新国立劇場からのお知らせ
令和4年度 新国立劇場研修所 修了式が行われました
3⽉24⽇、新国⽴劇場オペラパレス・ホワイエにおいて、令和4年度 新国⽴劇場 オペラ研修所・バレエ研修所・演劇研修所の修了式を行いました。
今年度も新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、参加者の人数を限定し、関係の皆様に向けて式の様子をライブ配信しての開催となりました。
今年度はオペラ研修所第23期生 (4名) 、バレエ研修所第18期生 (4名)、 演劇研修所第16期生 (10名)の計18名が修了を迎え、 今後それぞれが舞台人としての道を歩み出すことになります。
最初に銭谷眞美新国立劇場運営財団理事長より式辞がありました。
皆さんは、今紹介した先輩方と同様に、海外講師も含めた世界トップレベルの講師陣による指導や、ANAスカラシップによる国内外の研修も含め、極めて恵まれた環境の中でレベルの高い研修を受けてきました。それは、厳しいプロの世界で生きていくための基礎を研修所で習得されたことを意味しています。
新国立劇場研修所を修了した者としての誇りと自覚をもって、オペラ、バレエ、演劇各界の発展に貢献すべく、これからもより一層の研鑽に励み、着実に成果を上げ、グローバル・トップクラスのプロとして活躍されることを心から願っております。
続いて、永井和子オペラ研修所長、小倉佐知子バレエ研修所長、宮田慶子演劇研修所長が各修了生たちに修了証書を授与し、修了生へのはなむけの言葉を贈るとともに関係者の皆様への御礼を述べました。
永井和子オペラ研修所長からのお祝いの言葉
皆さんは入所当初からマスク生活を余儀なくされ、その状況下での研修が3年間続きました。
マスクをしたまま歌うことは想像もつかないくらい大変なことです。その中で日々の研修に本当によく励まれたと思います。皆さんが目覚ましく成長されていく姿を見て、思い出したことがあります。それは作曲家の團伊玖磨先生が綴られた文章なのですが、何かの災害のため真っ黒に燃え尽きてしまったように見える上野公園の桜が、春を迎えて小さく芽吹き、花開こうとしているというエピソードでした。根がしっかりしていれば、何があっても芽吹いていくのです。どんな大変なことがあっても、必ずや芽吹きがあることを忘れないでいただきたいと思います。
皆さんは宇宙でたった一つの自分の声という楽器を授かりました。その楽器を磨いて、愛しんで、その楽器で奏でる音楽を全世界に響き渡らせていただきたいと思います。
小倉佐知子バレエ研修所長からのお祝いの言葉
皆さんは今日で研修が修了し、ひとり立ちしていくことになります。
今の皆さんの気持ちは期待に胸が躍る方や不安な方など、様々な思いでいらっしゃるかと思います。
でも、一つ皆さんが必ず経験してきた同じ思いがありますね。それは本番公演でステージに出ていく直前、幕が上がるその時、あるいは照明があたる時のドキドキ、わくわく、嬉しさと怖さが交錯するスリリングな瞬間です。この感覚は舞台に対しての新鮮な感覚ですので、これからの舞台人生においてどうぞ忘れずにいてください。
また、プロフェッショナルとして歩き始める先には様々な困難が待ち受けていて、心が萎えたり、自信をなくしたりすることがあると思いますが恐れることはありません。何故なら迷いも悩みも舞台での失敗でさえ、すべては成功へ至る道筋だからです。
そして、自分や自分の才能を信じて目標に向かって進んでいっていただきたいと思います。バレエ研修所第18期生の皆さんには、バレエに対する情熱のみならず、一人の芸術家としての教養と感性を身につけ、品格のあるバレエダンサーになっていかれることを心より願っております。
宮田慶子演劇研修所長からのお祝いの言葉
今回研修を修了する第16期生は、マスクが外せない、人に触れてはいけない、人と向き合って話してはいけないという、演劇研修を行う上で考えられないようなイレギュラーな中で研修生活をスタートさせました。
入所直後の4月、私は皆さんにメールでお手紙を出しました。今はできることから始めようと。まず演劇研修の課題図書100冊のリストを送りました。そして5月、まだ通常授業が再開できなかったため、リモートでもできる講義を始め、その後徐々に感染対策を万全にしながら研修を進め、二年目にマス
秋には盲人の世界を描いた作品に挑戦しました。
そして修了公演では『ブルーストッキングの女たち』という100年前の大正時代を舞台にした作品を上演しました。この作品を通して、文化、政治、社会が絡み合って時代が動いていくことを実感として得たと思います。
この3年間は決して無駄ではなかったことでしょう。窮屈な中で、頑張って努力をして知恵を絞って稽古をしていく。自分が演劇人として俳優としてどう自立していくか、孤独な中で一生懸命考えてくれたのではないかと思います。
今後もこの厳しい演劇界の中で、頑張っていただきたいと思います。
引き続き都倉俊一文化庁長官、日本芸術文化振興会 河村潤子理事長、井上慎一全日本空輸株式会社代表取締役社長から御祝辞をいただきました。
都倉俊一文化庁長官からの御祝辞
本日で研修を修了し、これから皆さんはプロの実演家として多くの人に喜びと感動を与える仕事に就くことになります。
人の営みの中で「ライブ・パフォーマンス」、つまり生の実演がいかに人に感動を与えるか、あるいは、それがないことがいかに人を苦しめるか、ということを感じたのがこの3年間でした。
この間最も危惧したのは、コロナ終息後、文化・芸術が花開こうという時に、才能ある芸術家たちが離職しているのではないかということでした。そうした事態を回避するために、国として十分な給付金や補助金を用意しました。
しかしながら、花に肥料だけ与えても枯れてしまうのです。太陽の光、水、風を与えないと植物は育たないのです。芸術家も同じで、芸術家としての表現の場が必要です。
ペストが大流行した時、ヨーロッパで本当に多くの人の命が奪われました。このペスト大流行後、人間力を復活させようとルネサンスが興ることになります。
それと同様、今後このコロナ禍にあった期間に溜まっているエネルギーが一気に噴き出すことでしょう。それが一番発揮されるのが「ライブ・パフォーマンス」です。「ライブ・パフォーマンス」こそが、芸術の原点です。芸術家が人に感動を与えるのと同時に、パフォーマンスを観る人の感動が、ステージ上の実演家たちにもエネルギーとして伝わります。
コロナ終息後に必ずや文化・芸術が花開いていくと思います。あなた方はその場に初めて出ていくという格好の状況が用意されているということです。
文化庁としても世界に羽ばたくトッププレイヤーを最大限応援するということが、重要な政策の一つになっています。
皆様も、ぜひ世界中に活躍の場を求めて、飛躍していただきたいと思います。
日本芸術文化振興会 河村潤子理事長からの御祝辞
舞台芸術界全体が新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、様々な制約のもとでの研修を余儀なくされました。ここまでに至る道のりは平坦な道のりではなかったのではないかと推察いたします。それを乗り越えてこられた皆さんの弛まぬ努力と高みを目指す強い意志に敬意を表します。折々の機会に、皆さんの研修風景に接したり、熱のこもった公演を拝見して、 今後の成長への期待を感じ頼もしさを覚えておりました。
本日で研修は修了しますが、同時にプロの実演家としての第一歩を踏み出されます。今後も研修所で培った力を財産として、更に精進されることを望んでおります。
公演鑑賞時、出演者のプロフィールに「新国立劇場研修所出身」の履歴を見出すことは、舞台公演を拝見する際のもう一つの喜びになっています。
今後は研修所出身の誇りを胸に、日本、そして世界の舞台で活躍され多くの人に夢と感動をもたらす舞台人として 大成されることを祈念いたします。
井上慎一全日本空輸株式会社 代表取締役社長からの御祝辞
ここ2~3年、航空業界も大変な日々をおくり、皆様のご苦労に強く共感します。そのような中で日々研鑽を積まれた経験は、皆様の表現力をより豊かにしてくれるのではないかと思います。
今年度は、演劇研修所は沖縄研修、オペラ研修所はイタリア研修、バレエ研修所はカナダ研修という海外研修がようやく再開されたことは、私どもとしても大きな喜びとなりました。
東京や日本では受けられない、現地でしか得られないことをお感じになり、大きな刺激を受けられたことと思います。こうした気付きを今後の活動に活かしていただければ何よりの喜びです。
これからプロとして研鑽を積んでいかれると思いますが、世界の舞台に向かって羽ばたかれることを大いに期待しています。
※全日本空輸株式会社には、オペラ研修所・バレエ研修所の「ANAスカラシップ」、演劇研修所の「若手俳優育成のための国内研修事業支援」により研修事業全体をご支援いただいています。詳しくは以下のページをご覧ください。
>ANAスカラシップ(オペラ研修)
>ANAスカラシップ(バレエ研修)
最後に修了生一人ひとりが挨拶をし、温かい拍手に包まれて令和4年度の修了式が終了しました。
今年度もコロナ感染拡大予防対策により、様々な側面に大きな影響がありました。 研修生たちにとっても、日々の研修に制約の多い状況でしたが、そうした中で2年半ぶりに海外研修が実施されるなど、少しずつ明るい兆しが見え始めています。こうしたこと全ては、修了生たちが目指す一流のアーティストとしての糧となるに違いありません。皆様のこれまでのご声援に深く感謝するとともに、今後の新国立劇場研修所修了生たちの活躍にぜひご期待ください。
修了公演舞台写真
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