「太平洋序曲」が描く世界史の中の日本という視点は、我々に新たなる感動と驚きを与えてくれる。―宮本亜門
黒船が歌えば、歴史も動く。止まらず進め、浮き島ニッポン!
外国の目からとらえた日本の姿という、実験的かつ野心的なミュージカル「太平洋序曲」の待望の翻訳上演がいよいよ実現します。1976年にブロードウェイの一流スタッフが結集して創り上げたこのミュージカルは、江戸時代後期、日本が開国へと向かう過程と、歴史のうねりに翻弄される人々の運命、加えて西洋化を遂げ経済大国にのし上がった現代までの変遷をダイナミックにつづった作品です。初演では、着想のユニークさ、色艶やかな歌舞伎の手法を用いた奇抜さなども、ニューヨークの話題をさらいました。作曲・作詞は、「リトル・ナイト・ミュージック」「カンパニー」でも知られる、ブロードウェイの巨星スティーブン・ソンドハイム。日本的な旋律を巧みに織り込んだ曲調が、絶賛を浴びました。アメリカ演劇界において最高の栄誉を誇るトニー賞では、2部門(美術・衣裳)の受賞に輝いています。今回の日本初演を手がけるのは、ミュージカル界を代表する演出家のひとり、宮本亜門。これまでの上演とは異なるオリジナリティあふれる表現で、ドラマチックな舞台を展開させます。また、独創的なワダエミの衣装にも注目が集まります。実力のある多彩なキャストがそろった、新国立劇場での初のミュージカル「太平洋序曲」に、どうぞご期待ください。
ものがたり
鎖国政策をしていた19世紀中頃の日本。突如アメリカの黒船が浦賀に来航する。幕府は、香山弥左衛門にその上陸を阻止するよう命じた。西洋文化を身につけ帰国した万次郎とともに、弥左衛門は奇策をもって黒船を追い返すことに成功。ところが相次いでイギリスやフランス、オランダ、ロシアも通商条約の締結と開国を迫ってくる。弥左衛門はやがて西洋文化に傾倒、逆に日本の伝統を重んじるようになった万次郎と激しく対立する。そして事態は予期せぬ方向へと転がり始めるのだった―。
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