オペラ研修所ニュース
【レポート】中嶋彰子氏による「オーディション・テクニック特別講座」
10月、国際的なソプラノ歌手、中嶋彰子氏を講師に迎え、昨年に引き続き2回目の開催となる「オーディション・テクニック特別講座」を開催しました。
中嶋氏は、長く世界有数のオペラ劇場で多くのタイトルロールを務め、近年はウィーン市立音楽芸術大学 (MUK)や国際コンクールの審査委員(国際フランツ・シューベルト・リート・コンクール)などで、後進の育成にも精力的に活動されています。
▲中嶋彰子氏
特に近年、オペラストゥディオでは、海外で活躍する歌手の育成に力点を置いており、当講座では、海外における劇場等のオーディションを模し、歌手が一人ずつ歌唱を行い、実際のオーディションさながらに、中嶋氏と研修者との会話や質問・回答は主に英語、ドイツ語、イタリア語で行われました。
氏とのやり取りの中で、自分の考えや思いを堂々と明確に答える自己提示の仕方や、いかに的確に審査員とのコミュニケーションをとることが必要かということが指摘されます。
さらに氏から「オーディション」とは「competition」であり、その場で「勝てるか」「勝つためには何が必要なのか」と言った、近い将来実際に直面する状況への厳しい問いも投げかけられます。
最後の講評では、衣裳の選び方、アーティストに相応しい歩き方、日本人が苦手な顔の表情の作り方、舞台で自分を美しく見せるメイクの仕方、エレガンスな立ち居振る舞いの仕方など、舞台ではあらゆる点で自分のベストを尽くさなくてはならないことについてもお話いただきました。
また氏から、プロフェッショナルと学生の違いは、日常から抜けた空間を創り出すのがプロのアーティストであり、一人一人が本当のアーティストは何かを研究する必要があるというお話もありました。
海外で活躍するためには、真のアーティストの魂を持って日々の研鑽を積まねばならないことを実感させられる非常に有意義な講座となりました。
中嶋彰子 NAKAJIMA Akiko
ソプラノ歌手/新国立劇場オペラ研修所 招聘講師(オーディション・テクニック)
2021年にオペラ・デビュー30周年を迎える中嶋彰子は、今までに52の主役級オペラロールを上演した、国際的ベテラン・ソプラノ歌手である。
北海道生まれ。15歳で渡豪し、シドニー大学・音楽院を卒業。1990年、全豪オペラ・コンクールで優勝し、同年、シドニーとメルボルン、両オペラハウスでオペラ・デビューを果たす。92年、イタリア・ナポリのサン・カルロ歌劇場にてオペラ『ラ・ボエーム』のムゼッタ役で欧州デビュー。同年、オーストリアのインスブルック国際バロック音楽祭に出演し、中嶋がタイトルロールを歌った『アルチーナ』が欧州放送連合より最優秀賞を受賞する。99年にはダルムシュタット州立劇場にて『ランメルモールのルチア』の大役をこなし、オペラ誌「オーパンヴェルト」の最優秀新人賞にノミネートされる。99年よりウィーン・フォルクス・オーパーの専属歌手となりトップスターとして活躍。現在に至るまで、スイス、ドイツ、イタリア、オランダ、デンマーク、フランス、スペイン、スウェーデン、オーストラリア、アメリカの劇場や音楽祭に活躍の場を広げる日本を代表する国際的な日本人ソプラノ歌手である。
日本本格デビューは、99年シャルル・デュトワ指揮 / NHK交響楽団のフォーレ「レクイエム」。その後NHKニューイヤーオペラコンサート、NHK総合番組「名曲アルバム」出演などのテレビ出演、国内の多くの交響楽団の客演、多くのオペラ出演をこなす。2013年に現在の一般財団法人群馬オペラアカデミー「農楽塾 (のうらじゅく)」を成立。海外の著名な指導者達と共に次世代の育成に力を入れる。2012年からは脚本、演出、企画プロデュースも手掛け、2017年にはスイスのシオン音楽祭にて舞台作品『夢幻能: 月に憑かれたピエロ』をプロデュース&主演、2019年には笠松泰洋作曲オペラ「人魚姫」の海外初公演をウィーンのダス・オフシアターにてプロデュース&演出する。
第14回「出光音楽賞」受賞。AMATI所属アーティスト。ウィーン市立音楽芸術大学(MUK)舞台芸術学部声楽/オペラ科独唱専攻教授。2020年よりウィーン墺日協会音楽監督。一般財団法人群馬オペラアカデミー「農楽塾(のうらじゅく)」総監督。ぐんま観光特使。
ホームページ: www.akikonakajima.org
こうした多岐にわたる研修の成果を、ぜひ劇場でご覧ください!