届きそうで届かない迷宮の彼方へ・・・。
「変身」などの短篇小説で有名な"二十世紀文学の巨人"フランツ・カフカ(1883-1924)が取り組んだ長篇三作は、いずれも未完のままで終わっており、本人は死後出版されることのないように、友人に焼却を頼みました。しかし、死後、友人の手により発表されるやいなや、その多彩な要素が様々な解釈を生み、哲学、宗教学、心理学などあらゆる角度から注目を集め、今もなお絶えることのない人気を誇っています。
「城」は最後の長篇小説で、城に支配されている村に到着した主人公Kが、さまざまな不条理に遭い、次第に疲弊していく物語です。Kは冒頭から不可解な世界に否応なく投げ込まれ、身に降りかかった謎を解明しようと賢明に努力しますが、その努力は全く報われず、わけのわからぬ不条理に飲み込まれていきます。個人の力ではどうにもならない目に見えぬ巨大な官僚機構に阻まれ、個人の意志や感情が通用しない不条理の世界は、理解不可能な現実社会に晒されている現代人がまさに共感できるものと言えます。読者に謎をかけ、とまどわせながら、答えは示されないというカフカの手法は、極めて演劇的な面白さに満ち、読者を迷宮の彼方へ誘い込む不思議な魅力に溢れています。本作を、同じカフカの長篇『失踪者』を『AMERIKA』として舞台化し、高い評価を得た松本修が、長期間のワークショップを積み重ねながら、個々の俳優から新たな魅力を引き出す得意の手法で舞台化。また劇中随所に見られる井手茂太振付のパフォーマンスは、作品の歪みとともに笑いも巧みに表現。遊び心に満ちあふれた、まさに現代演劇の集大成といえるでしょう。
あらすじ
Kは深い雪の中に横たわる村に到着し、とっさに「城から招かれた測量士だ」と言ってしまう。村での滞在には城からの許可証が必要と言われ、城と連絡を取ろうとするが、どうやっても連絡が取れない。様々な手段で城を目指すものの、城はかなたに見えているのに、村で足止めを食い、どうしてもたどり着けないのだ。ひとまず村での生活を始めると、怪しげで個性的な人物たちがKを取り巻く。小役人の典型のような村長には翻弄され、瓜二つの二人の男には一方的に助手としてつきまとわれ、果ては酒場で働く役人の愛人と同棲する羽目に陥るなど、不可思議な人物がKの前に次々と現れては消えてゆく。Kは"城"という名の目に見えぬ巨大な官僚機構に行く手を阻まれ、奇怪な人物たちに翻弄され続ける。
果たしてKは謎につつまれた"城"にたどり着けるのか・・・。
新国立シアター・トーク
終演後のひととき、観客の皆様との幅広いふれあいの場として「シアター・トーク」を開催いたします。『城』のチケット(半券可)をお持ちの方はご入場いただけます。
● 日時:1月19日(水)終演後
● 会場:小劇場
● 出演予定:松本修、田中哲司 ほか
● 司会:堀尾正明(NHKアナウンサー)
● 料金:無料
● 本公演チケットをご提示ください
(但し、当日満席になり次第ご入場を締め切らせていただきます。)
● お問い合わせ:新国立劇場営業部 03-5351-3011(代)
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田中哲司 |
坂口芳貞 |
真那胡敬二 |
小田 豊 |
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石村実伽 |
大崎由利子 |
石井ひとみ |
葉山レイコ |
松浦佐知子 |
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