オペラ公演関連ニュース
2023/2024シーズンオペラ『シモン・ボッカネグラ』 海外メディアで大反響!
2023年11月に、新国立劇場発の国際共同制作として誕生した新制作オペラ『シモン・ボッカネグラ』。その印象深い演出と舞台美術、演奏、演技で注目を浴び、海外メディアからも大きな反響がありました。また、このプロダクションが伝統あるイギリスの音楽雑誌「Opera」の表紙を飾るなど、新国立劇場のオペラの発信力を国際的に示す形となりました。海外メディアの公演レビューより、抜粋してご紹介いたします。
Auditorium(客席)/韓国 [Jeong Woo Yoo]
大野は、ベテランのオペラ専門家らしく、複雑なプロットが絡み合うストーリーと、ワーグナー的な影響も加わった多層的な作品を、一点の曖昧さもなく自然に聴かせた。
繊細な演奏の中で管楽器の轟音は抑えられており、室内楽的に洗練されていた。3幕冒頭の真魂のホルン合奏が繰り広げる明快なアーティキュレーションは、これまで聴いたすべての『シモン・ボッカネグラ』公演の中で最も印象的だった。洗練されたアンサンブルの各楽器群は有機的につながり、指揮者によって完全にコントロールされたダイナミクスは、誇張されることなく明確な劇的なコントラストを形成していた。適切な高揚感と緊張の緩急の調整も絶妙だった。こうした大野氏の解釈を完璧に具現化した東京フィルハーモニー交響楽団の演奏は称賛に値するものだった。
特に驚いたのは新国立劇場合唱団の技量だった。様々な演出的要求にも惑わされることなく、正確なアンサンブルで表現する合唱団の円熟した技量は、最もスペクタクルな1幕2場の議会シーンの完成度に最も貢献した功労者であった。
Classic Voice/イタリア [Paolo Locatelli]
彫刻家であり、コンセプチュアル・アーティストでもあるアニッシュ・カプーアは、(中略)その高度な象徴性と抽象性により、ドラマの深い根底に最も強烈で根本的な印象を与える。ピエール・オーディはその上に、全体を通してミニマルでありながら、ある意味では少し委縮した演出を施した。オーディは『ボッカネグラ』の持つ政治的・社会的な要素をすべて削ぎ落とし、事実上、家族劇に落とし込んだ。(中略)彼の努力は、楽曲の独特な物語性を合理化し、スリム化する方向へと向かっている。
(中略)
ピットには東京フィルハーモニー交響楽団、そして指揮台には2018年から新国立劇場の芸術監督を務める大野和士が立つ。大野は、舞台が喚起する抽象的で非物質的な雰囲気を引き立て、その色合いと調和している。そのため、爆発的なドラマティックな演奏ではなく、透明で均一で、指揮の分析的な側面が物語の力強さを損なわないような演奏である。
Diapason/フランス [Emmanuel Dupuy]
新国立劇場の一部のプロダクションは、ヨーロッパの主要な劇場と共同制作されている。(中略)現在エクサン・プロヴァンス音楽祭の総監督であるピエール・オーディが演出を手がけており、新国立劇場が世界のオペラの舞台でその地位を確立しつつあることを裏付けた。
(中略)
ビジュアル・アーティストのアニッシュ・カプーアがデザインしたセットにより、この公演は見事に様式化されたアプローチを辿った。(中略)赤と黒が舞台上を支配し、シモンの死後は皆既日食で終わる炎の夜が繰り広げられる。物語に余計な要素を加えることなく、筋書きに忠実な演出により、作品の複雑な筋書きを明瞭にするという難題に成功した。
Musical America/アメリカ [Ken Smith]
新国立劇場の新演出『シモン・ボッカネグラ』は、パンデミック後初のシーズンであり、新国立劇場にとって画期的な復帰作となる。ピエール・オーディ(エクサン・プロヴァンス音楽祭総監督およびニューヨーク・パークアヴェニュー・アーモリー芸術監督)が演出を、アニッシュ・カプーアがデザインを手がけたこのプロダクションは、フィンランド国立歌劇場およびテアトロ・レアルとの共同制作であり、新国立劇場が国際舞台に戻ってきたことを強く印象づけるものである。
(中略)
オーディは物語の細部に囚われず、登場人物の心情に焦点を当てた。望みもしない仕事に就いた男の苦悩の増大。その同じ男が、かつて失った愛が娘に対する愛に生まれ変わったことに気付く。パオロの権力への渇望は、後のヴェルディのオペラ『オテロ』におけるイアーゴのスケッチそのものだ。
(中略)
この『シモン・ボッカネグラ』は、指揮者とキャストの献身的な活躍が功を奏した。(中略)新国立劇場オペラ芸術監督の大野和士は、東京フィルハーモニー交響楽団(同劇場には常設のオーケストラはない)をクリアでニュアンス豊かな自信に満ちた演奏でリードした。また、冨平恭平の指揮による新国立劇場合唱団の声楽アンサンブルも見事だった。
MUZIK/台湾 [Eric Lien]
オペラパレスの客席に足を踏み入れると、すぐに木に包まれているような感覚を覚える。音響設計の観点から、天井、壁、床、そして客席に至るまで純木で作られているのは、この劇場の大きな特徴のひとつだ!このデザインは、観客をヴァイオリンのボディの中にいるような感覚にさせ、優れた音響効果をもたらしている。
(中略)
アメーリア役のイリーナ・ルングはロシアのソプラノで、安定感のある声質と爆発力を兼ね備え、同時にこの作品のダークな面をしっかりと把握し、このオペラの唯一のヒロインとしての地位を堅持した。政敵フィエスコであるアンドレーア役は、イタリアのバス、リッカルド・ザネッラートの手によって、複雑な真実に直面した時の心情が見事に表現された。主人公のボッカネグラ役はイタリアのバリトン、ロベルト・フロンターリが演じ、声から容姿まで、自分の運命を制御できない悲劇の人物を見事に解釈した。最後に命が尽きるシーンでは、観客の深い感動を呼んだ。
(中略)
フィナーレでシモンがガブリエルに家督を継いでほしいと最後の言葉を遺した後、光と影によって舞台上に巨大な黒い太陽が作り出されるが、これは第1幕の終わりの明るさと大きく対照をなす。権力者と慕われてきた者が本当に「権力」を持っているのか?ガブリエルが、父を失った恋人を慰めるため、すぐに総督の衣裳を脱ぎ捨てたように、おそらく次の世代は違った感覚を抱くだろう。
Opera/イギリス [David Chandler]
オーディの演出は、プロローグと第3幕のボッカネグラとフィエスコの大対決にドラマの核心を見出した。フロンターリとザネッラートは、この極めて重要な場面に見事な威厳と感情的な説得力をもたらし、運命によって逃れられない絆で結ばれ、過酷に引き裂かれた二人の男の気持ちが互いに近づいたり離れたりしながら、荒涼とした、心にしみる、緻密に調和した美しさで鮮やかに歌い上げた。
総じて、このプロダクションと公演は、まだ比較的あまり知られていないオペラを、以前よりも深く偉大なものに見せ、物語を魅力的に伝えるという、最も称賛に値する望ましい目標を達成した。
Ópera Actual/スペイン [井内美香]
オーディが選んだアプローチは、政治的成功に対抗しなければならない権力者の闘争を、一連のドラマティックな出来事として反映させることだった。これは、ジャン・カルマンによる照明の効果によっても強化されている。
(中略)
指揮台の上で大野和士はいつものようにドラマティックな場面と抒情的な場面を適切に対比させ、日本随一のオーケストラである東京フィルハーモニー交響楽団を率いて、表情豊かで繊細な部分も完璧に描き出した。
Opera Today/アメリカ [平倉菜摘子]
キャストが傑出している。ボッカネグラ役のロベルト・フロンターリは、ゲネプロ中に65歳の誕生日を迎えたが、豊かな声量とニュアンス豊かな演技で、今日のヴェルディ・バリトンの最高峰の一人としての地位を確立している。プロローグでは驚くほど若々しく無骨に見えたが、本編では新しく選ばれた総督を威厳をもって演じた。長らく行方不明だった娘とのデュエットは、抑制された情熱と感動的な歌唱で歌われた。彼が息を引き取る最後のシーンは、ニュアンス豊かな色彩と魅惑的なソット・ヴォーチェで、間違いなくこの日のハイライトだった。
Opernwelt/ドイツ [Michael Stallknecht]
プロローグでは、様式化された帆が海の上を暗示しており、第3幕では、固まった溶岩の噴出が舞台上に散りばめられている。最後に黒い太陽が降りてくる前に、火山が人物を覆い隠そうとしているかのようだ。大野和士の指揮は、色彩のコントラストが強烈な、どちらかといえば静的なイメージに合う。彼はスコアの爆発的な瞬間というより、暗い運命論に興味を示していた。(中略)大野は、音楽を注意深く聴き、常に跳躍しようとする大きな静けさの中から音楽を浮かび上がらせる。東京フィルハーモニー交響楽団は、魅惑的な明晰さで音のキャラクターや暗い色調を削り出す。
(中略)
(新国立劇場合唱団は)ヨーロッパのオペラの合唱団にはあまりない正確さ、輝き、ダイナミックな音域でアンサンブルを輝かせた。
『シモン・ボッカネグラ』の公演映像がNHKにて放送されます。
<放送番組>
NHK BSプレミアム4K/NHK BS「プレミアムシアター」
<放送予定日>
★NHK BSプレミアム4K
2024年1月21日(日)23:20~
★NHK BS
2024年1月22日(月)0:10~(21日深夜)
※編成上の都合等により放送時間は変更になる可能性があります。
内容の詳細は以下よりご覧ください。
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