演劇公演関連ニュース
<コラム>ブレインストーミングとは?(『アンチポデス』で行われていること)
『アンチポデス』では8人の男女が「物語を生み出すため」アイデアを出し合っている。この「ブレインストーミング」とは実際の場では、どのようなことを話し合っているのだろう。コピーライター、CMプランナーとして活躍する言葉を生み出すプロ、電通の勝浦雅彦さんが広告クリエーティブの場における「ブレインストーミング」の実際の様子、その効果について解説してくれた。
勝浦雅彦(かつうら・まさひこ)
(株)電通 コピーライター・クリエーティブディレクター
広告クリエーティブ(コピーライターはその職能のひとつである)を生業とする我々のブレストの場をご紹介しよう。ブレスト、とはブレインストーミングの略で、1950年に米国のアレックス・F・オズボーンが提唱したアイデアの作り方だ。ブレストのやり方は人によって違うが、
①全員が発言する
②出されたアイデアを否定しない
③他人のアイデアに乗っかるのはOK......
といったルールをもとに進められるのが一般的だ。要は平和的に全員がなんでも意見を出し合って、独占したりせずに、いいものをつくりましょう。ということである。
たいていそれは、そのチームが属する社屋の白い殺風景な会議室で行われる。集まった「みんな」は、その時間までに自分のアイデアの欠片のようなものを紙なり、PCのソフトなりにまとめている。近年は動画を編集してきたり、プロトタイプとしてCGをつくってくる者すらいる。一方、何も用意してこないでその場で考えようとしている者もいる。各々がドアを開け白い部屋に入ると、そこには緊張が満ちている。気の流れは淀み、親密さはまるでない。まず、この空気を変えるべく一斉に「無駄話」が始まる。それは日常卑近のことや、高尚な哲学のことなど様々であり、話し合われるべき本題となるべくかけ離れていればいるほど良いとされる。思考を柔らかくし、関係のないもの同士が結びついたとき、偉大なアイデアがそこにあらわれる、とはまことしやかに語られる定説である。
これらを経ないで本題に入ることは、潤滑油なしに機械のギアを入れるようなものなのだ。与太話をしているように見えて、それぞれが他者の体温や受容性を確認している。全員でアイデアをつくりあげる、と決めた以上、たった一人でも儀式の流れに乗っていない人物がいては破綻するからだ。やがて、誰かが「本題」という言葉を口にするとそれを合図に会議の進行方向が修正され、アイデアの欠片が次々とテーブルに並べられていく。それらをリーダーが自身の経験則よって整列させ「大きなアイデア」にかたちづくっていく。まるで蝋燭を祭壇に並べるように。やがて「自分たちが表現しようとしていたもの」の輪郭が朧げに見えてくるのだ。
写真:宮川舞子
※勝浦雅彦さんに『アンチポデス』公演プログラムにご執筆いただきました。「ブレインストーミング」について、さらに詳しいコラムが掲載されています。
●公演詳細はこちら
会場:新国立劇場 小劇場
上演期間:2022年4月8日(金)~24日(日)
A席 7,700円 B席 3,300円
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