世界各地で上演され続けてきたマイケル・フレインの傑作喜劇『ノイゼズ・オフ』が、今までとは、ひと味も、ふた味も違った『うら騒ぎ/ノイゼズ・オフ』として新国立劇場の舞台に登場します。『ノイゼズ・オフ』は、「ナッシング・オン」という芝居を上演するある一座の、文字通り舞台の“表”と“裏”を同時に描くという、フレイン独特の緻密な構成を持ったコメディー。今回その劇中劇「ナッシング・オン」の演出家の役に、本作の演出家である白井晃自らが扮し、魅力的なキャスト陣と共にその“緻密な構成”を際だたせていきます。
舞台は三幕構成。明日に初日を控えてのドタバタの舞台稽古(一幕)を皮切りに、一ヵ月後の旅公演(二幕)、そして更に2ヶ月後の千秋楽当日(三幕)と、舞台の“表”と“裏”で突然巻き起こるハプニングに対処しながら、何とか「幕」(=終演)を目指そうとする俳優とスタッフたちの必死で滑稽な姿が展開していきます。
さまざまな人間の「笑い」をえがいてきた新国立劇場のシリーズ「笑い」の完結作を思う存分お楽しみ下さい。
初日を明日に控えての舞台稽古は、台本の完成が遅れたため俳優は段取りを覚えられなくて四苦八苦。スタッフは連日の徹夜で意識も朦朧、稽古は遅々として進まない。真夜中の12時を過ぎて、根気強い演出家の我慢も限界に近づいてきた。それでも一座は何とか明日の初日を迎えるべく懸命に稽古を続けるのだった。
1ヵ月後。開演5分前の舞台裏では、俳優二人が姿を消したまま。そこへ、人目を忍んで演出家が久しぶりに姿を見せた。舞台監督助手が演出家に何かをうち明けようとするが、演出家は取り合わない。彼のお目当ては若手美人女優。何層にも絡まる複雑な恋愛模様が大変なハプニングを巻き起こしていく。
さらに2ヵ月後。公演の千秋楽にもかかわらず、舞台裏からは女優二人が喧嘩する声が客席まで聞こえてくる。だが、開演を告げる音楽が流れ、幕は開いた。そしてこの日、舞台はいつもと違う「幕」を迎えようとしていた……。
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翻訳ものをやるのは難しい。特に翻訳もののコメディーはとても難しい。現代劇のコメディーとなるとさらにとても難しい。
シャレやジョーク、例えや皮肉、言葉の上での壁があって笑えるところが全く笑えないことがある。笑えなきゃコメディーじゃない。だからどうやるか、とてもセンスが必要とされる。
で、「うら騒ぎ」である。
バックステージものコメディーの最高峰と言われる、マイケル・フレインの「ノイゼズ・オフ」だ。緻密な戯曲で知られるマイケル・フレインのコメディーなんだからそれはもう緻密に違いない。
ところが、「うら騒ぎ」である。
確かに「ノイゼズ・オフ」なのだけれど「うら騒ぎ」である。
言い換えれば「ノイゼズ・オフ」ではなく「うら騒ぎ」である。全然言い換えてはないけど。
バックステージものだから、当然演出家も出てくる。で、私がその演出家の役をやることになった。ひらたく言えば出演する。さらにそれを私が演出する。当然、他の俳優さん達は大変だ。迷惑千万な話だ。だからもう、ほんとうにこれが「うら騒ぎ」なのである。
混乱必至、緻密な世界的コメディーが台無しだ。センスどころの話じゃないんだ、ほんとのところ。全くもって無茶な話だ、この企画。
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演出家をやることになっちまった演出家 白井晃 |
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