演劇研修所ニュース

第17期生修了公演『流れゆく時の中に』稽古場だより

2月6日(火)、いよいよ初日を迎える『流れゆく時の中に』。

『坊やのお馬』『踏みにじられたペチュニア事件』『ロング・グッドバイ』3作品の同時上演です。

テネシー・ウィリアムズの一幕劇に、第17期生それぞれが主要キャストとして挑みます。

演劇研修所長である宮田慶子の演出のもと、熱い稽古を繰り広げる第17期生より、本公演にかける意気込みと見どころを日替わりでお届けいたします。

ムーニー 役:田崎奏太(たさき・そうた)-『坊やのお馬』より

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【意気込み】
私の演じるムーニーは、台本上は熊のように大柄で屈強なカナダ人。対する私は小柄な日本人。俳優をやる上でこんなに魂が燃える条件はありません。

アル・パチーノのような、小柄でも圧倒的な迫力と存在感のある俳優。それが私が目指す俳優像です。そこへ行く第一歩。今回の役はまさにそれを体現する絶好の機会。初演から現在まで数多くの役者が演じてきた『坊やのお馬』ですが、その中で私が最高のムーニーを演じられると確信しております。

半端ではない肉体改造を経て、心と身体の全てをムーニーと繋げ、今までの俳優としての限界を超えてこの修了公演に挑みます。



【見どころ】
『ロング・グッドバイ』に出演される修了生の須藤瑞己さんの演じる青年ビルが醸し出す雰囲気が絶妙にウザいのです。その絶妙さゆえに思わず笑ってしまいます。なんか、こんな奴いるよねって具合に(笑)。そんな絶妙なウザさを是非劇場でお楽しみいただきたいです!今回の公演はそんな小ネタがところどころに散りばめられていますよ!

若い男 役:樋口圭佑(ひぐち・けいすけ)-『踏みにじられたペチュニア事件』より

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【意気込み】
私は『踏みにじられたペチュニア事件』に登場する若い男を演じます。

この人物には迷いがない。もし迷いがあっても、他人には見せない人物だと思います。見せてしまった時、それが他人にどう影響するのかを分かっているからです。相手の気持ちまで考え、視野を広く持って、公平な目で誰でも受け入れるでしょう。心のベクトルが常に外に向いています。

世間からは「変わり者」と見られるかもしれません。だとしても、私はこの「若い男」の生き方に憧れをもっています。戯曲を読んで感じたことを表現できるように精進します。

【見どころ】
3作品は作者と時代背景が同じでも、場所(都市)や季節が違います。

そして3作品共に登場人物が「さようなら」もしくは「さいなら」と別れの挨拶をしますが、同じ意味の言葉でも状況や関係性、その人物の性格や気質が違えば、違って聞こえてくるはずです。そんな3作品の違いを楽しんでいただけたら幸いです。

ジョー 役:立川義幸(たてかわ・よしゆき)-『ロング・グッドバイ』より

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【意気込み】
このテネシー・ウィリアムズの一幕劇3作品を今できることはとても重要だと思っています。

戦争やウイルス、そして自然災害など、忘れたいけれど忘れられない出来事や、見たくないけれど目に入ってしまう出来事が、今実際に起こっています。

そんな中でも時間は止まらずに進み続けている。次に進む人もいれば、動けずにいる人もいる。それでも時間は全員に等しく流れ、僕たちは生活しなくてはいけない。これがこの3作品と今現在との共通点ではないかと僕は思います。

この作品を観て、前を向いて欲しいなどとは考えていません。ただ、時は流れているという事実だけが、観てくださるお客様に伝わればいいと思っています。

【見どころ】
ラストシーンのジョーの台詞です。ジョーだけが気付いてしまったこの世の真実。その真実にたどり着くまで、どのような経験をして、どんな考えをもったのか、そこに至るまでの道のりも見逃せません。運ばれていく家具を見てどんな記憶が甦るのか、そのときどんな会話をしていたのか、とても演劇的でおもしろくなっています。

全てがラストに向かうようになっているので、是非とも注目してみてください。

ジェーン 役:根岸美利(ねぎし・みり)-『坊やのお馬』より

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【意気込み】
私は短編3作品のうちの『坊やのお馬』に出演します。この作品に挑戦させてもらえる事、とても嬉しく、そして身の引き締まる思いです。

3年生になって初めての海外作品。

今回の稽古初日に「テネシー・ウィリアムズの作品は、自分の血液を変えるレベルでやること!」という、宮田さんの恩師がおっしゃっていた言葉を聞きました。それくらいの覚悟でやってほしいと、この意味を探求しながら、お稽古が始まりました。

自分では体感したことのない、この時代のアメリカでの暮らし、病気、どうやっても離れられない愛した人がいること、母親であるということ......。

逆に、現状に満足がいかなくても、誰かのために生きていかなければならないこと、自身の愛する人を信じたこと......などの、どこかしら今までの人生で覚えがあること。そのキャラクターになるために、現在もたくさんの発見をしています。

たくさんの想像と体感を使って、時には人間の根底にある獣のようなエネルギーを使って、千穐楽までこの作品に挑み続けます。

【見どころ】
『坊やのお馬』に出演するのは2人だけなので、修了生の先輩方の力は借りられません。 2人だけのセリフ、空間で、今の環境から抜け出したいムーニー(田崎)と、それでも現在をなんとか生きていこうとするジェーン(根岸)、対比される夫婦の姿を通して、1930年代のアメリカと現代に通ずる部分があることを、観に来てくださった方々に共感していただけたら嬉しいです。

他の2作品も含めて、これまで築き上げてきた17期生の集大成、ぜひご覧いただけたらと思います。

劇場でお待ちしております。

マイラ 役:飯田桃子(いいだ・ももこ)-『ロング・グッドバイ』より

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【意気込み】

研修生として最後の公演。より身が引き締まります。

今回は3部作なので、一つ一つの作品をそれぞれ立ち上げることはもちろんですが、次の作品にエネルギーのバトンを渡していきながら、観に来てくださる皆様とも強く繋がることを大切にしたいと思っています。

私は今回『ロング・グッドバイ』のマイラという役を演じます。

彼女の、自分はこうありたいという気持ちのままに行動ができる強さ、貪欲さは、私自身も彼女の力を借りて成長させたい部分です。また、家族との関係性が彼女にどう影響するのか、若いからこその繊細でヒリヒリとした心情が皆様にも届けられますよう努めます。




【見どころ】
3作品とも、物理的にも精神的にも閉塞感のある環境で生きている人達のお話です。 これは現代を生きている私達にも、どこか共感できる部分があるのではないかと思います。 この作品が、"しようがない"と蓋をしたくなることに蓋をする前に、一度立ち止まってみようと思えるきっかけになったら嬉しいです。

ドロシイ・シンプル 役:小林未来(こばやし・みく)-『踏みにじられたペチュニア事件』より

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【意気込み】

私の演じる『踏みにじられたペチュニア事件』のドロシイ・シンプルは、小間物店を営むピューリタンの女性です。キリスト教への信仰とともに、26年の人生を歩んできた彼女。自分にはない宗教への信仰心をどうしたら実感を持って演じることができるのか、日々考えています。

と言いながら、今年の元旦、日付が変わってすぐに神社の大行列に並び、お参りをする自分がいました。自分ではどうしようもできないことを神様にお願いする。私の中にあるこの心は、宗教への信仰心に対する何かの手掛かりになるかもしれません。探求し続けます。





【見どころ】

それぞれの個性豊かな登場人物を、出演者がどう演じるのかに注目していただけたらと思います。

1930年代〜1940年代に書かれ、その後日本でも度々上演されてきた戯曲たち。

私も、自分が演じることで、ドロシイ・シンプルという人物をどう生かすことができるのか、試行錯誤を重ねる日々です。是非劇場でご覧ください。



シルヴァ 役:佐々木優樹(ささき・ゆうき)-『ロング・グッドバイ』より

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【意気込み】

3年間の研修を共にした同期の仲間たち、そして尊敬している先輩方と共に、この修了公演ができることをとても嬉しく、そして楽しみに思っています。

今回僕が演じるシルヴァという人物は、イタリア系のアメリカ人で、とても明るくて、友人思いの、ちょっぴりお喋りなやつです。

"役を演じる"とは、自分の身体をつかい自分とは異なる人物になるということです。全く同じ人はいないので、役と自分とでは当然、物事の捉え方や考え方が違います。積み重ねてきた経験も人間関係も異なります。そんな自分とは全く異なる人物になりきることなんてできるのか。

演出の宮田さんは稽古初日に、ご自身の恩師からの「血液を変えて!」という言葉を教えてくださいました。

変えるんです、血液を......とんでもない作業です。

血液まで考えたことはありませんでしたが、僕は普段 "役になる" という時には "その役は一体どんな身体をしているんだろう?" と考えます。この作業がとても面白いんです。どんなに調べ、どんなに想像しても決して完了することのない果てしない作業。しかし調べれば調べるほど、想像すれば想像するほど、役が立体化し、生きた人間になっていくように感じます。

舞台上ではそんな "生きた人間" を演じたいと思っています。生きている時代も場所も違う登場人物たちの声や想いが 舞台を通して「今」を生きる皆さんの元まで届きますように、精一杯努めます。



【見どころ】

三作品ともにそれぞれ独特の良さがあり、一見すると作風の異なる3つの作品ですが、深く読んでいくと、テネシー・ウィリアムズの描きたい、本質的な部分がどの作品にも共通してよく出ていると感じられます。

テネシーが描いた、変わることのない、世の中や人間の葛藤、それらの普遍的テーマを、流れゆく今という時を生きる皆さんに、さまざまな角度から感じて楽しんでいただきたいです!




新国立劇場演劇研修所 第17期生修了公演『流れゆく時の中に』

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