シリーズ「女と男の風景」の掉尾を飾る作品として、英国の劇作家ブライアン・クラークの傑作戯曲を上演いたします。1986年に名女優ジェシカ・タンディー主演で米国にて初演され、同年英国ナショナルシアターでも上演、絶賛を浴びました。核兵器の使用が人類に対する犯罪であり、決して使用されないように監視する義務があるという作者の訴えをベースに、妻の死を目前にした夫と、死の覚悟ゆえ今を誠実に生きようとする妻との葛藤から、夫婦という愛の形の不可思議さが激しく描かれます。その激しさの中に輝く繊細さを緻密に構成するのは演出家・木村光一。またエネルギッシュかつ人間味溢れる二人を草笛光子と鈴木瑞穂が演じ、生と死の本質を露わせにしていきます。没コミュニケーションの現代。しかし人生の黄昏時を迎えながら真剣に議論を重ね、真摯に向かい合う夫婦の姿。静かにして激しく生きる魅力的な二人の、ウイットに富んだ大人の会話劇をご堪能ください。
──ロンドンのハイドパークに隣接する高級住宅街。退役陸軍大将サー・エドムンド・ミルンと病身の妻レディー・エリザベス・ミルンは、退屈だが穏やかな日々を過ごしていた。ある日エドムンドは50年余り連れ添った妻が、新聞の核兵器先制使用反対の請願広告に署名したことを知り愕然とする。退役軍人として国家を支持するのが務めと信じる彼は、激しく妻の行動を叱責するが、エリザベスは、自分の行動は確固たる信念に基づいたものであると正しさを主張して激しく対立。議論が進むと、次第に妻の余命や不貞の過去などが次々と明らかになり・・・・・。
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