野望と夏草
作 :山崎正和
演出 :西川信廣
美術 :横田あつみ
照明 :山口暁
音楽 :後藤浩明
音響 :井上正弘
衣裳 :岸井克巳
振付 :室町あかね
演出助手:道場禎一
舞台監督:水戸部雅史
<日程>
12月
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○18:00
●19:00
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A席:5,250円
B席:3,150円
前売開始 :1998年9月26日(土)10:00〜
<出演者>
津嘉山正種 内野聖陽
井上純一 三木敏彦 たかお鷹 村田則男
清郷流号 松野健一 青山良吉 鷲生功
尾崎右宗 立川修也 鳥畑洋人 永井誠
竹下明子 金久美子 弥生みつき 高橋紀恵
家村順子 伊藤知子 鬼頭典子 堤梨絵
堀朋恵
あらすじ
平安時代後期、白河天皇は摂関家の勢力を抑えるために、天皇の位を譲位した後も上皇として院(上皇の御所)で政治の実権を握りました。これが院政の始まりです。70年後、鳥羽法皇の死を契機に、院政を行う崇徳上皇と、親政を唱う後白河天皇との権力争いが生じ、保元の乱や、平治の乱へと発展します。「野望と夏草」には、この相克が渦巻く激動の時代に鍵を握った後白河と平清盛を軸に、貴族や武士らの対立と交流が緻密に描かれています。さらに「野望と夏草」は、山崎正和の歴史劇の中でも「世阿彌」「獅子を飼う」などと並び称されるひとつで、1970年当時、劇団雲が初演して以来の、待望の上演となります。演出は文学座の西川信廣。繊細かつ大胆な発想が、この作品をさらに重厚で格調高く蘇らせることでしょう。
皇室や平氏・源氏の「野望」の葛藤と翻弄される庶民「夏草」の悲喜、30年におよぶ息詰まる人間ドラマが、今様の調べや熱気あふれる踊りの中で展開します。
実力ある個性的な出演者とスタッフが顔を揃えた「野望と夏草」。どうぞご期待ください。
夜。暗黒の舞台に二条の強い光が射して、その中に血と汗に汚れた二人の武将が太い杭に縛られて浮かび上がる。暫時の沈黙ののち、一人がかっと眼を開き、問いかける。「殺されるか」もう一人は静かに眼を開き、応える。「わからぬ」
保元の乱の鎮まったあと、平清盛がたに囚われた平忠正と源為義のやり取りで始まる『野望と夏草』の幕開きは、鮮烈な視覚的イメージをあたえつつ、これから始まる権力をめぐっての壮絶な男達のドラマを予感させる。大いなる野望を持って乱世のなかで生きぬこうとする平清盛、藤原信西。一方で類い希なる政治力を駆使して君臨し続けようとする後白河。彼らを軸に乱世を生きる人々が織りなすドラマは、権力をめぐってという点では『ジュリアス・シーザー』や『リチャード三世』などのシェイクスピアの史劇を連想させる。しかし、シェイクスピアの登場人物たちが明確な動機を持って行動するのに対して、こちらの登場人物たちは己が行動する明確な動機を見いだせず、懸命にそれを探そうとする。それは己の存在そのものが何であるのかを求めるドラマでもある。
この作品が私を強く惹きつけるのは、これまでの価値観が大きく揺らぎ始め、言いしれぬ不安の中で生きる私たち現代人と乱世に生きた人々にあい通ずるものが多くあるからだ。小劇場の空間を生かして、乱世に生きた人々をダイナミックに、かつ繊細に描き出してみたい。
西川信廣