新国立劇場からのお知らせ
令和3年度 新国立劇場研修所 修了式が行われました
3⽉31⽇、新国⽴劇場オペラパレス・ホワイエにおいて、令和3年度 新国⽴劇場 オペラ研修所・バレエ研修所・演劇研修所の修了式が⾏われました。
今年度も新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、様々な対応策を講じました。 登壇者、参加者の人数を限定し、関係者の皆様には、式の様子を映像でライヴ配信するなど例年とは異なるかたちでの実施となりました。
今年度はオペラ研修所第22期⽣5名、バレエ研修所第17期⽣5名、演劇研修所第15期⽣9名の計19名が修了を迎え、 今後それぞれが舞台人としての道を歩み出すことになります。
最初に尾﨑元規新国立劇場運営財団理事長より式辞がありました。
理事長が関係者の皆様へのお礼の言葉を述べ、昨年10月に逝去された牧阿佐美バレエ研修所長への感謝と哀悼の意を表しました。さらに近年の修了生たちの目覚ましい活躍を紹介し
「こうした素晴らしい活躍は一朝一夕で成し遂げられることではなく、修了後も弛まぬ努力を重ねられた結果です。皆さんは、今紹介した先輩方と同様に、レベルの高い研修を受けてきました。それは、厳しいプロの世界で生きていくための基礎を研修所で習得されたことを意味しています。新国立劇場研修所を修了した者としての誇りと自覚をもって、各界の発展に貢献すべく、より一層の研鑽に励み、トップクラスのプロとして活躍されることを心から願っております。」
と、修了⽣へお祝いと激励の言葉を贈りました。
続いて、永井和子オペラ研修所長、小倉佐知子バレエ研修所長代行、宮田慶子演劇研修所長が各修了生たちに修了証書を授与し、修了生へのはなむけの言葉を贈るとともに関係者の皆様への御礼を述べました。
永井和子オペラ研修所長からのお祝いの言葉
皆さんは明日からプロの道を歩みます。今後、皆さんの名前を聞くこともあるでしょう。ただ、名前を覚えてもらうより舞台での姿や演奏を覚えてもらえるような歌い手になってください。数年前、牧阿佐美バレエ研修所長が「どんなに小さくてもダイヤモンドになれ」とお話されたことが、今も私の心に刻まれています。これは「本物になれ」ということです。皆さんはゼロからの出発ではなく、皆さんの中には多くの方々からの教えが積み重なっています。自信を持って進んで行ってください。今、世界は疲弊していますが、こういう状況だからこそ、舞台から人々の心に届くメッセージを贈ることができる人になっていただきたいと思います。
小倉佐知子バレエ研修所長代行からのお祝いの言葉
牧阿佐美バレエ研修所長からいただいたご指導の中で「ダンサーはいつも心、性格が明るく生き生きしていなくてはならない」というお言葉をこの場で皆さんにお伝えしたいと思います。現状は大変なことも多いので、そのような状態でいるのは難しい場合もあるでしょう。そこで、「夢」を諦めない、「希望」から逃げないようにする、といった方法を私からご提案したいと思います。逃げずに努力をすることで、夢はかたちは変わるかもしれませんが、実現すると思うのです。また昨年のこの場で牧所長が「一生かかって基礎です」というお話をされました。これらのお言葉を心に刻んで、魅力のあるダンサーになっていただきたいと思います。
宮田慶子演劇研修所長からのお祝いの言葉
皆さんは研修3年目にはお客様を前に舞台で演じる機会を3公演経験しました。1作品ごとに皆さんの顔がしっかりしていくのを見て、心強く嬉しく思っていました。コロナは今しばらく続くでしょうし、世界は非常に不安定で、日本も災害等に見舞われています。そういう中で舞台人として何ができるのでしょうか。舞台で多くの人たちを励ましたい、人間って素晴らしいということを伝えることができたらと思います。たとえば演劇人は生で誰とでもコミュニケーションできるので、いろいろな貢献ができるのではないかと思います。今後演劇人として何ができるかを考えながらて生きていただきたいと思います。そして今後是非とも舞台の世界で皆さんとご一緒したいと思います。
引き続き都倉俊一文化庁長官、日本芸術文化振興会理事長代理 氷見谷直紀理事、平子裕志全日本空輸株式会社 代表取締役社長から祝辞をいただきました。
都倉俊一文化庁長官からの祝辞
ここ数年強く感じたことは、困難な時期に一般の人々が求めるのは心温まる生のエンターテイメントであるとうことでした。私は子供のころドイツ(旧西ドイツ)で育ったのですが、当時ヨーロッパの街は第二次世界大戦の傷跡が色濃く残る瓦礫の山のような状態でした。そうした中で、まず再建されたのは病院、そして次に復興されたのは「劇場」でした。学校より何より先に「劇場」だったのです。これは聖書にあるように「人はパンのみでは生きられない」、心への栄養がなければ人は生きていけないというヨーロッパ文明の根底にある思想です。近年はオンライン、リモートなどで代替可能だと考えられがちですが、人間は人の温もりを感じて初めて人を感じることができるのです。その究極のかたちがライヴ・エンターテイメント、上演芸術なのです。皆さんはその担い手としてお客様と人同士の温もりを交換しあうことができ、こうしたことが上演芸術の肝であると思っています。これからは国内のみならず、ぜひ海外に羽ばたく夢をもって、プロの道を歩んで行っていただきたいと思います。
日本芸術文化振興会理事長代理 氷見谷直紀理事からの祝辞
ここに至る道のりは平坦な道のりではなかったのではないかと推察いたします。それを乗り越えてこられた 皆さんの弛まぬ努力と高みを目指す強い意志に敬意を表します。研修の成果を示された公演を拝見して、 たくさんの方々が大きな期待を寄せられていることを感じ取ることが出来ました。
本日で研修は修了しますが、これからはプロの実演家としての長い旅が始まります。研修所で得た技術、 知識、経験、そしてネットワークを財産として、更なる研鑽を積まれることを心より期待します。
今後は研修所出身の誇りを胸に、日本、そして世界の舞台で多くの人に感動をもたらす舞台人として 大成されることを祈念いたします。
平子裕志全日本空輸株式会社 代表取締役社長からの祝辞
ここ数年ANAも徹底的な打撃を受けました。若い社員の中には絶望感に打ちひしがれる人もいました。そのような環境の中、これまで厳しい状況を乗り越えてきたANAの歴史を振り返るという主旨で「きたえた翼は、強い」というキャッチフレーズの昔のCMを社内のネットで流しました。実際これが放送されたのは東日本大震災が起きた時で、ANAが世界で初めてボーイング787を導入した時でもありました。この飛行機の翼は他の飛行機に比べて、鳥の羽のようなしなやかな強さを持っています。このCMを流したことがきっかけとなり、若い社員もどうすれば元気になれるかを考え始めました。様々な試みが実施され、お客様からのお褒めのお言葉をいただくようになりました。つまりピンチはチャンスになります。今後、乱気流を乗り越えることで培った気持ちを自信にし、歩んでいっていただきたいと思います。
※全日本空輸株式会社には、オペラ研修所・バレエ研修所の「ANAスカラシップ」、演劇研修所の「若手俳優育成のための国内研修事業支援」により研修事業全体をご支援いただいています。詳しくは以下のページをご覧ください。
>ANAスカラシップ(オペラ研修)
>ANAスカラシップ(バレエ研修)
最後に修了生一人ひとりが挨拶をし、温かい拍手に包まれて令和3年度の修了式が終了しました。
今年度もコロナ感染拡大予防対策により、様々な側面に大きな影響がありました。 研修生たちにとっても、日々の研修に制約の多い状況でしたが、そのことが自分自身を深く見つめなおす貴重な機会にもなりました。 そうしたことを含めた多くの経験が、修了生たちが目指す一流のアーティストとしての糧となるに違いありません。 皆様のこれまでのご声援に深く感謝するとともに、今後の新国立劇場研修所修了生たちの活躍にぜひご期待ください。
修了公演舞台写真
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