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オペラ『カルメン』アレックス・オリエの演出コンセプト説明レポート
2024/2025シーズンオペラ『カルメン』が2月26日に開幕し、熱狂的に迎えられました。
このアレックス・オリエ演出のプロダクションは2021年7月、新型コロナウィルスの猛威の元で初演を行ったものです。当時の初演の際には感染防止対策を講じた演出で上演したため、今回は演出家アレックス・オリエ氏が来日し、演出を練り直して上演しました。
コロナ禍を乗り越え、ついにフル・スペックの全貌を現した『カルメン』は、オリエ氏ならではの大胆な構想とダイナミックな視覚効果、そこから生まれた求心的なドラマが観客の心を捉え、大喝采を呼びました。
ここでは、アレックス・オリエの演出コンセプトを、今回のリハーサル開始時に出演者へ行った演出コンセプトのプレゼンテーションからご紹介します。

オペラ『カルメン』は1875年にパリのオペラ・コミック座で初演され、既に伝説のようになっている作品です。カルメンというキャラクターは演劇や映画、あらゆるアートの中に存在しています。
初演から150年経った今日まで、あるいはメリメの小説が発表されて200年近くが経とうという現在まで、なぜカルメンは人々の心を捉えるのか。
私は、カルメンの「自由を求める」人物像が一番の魅力ではないかと考えています。カルメンは強く、明るく、そして人生を楽しむ女性で、自由の象徴です。問題が起これば抵抗する女性です。
そんな女性でも、間違った相手に恋をしてしまうこともあります。ドン・ホセのような、独占欲が強く嫉妬深く、拒絶を受け入れられないマチスタ※に。『カルメン』の物語はマチスモ※なのです。
私は観客に届くよう、いつもできるだけ現代的な伝え方を探ります。そこで『カルメン』の裏にあるメッセージを考えました。この『カルメン』の物語は、現代のどこにでも起こりえます。世界では一日に170人の女性がドメスティック・バイオレンスで亡くなっているという報道もあるのです。

そこでこのような筋立てを考えました。舞台は東京です。東京でスペイン・フェスティバルがあり、スペインから色々なアーティストが来る。カルメンはバンドを持っているミュージシャンです。そしてコンサートの警備にあたる警察官のホセと出会う。コンサートの後には酒場に行く。裏では麻薬の密売の仕事にも関わる......。
私が目指しているのは、できるだけ沢山の若者にオペラを観てもらうこと、そして沢山のオペラを観てもらうことです。
ワーグナーが言ったように、オペラというのは総合芸術で、音楽もあり合唱もあり助演として出演する俳優もいる、ライブの生演奏があって色々なドラマがある。「うわあ面白かった」と感じさせる圧倒的な力があります。私はさらに、面白かったなと思って帰るだけでなく、色々な物語を感じ取ったなと思わせるくらいにやりたい。若い人たちに、物事には多様な見方、多様な考え方があるということを感じて欲しいと思っているのです。
出演者の皆さんには、色々な物語を感じ取ったと思わせるくらいに、演じて欲しい。皆さんがどういう動きをしたい、ここはどう演じたいというのを、一人一人から出していただきたいと思います。限られた時間ですが、集中して素晴らしいオペラを創り上げていきましょう。
※マチスモはスペイン語で、ラテンアメリカ社会で一般的な男性優位主義、また男らしさを重んじる生き方。マチスモ思想の持主の男性をマチスタという。
『カルメン』公演は3月8日(土)まで。
新たな生命を宿し、生き生きと躍動する『カルメン』を、どうぞお見逃しなく!
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