド・ドゥ『ライモンダ』『海賊』 <文:實川絢子>
『DGV』、『セレナーデ』というミニマルなバレエに華を添えるのが、2004年に制作され、朝日舞台芸術賞受賞するなど高い評価を得た牧阿佐美版『ライモンダ』第三幕の、絢爛豪華な婚礼の場面。貴族の娘ライモンダと十字軍の戦士ジャン・ド・ブリエンヌの中世の恋物語を描いたこの作品は、マリウス・プティパ最後の全幕バレエと言われ、古典バレエに民族舞踊の要素を組み込んだダイナミックな振付と、あのバランシンに「最も優れたバレエ音楽の一つ」と言わしめたアレクサンドル・グラズノフによる格調高い音楽で知られている。中でも今回上演する第三幕のパ・ド・ドゥは、数ある古典バレエの中でも難易度が高く見ごたえがあり、基礎技術に定評のある新国立劇場バレエ団だからこそ表現できる、研ぎ澄まされたエレガンスを堪能できることだろう。
同時に上演されるのは、新年を祝うのにふさわしい華やかな『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥ。第二幕で海賊の首領コンラッドの忠臣アリとコンラッドの恋人メドーラが踊るこの場面は、ダイナミックなリフトで魅せる優雅なアダージオ、超絶技巧満載の息を呑むようなソロ、グラン・ジュテ・アン・マネージュや三十二小節連続のグラン・フェッテなどの大技の連続で盛り上がるコーダと、古典バレエの魅力が凝縮されている。バレエファンだけでなくバレエ鑑賞初心者でも楽しめること間違いなしの演目だ。
「ニューイヤー・バレエ」は、層の厚い新国立劇場バレエ団のダンサーだからこそ踊りこなすことができるこれらの演目を、一度に堪能できる貴重な機会。二時間でプティパからバランシン、ウィールドンへといたる贅沢なバレエの「旅」を楽しむことができるだろう。
新国立劇場・情報誌 ジ・アトレ 2019年8月号掲載