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オペラ『ペレアスとメリザンド』リハーサル開始・コンセプト説明レポート

2021/2022シーズンも大詰め、シーズン締めくくりとなる新制作オペラ『ペレアスとメリザンド』のリハーサルがいよいよ始まりました。

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リハーサル風景(カレン・ヴルシュ、ロラン・ナウリ)


リハーサル初日には出演者、スタッフがリハーサル室に集まり、演出コンセプトのプレゼンテーションに続いて、リハーサルがスタートしました。
ケイティ・ミッチェル演出のこのプロダクションは2016年にエクサンプロヴァンス音楽祭で初演され、ミッチェル独特のリアリズムやジェンダー観に基づいた大胆な解釈と、作品に寄り添った美しく象徴的な空気とを見事に両立させて、大評判となったものです。その後2018年にはポーランド国立歌劇場でも上演されていて、今回も出演するロラン・ナウリ(ゴロー役)はエクサンプロヴァンスで、ベルナール・リヒター(ペレアス役)はワルシャワでもこのプロダクションに出演しています。



リハーサル開始にあたり、自ら指揮もする大野和士芸術監督は「『ペレアスとメリザンド』は今回、新国立劇場では初めて舞台上演されることとなります。是非とも、歴史に残るものを皆さんと創り上げたいと思います」とあいさつ。
続いて演出補のジル・リコからケイティ・ミッチェル演出のコンセプト説明を受けました。

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演出コンセプトのプレゼンテーション風景
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説明を聞く出演者・スタッフたち


「この演出は非常に精密、精緻なコントロール、テクニカルな作り込みを必要とするものです。何しろ装置がとても大きい。しかもずっと動いています。装置が常に動くものなので、それにあわせて作り込んでいかなければならない。これがケイティの演出意図の中心にあります」


「出発点となるのは、この作品がメリザンドの夢の中で展開しているということです。この物語は実はメリザンドが見ている夢の中で起きている。これが出発点であり核心でもあります。メリザンドがずっと舞台上にいるのも、"メリザンドの夢の中で展開する"ということが大元にあるためです。メリザンドの夢の中なので彼女はずっと登場しています。そしてメリザンド以外の登場人物はすべて彼女から生み出されている、絶えず彼女の内面から出てきている存在なのです。そして全ての人物がメリザンド自身の過去と結びつく存在です。彼女が実際に生きて出会った人物と結びつく形で登場します。
冒頭では、メリザンドは花嫁衣装を着て、静かなホテルの部屋にいます。どこかから逃げてきたのだけれど、どういう状況なのかははっきりとは分からない。寝込んでしまって音楽が始まり、そこから夢の世界に入り込みます。メリザンドの夢は単に夢、夢幻ということだけではなくて、トラウマにも関係づけられています。つまりこの夢はメリザンドが経験したと思われるトラウマに色濃く影響された夢で、この作品に出て来る登場人物は皆、『ペレアスとメリザンド』という戯曲の登場人物であると同時に、メリザンドを巡る人々のトラウマ化した記憶がつかず離れず想起されていくのです。」

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演出補のジル・リコによるコンセプト説明


「音楽が始まると、様子のおかしな、猟銃を持った男がいる。当然原作に沿えばゴローなのですが、演出でイメージしているのはメリザンドの父親です。ほかの登場人物も同じように、二重あるいはそれ以上の意味合いを持っています。アルケルやジュヌヴィエーヴは同時にメリザンドの記憶のおじいさんやおばあさんのような人物でもあり、メリザンドにとっては温かみのある空気を提供してくれるところがあります。ペレアスもペレアスであると同時に、メリザンドの兄弟、おそらく弟であろうと思われます。ペレアスもトラウマになる要素があって実人生と折り合いを付けられておらず、何かを求めて何度も登場するというイメージです。イニョルドはイニョルドであると同時に、メリザンド自身、メリザンドの子ども時代が投影されていて、少女メリザンドとして演じられる必要があります。イニョルドとゴローの恐ろしい体験もこの階段で起こります。」


舞台では過去の記憶を密かに抱えたメリザンドの夢が、象徴的に展開していきます。ケイティ・ミッチェルはこの『ペレアスとメリザンド』を、ドビュッシーが書いた1本の長い旋律として捉えており、音楽と演技が感情の推移に寄り添って切れ目なく進みます。舞台の進行とともに切れ目なく場面を変えていく、演出効果抜群の舞台美術も注目ポイントです。


コンセプト説明の終わりには、ジル・リコが出演者たちへ「この演出は既に上演されたもので細かく作り込まれているし、約束事はありますが、だからと言って皆さん個人から生まれることを無視するのではなく、皆さんの提案、皆さん個人から立ち上がって来るもの、生まれるものを大事にしたいと思います。このキャストで新たに一緒に作っていくということを楽しんでいきましょう」と語りかけ、リハーサルのキックオフとなりました。



フランス象徴主義の結晶『ペレアスとメリザンド』は、斬新で美しい演出によって新たに息を吹き込まれ、大野和士芸術監督の指揮のもと、選りすぐりのキャストがフランス・オペラの神髄を伝えます。7月2日(土)の開幕をどうぞお楽しみに。

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ロラン・ナウリ
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カレン・ヴルシュ、ロラン・ナウリ
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妻屋秀和、カレン・ヴルシュ、浜田理恵
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大野和士
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ロラン・ナウリ、カレン・ヴルシュ、ベルナール・リヒター