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原璃菜子さん(第15期修了、ソプラノ)が、トリノ王立歌劇場と 終身雇用契約

原璃菜子さん(第15期修了、ソプラノ)が、トリノ王立歌劇場と終身雇用契約を結びました。

原さんはソリストとしてトリエステ歌劇場、バーリ・ぺトゥルツェッリ歌劇場に出演し、合唱としてもフィレンツェ五月歌劇場、トリノ王立歌劇場に出演するなど、イタリアの主要劇場でフリーランスのソリストとして5年以上活動されてきました。


今回、原さんにイタリアでの活動についてお話をお伺いしました。


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▲トリノ王立歌劇場との終身雇用契約にサイン


Q.海外で活動したいと思われたきっかけを教えてください。

A.(原璃菜子さん 以下同)

新国立劇場オペラ研修所で出会った友人たちの影響で海外に興味を持つようになりました。私は自分の公演準備に必死でしたが、彼らは語学学習を怠らず、話題も日本だけでなく、海外で注目されている作品や歌手のことにまで及び、常に未来を見据えていました。その姿勢に刺激を受け、私も海外に挑戦してみたいと思うようになったのがきっかけです。


Q.イタリアを中心に活動されてきましたが、海外で活動されるにあたり、様々なご経験やご苦労があったかと思います。

A.

イタリアはヨーロッパの中でも滞在許可証の取得が特に難しい国だとされています。最初の2年間は学生ビザで滞在していましたが、劇場でソロ活動を始める際に就労ビザが必要となり、取得に苦労しました。今では永住権を取得し、当時の苦労も貴重な経験となっています。

また、語学の壁も大きな挑戦でした。海外では控えめでいるだけでは通用せず、適切な自己主張が求められます。わがままに映らないよう配慮しつつ、発音やニュアンスを磨き、劇場関係者と対等に話せる表現力を身につけるまでに時間がかかりました。


Q.印象的なエピソードについてお話いただけますでしょうか。

A.

イタリアは親日国であり、日本への憧れが根強くあります。

日本は文化的にも地理的にも遠い国というイメージがあり、私が日本人であるとわかった時の相手の驚きや反応はユニークで興味深いものがあります。イタリアで生活する中で、そうした場面に出会うことが多く、日本文化への関心の高さを実感します。


Q.海外で活動するにあたって大切にされてきたこと、もしくは必要なことを教えてください。

A.

イタリアでは日本で培った技術だけでは勝負が難しい場面もあります。異なる環境に順応し、歌唱方法や表現を見直し、現地で評価されている歌手と比較しながら改善を続けることが求められます。一歩ずつ着実に経験を重ね、自分の限界を決めずに挑戦を続けることが大切だと感じています。諦めない姿勢と努力をし続けることが、最大の武器だと信じています。


Q.トリノ王立歌劇場についてお話いただけますでしょうか。

A.

トリノはイタリアの旧首都で、フランスに最も近い都市でもあります。そのため、フランスオペラがプログラムに必ず含まれ、また『ラ・ボエーム』の初演劇場として、プッチーニ作品の上演も欠かせません。最近、アンドレア・バッティストーニ氏が音楽監督に就任され、今シーズンは『アンドレア・シェニエ』で共演できることを楽しみにしています。


Q.近況を教えてください。

A.

イタリアの主要劇場でフリーランスのソリストとして5年以上活動してきた中で、今回のトリノ王立歌劇場との終身雇用契約は大きな決断でした。2月には『愛の妙薬』のジャンネッタ役で出演します。これを新たなスタートと位置づけ、再びソリストとしての活動に力を入れながら、新たな目標に向けて取り組んでいきます。

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▲トリノ王立歌劇場




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原 璃菜子 HARA Rinako

ソプラノ歌手

国立音大、東京藝大大学院卒業後、新国立劇場オペラ研修所に入所。主な受賞歴に第21回奏楽堂日本歌曲コンクール2位、第6回トスティ歌曲国際コンクール特別賞,第5回レスピーギ近代歌曲国際コンクール特別賞など。

ソリストとしてトリエステ歌劇場、バーリ・ぺトゥルツェッリ歌劇場に出演。また合唱としてフィレンツェ五月歌劇場、トリノ王立歌劇場に出演。イタリアの主要劇場でフリーランスのソリストとして5年以上活動。2024年トリノ王立歌劇場と終身雇用契約締結。



当研修所出身歌手たちの国内外での活躍にどうぞご期待ください。