オペラ公演関連ニュース
オペラ『ジュリオ・チェーザレ』リハーサル開始・コンセプト説明レポート
新国立劇場開場25周年を迎える2022/2023シーズンの開幕作品『ジュリオ・チェーザレ』のリハーサルが始まりました。
新国立劇場のリハーサル室には、2020年3月にリハーサルを中断した際に再会を誓い合ったスタッフ、キャストと、今回新たに参加するメンバーが集まり、2年半の困難な時間を経ての再会を喜び合いました。リハーサル開始にあたり、指揮のリナルド・アレッサンドリーニの挨拶の後、改めて演出補のローリー・フェルドマンからのコンセプト説明がありました。
アレッサンドリーニ:皆さんとまたお会いできてとても光栄です。今回もまた力を合わせてやっていきたいと思います。4時間という少しばかり長いオペラですけれども、よい時間を作っていきたいと思います。楽しんでいきましょう。
フェルドマン:皆さんと再会できてとてもうれしく思います。前回のチームの方が多いですが、今回新たに加わった皆さんも、よろしくお願いします。
このプロダクションは、2011年パリ・オペラ座ガルニエで上演されたものです。14年にはトリノでも上演されました。今回演出家のロラン・ペリーは残念ながら来日できないのですが、2年半前に皆さんの活躍をここで見ていましたので、上演をとても楽しみにしているとのことです。2年半前、私たちは皆、素晴らしい貴重な時間をここで過ごしました。そのエネルギーが今回のプロダクションを更に豊かで素晴らしいものにすることでしょう。
このプロダクションの舞台は現代です。カイロの考古学博物館の奥の部屋に、作業員たちがジュリオ・チェーザレの彫像と共に、エレベーターで到着したところです。博物館の職員たちは、考古学者、修復家、画家、清掃員、管理人、皆が自分たちの博物館にある品々に対して大きな敬意を抱いています。彼らの手にかかることよって美術品に命が宿るというテーマです。その中でチェーザレが目覚めて、昔の偉大な物語を再び語り始めるところから舞台が始まります。チェーザレとトロメーオの従者や軍隊に扮した博物館の職員たちは、物語の参加者となります。このプロダクションでは、私達が味気ない過去と思っている、埃をかぶった美術品――もしかしたらオペラもそのひとつという人もいるかも知れない――が時代を謳歌していることになります。
この2年半を経て、私が感慨深く感じている考えがひとつあります。今、多くの人々は自らの歴史を忘れてしまっています。世界の様々な所で悲劇的な出来事が今起こっている、そのために忘れることを余儀なくされている場合もあります。多くの若者は、象徴やメタファーを理解するということを放棄し、今生きている世界の歴史に対して敬意を持つということすら理解せずにいます。これこそこのプロダクションのテーマだと思うのです。
この作品の登場人物たちはまるで英雄のように生き生きとしています。オペラの登場人物やシチュエーションは史実とはかなり異なるファンタジー、白昼夢のようなものですが、彼らの物語として鮮やかに蘇らせることになります。ロラン・ペリーの他の作品と同様、舞台上の動きは音楽からもたらされています。喜劇性と重厚さが混在し、深い感興を生み出します。例えば埃をかぶった像の前で森谷さんが描くチャーミングなクレオパトラの姿など、とても感動的な光景です。
今回も一緒に携わってくれるスタッフの皆さんに感謝します。皆さん、ありがとう。
『ジュリオ・チェーザレ』は、10月2日(日)に開幕します。どうぞお楽しみに。
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