香港の最新演劇がアジアを席捲
ビジネスや映画に代表される、熱気を持った街・香港。ここの演劇界は伝統ある中国演劇と英国の支配下で持ち込まれた西洋的演劇に深く影響を受けてきました。しかし近年、若い世代を中心にそうした枠を飛び越えようとするかのような、伝統にとらわれない動きが盛んとなり、現在150を越える演劇団体が活動を続けています。彼らは独自の演劇を上演することにより、多種多様なコンテンポラリー・スタイルを発展させてきました。90年代始めごろから顕著になったその動きの第一世代を代表する劇団が、今回海外招待作品の第3弾として登場する「劇場組合(Theatre
Ensemble)」です。
伝統的な中国演劇の研鑽を積み、ヨーロッパスタイルの演劇手法も学んだ二人の俳優ジム・チムとオリヴィア・ヤンが93年に香港で設立した「演劇組合」は、その独特なスタイルの身体表現と視覚のイメージで知られ、この十年間の香港で最も活躍した劇団です。革新的・先駆的なその活動は異彩を放ち、舞台装置や照明、映像などそのビジュアル的センスも優れた彼らの舞台には、香港の若い世代のアーチスト達も参加して、香港アート界の様々な可能性を感じさせるという意味でも見逃せません。香港の中国返還後もなお香港演劇の中心にあるだけでなく、むしろその活躍はアジア全域に広がって、アジア発の演劇に新しいムーブメントの到来を予感させます。
イヨネスコの不条理劇「椅子」を翻案した本作は、視覚に訴える演出、魅力あふれる表現のテクニック、そして何より観客を楽しませる芝居心に満ち、初演時には香港の最も栄誉ある演劇賞で7部門にノミネート、最優秀俳優賞をはじめとする4部門を受賞しました。痛烈な皮肉を交えたユーモア感あふれるこの上演は、彼らにこそ描ける極上のエンターテインメントといえるでしょう。「ダイアローグ」をキーワードにおくるシリーズ「女と男の風景」の劈頭に位置付け、不条理でユーモラスなふたりのやりとりと奇妙なゲームを描く『The
Game』。
この新しい東方との出会いをお見逃しなく。
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