演劇公演関連ニュース
演劇『ガラスの動物園』にて目や耳に障がいを持つお客様への観劇サポートを実施いたしました
9月30日(金)、10月2日(日)の演劇『ガラスの動物園』にて、目に障がいを持つお客様向けのサポートを実施いたしました。また、耳に障がいを持つお客様へのサポートとして、本公演では全6回公演において、日本語及び英語バリアフリー字幕を舞台上スクリーンに表示いたしました。
今回、目に障がいをお持ちの方向けのサポートには44名、耳に障がいをお持ちの方は7名、総勢51名のご参加をいただきました。(そのうち、障がいをお持ちの方は27名)
また、障害の有無、国籍、言語にかかわらず、より多くの方に舞台を楽しんでいただくこと目指し、今回観劇サポートとしては、初めて英語への対応を行いました。日本にお住いの外国人の方を中心に、英語のチケット販売サイトを通じてのべ162名の皆様にご来場いただきました。
なお、この観劇サポートは、文化庁の令和4年度「障害者等による文化芸術活動推進事業」として、新国立劇場が委託を受けて実施しています。
公演にご来場いただいたすべてのお客様が本作品を余すことなくお楽しみいただけるように行った工夫や、実際のサポートの様子、そしてサービスの内容をご紹介いたします。
目に障がいをお持ちの方向けの観劇サポート(9月30日(金)、10月2日(日)開催)
事前舞台説明会
まず、中劇場で舞台装置のコンセプトや位置関係について解説をお聞きいただきました。
解説役は演出家の田中圭介さん。舞台の上を実際に歩きながら、装置の形状が横長であること、また、キッチンカウンターや階段、窓、ガラスのコレクションなどの位置関係を言葉や歩数でご案内しました。また、階段を数段上がったところからの声の聞こえ方を体感していただいたほか、装置手前の通路が登場人物のモノローグに使用されたり、ベランダとしての機能も兼ねていることなど、観劇にあたってより公演への理解を深めていただけるよう、必要な情報をお伝えしました。
また、本公演の舞台装置は、壁や床一面が茶色のベロア生地で覆われているのが大きな特徴のひとつ。不況時代を象徴するかのような薄暗い穴蔵のような印象であることをお伝えし、よりイメージを膨らませていただきました。
説明会の後は、中劇場のロビーで実際に模型に触れていただきました。模型がフランスの国立オデオン劇場より運ばれてきたものであることをお伝えすると、「ええ!」と驚きの声をいただきました。国立オデオン劇場においても目や耳に障がいをお持ちの方へのサポート活動が行われており、このような取り組みが世界的に広まりつつあることがうかがえます。
模型は本物の舞台装置と同様に壁や床が一面ベロア生地で覆われており、お客様は模型に触れながら、素材の感触や、キッチンカウンターや階段の形状などを確認されていました。なお、事前舞台説明会の会場にお早めにお越しいただいたお客様には、説明会前にロビーにて舞台模型に触れていただく時間が設けられております。中劇場の中で説明をお聞きいただく前に模型に触れることで、より舞台形状のイメージをつかんでいただきたいという、劇場からの思いが込められています。
上演中のリアルタイム音声ガイド
上演中にはリアルタイム音声ガイドのサービをご提供しています。リアルタイム音声ガイドとは、実際の舞台の生音と同時にイヤホンで解説をお聞きいただけるシステムです。片耳にのみイヤホンをご装着いただく仕組みになっており、俳優の声を妨げることはありません。
今回はフランス語での上演だったため、舞台上の照明や装置・小道具、俳優の動作について別ブースから生放送で行われる解説に加え、事前収録された4人の登場人物たちの日本語訳のセリフが配信されました。解説とセリフの区別を明確にするため、解説は女性の声、4人のセリフは1名の男性の声で構成されています。また、俳優のセリフは抑揚を押さえつつも驚きや怒りなどの表情のみを付けるかたちで、あえて淡々とした印象で語られることで、実際の俳優の声や演技の邪魔にならないよう、工夫を凝らしました。
解説のナレーターは彩木香里さん。畳みかけるような会話の応酬の妨げとなることなく、会話以外の動作や情報について簡潔かつ丁寧に解説をしています。また、上演直前には作品の見どころ解説も配信されます。
4人の登場人物のセリフのナレーターは吉田孝さん。俳優の声を引き立てつつも、簡潔で聞き取りやすい声で、セリフをお届けしました。
お客様の声
・(音声ガイドが2種類あるので、)混ざってしまうのではないかと不安だったが、男女でナレーターが分かれていて、とても聞きやすかった。舞台を観に来るのは初めてだったが、リアルな舞台の俳優たちの熱演を感じ取れた。
日本語の翻訳ナレーションがあることで、理解が深まり、外国人演出家特有のユーモアなども楽しむことができた。
耳に障がいをお持ちの方向けの観劇サポート
バリアフリー字幕の導入
向かって舞台の左側(下手)に日本語、右側(上手)に英語の字幕が表示され、日本のお客様以外にも、新国立劇場の演劇公演に訪れていただく機会になりました。
フランス語で上演された本公演は、スピーディな会話が繰り広げられるのが特徴のひとつ。情報量の多いフランス語のセリフを字幕として表示する際は、視覚的に無理のない文字量になるよう調整したり、あえて口語的な文章を採用するなどして、より見やすいものとなるよう工夫が取り入れられました。
シアタートーク時の手話通訳
9月29日と30日の終演後に実施されたシアタートークでは、手話通訳を実施しました。事前にサポートをお申し込みいただいたお客様には、終演後手話通訳者が見える前方のお席までご移動いただき、引き続きトークをお楽しみいただきました。
会場内におけるサポート
会場スタッフは視覚的にお客様にご案内ができるよう、会話用のフリップを準備しております。新国立劇場の主催公演では案内係が指差し会話表や筆談具、音声・文字変換アプリを準備しておりますので、お困りの際は気兼ねなくお近くの係員をお尋ねください。
新国立劇場は、多くの方にとって舞台芸術や劇場が身近なものになりますよう、これからも様々な取り組みを続けてまいります。
目に障がいがある方向けの観劇サポートに携わるスタッフは、観劇サポートのサービスである<事前舞台説明会><リアルタイム音声ガイド>のリハーサル後、意見交換会を実施します。
リハーサルには、必ず障がいをお持ちの方にモニターとしてご参加いただきます。ご意見を承りつつ、サポート内容をブラッシュアップしてから、観劇サポート実施日に臨みます。
次回の観劇サポート(演劇『レオポルトシュタット』)
耳に障がいのあるお客様向け(手持ち型ポータブル字幕機の貸出)
10月23日(日) 13:00開演 (受付 12:15〜)
目に障がいのあるお客様向け(開演前舞台説明会&リアルタイム音声ガイド)
10月29日(土) 13:00開演 (受付 11:00~11:30)
10月30日(日) 13:00開演 (受付 11:00~11:30)
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