入りつ日の赤き光のみなぎらふ花野はとほく恍け溶くるなり
齋藤茂吉歌集「赤光」より
現代舞踊から出発し、独自の身体表現を探り当てた舞踊家、田中泯。ソロ公演から振付発表、さらには俳優としての映画出演など、活動領域をますます拡げつつある田中泯が、齋藤茂吉の歌集『赤光』をテーマにした独舞を発表します。
齋藤茂吉は近代短歌史上に重要な位置を占める歌人。故郷をこよなく愛し、上京したのちに精神科医となって多忙な日々を送るかたわら、数々の秀歌を生み出しました。『赤光』は大正2年に発表された茂吉の第一歌集。連作「死にたまふ母」「おひろ」など、自然でさりげない描写を通じて、人間の内面に息づく歌は生の力にあふれ、読む者の心を共鳴させます。
田中泯はグローバルな活躍を続けつつも常に自己を内省し、深い意味での「伝統」というものを重んじてきました。私たち現在を生きる者にとって「伝統」とは何なのか。この作品でも問いかけます。新国立劇場小劇場という空間を十二分に駆使し、大鼓、能管、そして書、それぞれの伝統を体現する表現者たちの力を得て田中泯が踊り上げる『赤光』。必見です。
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