Storyものがたり
海、そして宇宙の響き。アラトは母なるものを求め地底への入口を探し、故郷を追われ彷徨うナターシャと出会う。言葉が通じないながら名を伝えあった二人の前に、メフィストの孫と名乗る男が登場。二人はメフィストの孫に誘われ、海辺から森へ、そして現代の様々な地獄へと旅していく。
大野和士芸術監督による日本人作曲家委嘱作品シリーズ第3弾として、細川俊夫による新作オペラを上演します。現代音楽をリードする作曲家として、世界各国の主要なオーケストラ、音楽祭、劇場からの委嘱作品が次々と上演されている細川俊夫は、新国立劇場へは2018年に『松風』を上演して以来の登場、大野和士とのタッグで世界初演を行うオペラはエクサン・プロヴァンス音楽祭委嘱作品『班女』(2004年)以来となります。
人と自然の関わりを見つめ直し、祈りと鎮魂としての音楽を書いてきた細川俊夫は、特に2011年の東日本大震災以後は自然の恐ろしさ、そして自然への畏怖を忘れた人間の傲慢さを念頭に、破壊の歴史を繰り返す人間の姿を問い続けています。新作の台本を手掛けるのは、ドイツを拠点に世界を見つめ、日本語とドイツ語で国境や言語をテーマにした小説を発表し世界的に評価される作家、多和田葉子。故郷を追われ彷徨う移民ナターシャと青年アラトの邂逅、そして人間の様々な地獄絵図を見せ二人を導いてゆくメフィスト的存在を核に、日本語、ドイツ語、ウクライナ語の多言語によって、現代文明と人間の始原の姿が対比されていきます。危機に瀕した地球のうめきが根底に響き、多文化を鍵に破滅と希望が描かれるオペラです。
...託児室<キッズルーム「ドレミ」>がご利用になれます。
1955年広島生まれ。80年、ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に参加し作品を発表。以降、ヨーロッパと日本を中心に作曲活動を展開。欧米の主要なオーケストラ、音楽祭、歌劇場等から次々と委嘱を受け、高い評価を得る。オペラ『班女』(2004年、エクサン・プロヴァンス音楽祭)、オーケストラ作品『循環する海』(05年、ザルツブルク音楽祭)、ロシュ・コミッション受賞による委嘱作、オーケストラのための『夢を織る』(10年)、オペラ『松風』(11年、モネ劇場)、ベルリン・フィル、バービカン・センター、コンセルトヘボウ共同委嘱『ホルン協奏曲─開花の時─』といった作品は、大野和士、準・メルクル、ケント・ナガノ、サイモン・ラトル、フランツ・ウェルザー=メストらの指揮者により初演される。13年ザルツブルク音楽祭では同音楽祭委嘱によるソプラノとオーケストラのための『嘆き』をはじめ多くの作品が演奏された。16年、東日本大震災後の福島をテーマとしたオペラ『海、静かな海』(ハンブルク州立歌劇場)初演。17年にはアンサンブル・アンテルコンタンポラン委嘱のオペラ『二人静─海から来た少女─』がパリのシテ・ドゥ・ラ・ミュジークで初演。18年、オペラ『地震・夢』(シュトゥットガルト州立歌劇場)初演。01年にベルリン芸術アカデミー会員に選出。東京交響楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、西ドイツ放送局合唱団、ネーデルラント・フィル、モーツァルト・フェスティバル(ヴュルツブルク)のコンポーザー・イン・レジデンスを歴任。06/07年および08/09年、ベルリン高等研究所フェローとしてベルリンに滞在。12年、バイエルン芸術アカデミー会員に選出。紫綬褒章受章。18年度国際交流基金賞、21年ゲーテ・メダル受賞。現在、武生国際音楽祭音楽監督。20/21年〜、広島交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンス。
1960年東京都生まれ。早稲田大学ロシア文学科卒業後、ドイツに移住。ハンブルグ大学にてドイツ文学科の修士課程修了、チューリヒ大学で博士課程修了。学生時代から独日二カ国語で文学作品を執筆し、日本では芥川賞、谷崎潤一郎賞、泉鏡花賞、紫式部賞、読売文学賞、国際交流基金賞、朝日賞、毎日出版文化賞、ドイツではゲーテ・メダル、クライスト文学賞、アメリカでは全米図書賞を受賞。著作は30ヶ国語以上に翻訳され、世界各国で頻繁に朗読や講演などの活動をしている。ベルリン在住。最近の小説に「地球にちりばめられて」、「星に仄めかされて」、「太陽諸島」などがある。
東京藝術大学卒業後、バイエルン州立歌劇場でサヴァリッシュ、パタネー両氏に師事。ザグレブ・フィル音楽監督、バーデン州立歌劇場音楽総監督、モネ劇場音楽監督、トスカニーニ・フィル首席客演指揮者、リヨン歌劇場首席指揮者、バルセロナ交響楽団音楽監督を歴任。現在、新国立劇場オペラ芸術監督(2018年~)及び東京都交響楽団音楽監督、ブリュッセル・フィルハーモニック音楽監督。これまでにボストン響、ロンドン響、ロンドン・フィル、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、フランクフルト放送響、パリ管、フランス放送フィル、スイス・ロマンド管、イスラエル・フィルなど主要オーケストラへ客演、ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場、英国ロイヤルオペラ、エクサン・プロヴァンス音楽祭など主要歌劇場や音楽祭で数々のオペラを指揮。新作初演にも意欲的で数多くの世界初演を成功に導く。日本芸術院賞、サントリー音楽賞、朝日賞など受賞多数。文化功労者。フランス芸術文化勲章オフィシエを受勲。新国立劇場では『魔笛』『トリスタンとイゾルデ』『紫苑物語』『トゥーランドット』『アルマゲドンの夢』『ワルキューレ』『カルメン』『スーパーエンジェル』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『ペレアスとメリザンド』『ボリス・ゴドゥノフ』『ラ・ボエーム』『シモン・ボッカネグラ』を指揮している。本年3月『トリスタンとイゾルデ』を、24/25シーズンは『ウィリアム・テル』『ナターシャ』を指揮する予定。
ハンブルク出身。ハンブルク音楽演劇大学でオペラ演出の修士号を取得。ハンブルク大学で音楽学、文学、心理学を学び、 ハリー・クプファーのオペラ演出マスタークラスに参加。1995年~ 2001年にはジュネーヴ大劇場スタッフ・ディレクターを務める。ロラン・ペリーと『イタリアのトルコ人』『コジ・ファン・トゥッテ』『ファルスタッフ』『金鶏』『にんじんの王様』『連隊の娘』『サンドリヨン』『ホフマン物語』『椿姫』などで、ロバート・カーセンと『スペードの女王』『イル・トロヴァトーレ』『ナクソス島のアリアドネ』などで、フランチェスカ・ザンベロと「ニーベルングの指環」四部作、『ビリー・バッド』『サロメ』などで協働し、多くの作品の再演演出を手掛ける。これまでに『イオランタ』、ダラス・オペラ『トリスタンとイゾルデ』『フィデリオ』『ルイザ・ミラー』、ワシントン・ナショナル・オペラ『ファルスタッフ』、ヒューストン・グランド・オペラ『ロメオとジュリエット』、カイロ歌劇場『魔笛』、ジュネーヴ大劇場『カルメン』などを演出。近年の演出にバード・サマースケープ・フェスティバル『無口な女』、ウィーン国立歌劇場『魔弾の射手』『マクベス』、ジュネーヴ大劇場『ジプシー男爵』がある。21年にはエジプトで「ファラオの黄金パレード」、「スフィンクス・ロード」オープニング・セレモニーを演出した。新国立劇場初登場。
ベルギー出身。バッハから21世紀作品までオペラ、コンサート双方で活躍。主なオペラ出演に、リヨン歌劇場のツェムリンスキー『白墨の輪』、『ベアトリスとベネディクト』エロー、ザルツブルク音楽祭『魔笛』侍女Ⅰ、リール歌劇場『魔笛』パミーナ、クラーゲンフルト歌劇場『ペレアスとメリザンド』メリザンド、ポーランド国立歌劇場『松風』タイトルロール、ブレゲンツ音楽祭、アン・デア・ウィーン劇場のグルーバー『ウィーンの森の物語』、リヨン歌劇場『火刑台上のジャンヌ・ダルク』処女マリア、ヤナーチェク『利口な女狐の物語』、英国ロイヤルオペラ『ルサルカ』料理人の少年、アン・デア・ウィーン劇場のロッシーニ『イングランドのエリザベッタ女王』など。モネ劇場では『ばらの騎士』ゾフィー、『魔笛』パミーナ、『火刑台上のジャンヌ・ダルク』、『ルーチョ・シッラ』チェリア、『仮面舞踏会』オスカル、『ウィリアム・テル』ジェミ、『サンドリヨン』ネミー、『グラン・マカーブル』アマンダなどに出演。『ばらの騎士』ゾフィーでモネ劇場へ、『魔笛』侍女Ⅰでザルツブルク音楽祭へ、リヨン歌劇場へは『ベアトリスとベネディクト』エローに出演。新国立劇場では2018年『松風』タイトルロールに出演している。
東京藝術大学卒業、同大学院修士課程を首席修了。同大学院博士後期課程単位取得。武藤舞奨学金を得て、在学中にウィーンへ短期留学。2023年、第92回日本音楽コンクール声楽部門第1位および聴衆賞、第9回静岡国際オペラコンクール三浦環特別賞を受賞。これまでに日生劇場『ヘンゼルとグレーテル』ヘンゼル、『カプレーティとモンテッキ』ロメーオ、『セビリアの理髪師』ロジーナ、藤沢市民オペラ『ナブッコ』フェネーナなどに出演。コンサートでは、大野和士指揮・東京都交響楽団によるヤナーチェク「グラゴル・ミサ」、ドヴォルザーク「スターバト・マーテル」をはじめ、ベートーヴェン「第九」、ヴェルディ「レクイエム」、プロコフィエフ「アレクサンダー・ネフスキー」などでソリストを務める。日本声楽アカデミー会員。新国立劇場初登場。
国際経営学で修士号を取得した後、ドイツのユーゲント・ムジツィールトコンクールに優勝。リートとオラトリオをザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学で学ぶ。フランシスコ・ビニャス声楽コンクールでオラトリオ・リート賞受賞。ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、シュトゥットガルト州立歌劇場、バイエルン州立歌劇場、ハンブルク州立歌劇場、ケルン歌劇場、リヨン歌劇場などに出演。古典派、ロマン派作品と共に近年は特に現代作品で評価され、ヘンツェ『ホンブルクの王子』、ウルマン『アトランティスの皇帝』、カレンバッハ『サティアグラハ』などで高評を得る。ケルン歌劇場におけるリーム『TREE OF CODES』世界初演では主役のドクター/息子に出演。18年には東京交響楽団のツィンマーマン『白いバラ』日本初演にも出演している。コンサートにおいても、オランダ放送響のリーム『DER MALER TRÄUMT』、RAI交響楽団のモリコーネ『エルサレム』、フランス放送響エトヴェシュ『アトランティス』など多くの新作初演に出演。最近ではシュトゥットガルト州立歌劇場『ホンブルクの王子』タイトルロール、『ヘンゼルとグレーテル』ペーター、ウィーン国立歌劇場『オルランド』、ブラウンシュヴァイク州立歌劇場『神々の黄昏』グンターなどに出演している。新国立劇場初登場。
海、そして宇宙の響き。アラトは母なるものを求め地底への入口を探し、故郷を追われ彷徨うナターシャと出会う。言葉が通じないながら名を伝えあった二人の前に、メフィストの孫と名乗る男が登場。二人はメフィストの孫に誘われ、海辺から森へ、そして現代の様々な地獄へと旅していく。
能楽において主人公は「橋がかり」を通って、あの世とこの世とを往復します。あの世に行っても救われなかった魂は、「橋がかり」を通ってこの世にやってきて、「歌う」、「語る」、「舞う」ことによって、魂の救いを得て、再び「橋がかり」を通ってあの世へ帰っていくのです。私はその「音響の橋」を、「音のトンネル」と呼んでいます。私はこのオペラで、さまざまな「音のトンネル」を創ってみたいのです。オペラ『ナターシャ』で、二人の若い主人公、ナターシャとアラトは、メフィストの孫の案内で、「音のトンネル」を通り抜け、自然環境が破壊されたさまざまな地獄を体験します。そしてその地獄は、架空の世界ではなく、この「今の現実」の世界そのものなのです。
オペラ『ナターシャ』の全体を通奏する音響トンネル(持続音響)は、オーケストラ、合唱、テープによる自然音、現実音等が、入り混じっています。その混沌としたトンネルに、多和田葉子の「言葉」が多言語によって深く織り込まれています。音響のトンネルの奥に流れているのは、人間だけではなくて、地球そのものの「うめき」、「嘆き」の声なのです。そのトンネルを通り抜け、ナターシャとアラトは、新しい世界と愛を見つけていきます。
小説はほとんどの場合、一つの言語で書かれる。日本語の小説は日本語だけで書かれている。これは当たり前のようにも思われるが、街を歩いているといくつもの言語が耳に入ってくる今日の世界では不自然なことでもある。ドイツ語と日本語の二か国語で作品を執筆しているわたしでさえ、一つの作品の中で複数の言語を混ぜることは滅多になかった。「日本発の多言語オペラをつくろう」と細川俊夫さんに声をかけていただいた時には脳に電光が走った。オペラという形で、現代世界のダイバーシティを表現してみたい。日本発ということは、日本語に閉じこもるということではない。この地上にたくさんの言語が存在するからこそ、刺激を与え合い、それぞれの言語がいきいきと豊かになっていく。
わたしたちは文化や言語は多様だが、みんなで一緒にたった一つの「家」である地球で暮らしている。そのうち月や火星に引っ越していく人もいるかもしれないが、とりあえずほとんどの人は、この先何世代も地球で暮らしていくしかないだろう。その地球が苦しがってうめいているのだから、これは見過ごすことができない。森が燃え、洪水や旱魃が起こり、私欲に取り憑かれた人間たちが際限なく資源を貪る中で、この地球は、ダンテが『神曲』で描いた地獄そのものである。このオペラでは、そんな地獄をトリックスターである自称メフィストの孫に案内してもらい、破壊されていく様々な土地をさまよう若い二人が、迷いながら苦しみながらお互いへの愛を深め合っていく。二人の愛は多言語の愛で、しかも人間だけでなく動物や植物にも及ぶ包括的な愛である。彼らをとりまく世界にも絶えずそれ以外の言語が聞こえているが、音楽という共通言語の中で、無数の言語が一つの世界を形成していく。
席種 | S席 | A席 | B席 | C席 | D席 |
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料金 (10%税込) |
26,400円 | 22,000円 | 15,400円 | 9,900円 | 6,600円 |
席種 | 料金(10%税込) |
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S席 | 26,400円 |
A席 | 22,000円 |
B席 | 15,400円 |
C席 | 9,900円 |
D席 | 6,600円 |
○クラブ・ジ・アトレ会員の方は、先行販売期間は上記料金の10%OFF、一般発売以降は5%OFFでお求めいただけます。
Z席 1,650円(10%税込)
お申し込みの際に、割引をご利用の旨お知らせください。(D・Z席は対象外)
ボックスオフィス(窓口・電話)、Webボックスオフィスで取扱。
ボックスオフィス(窓口・電話)、Webボックスオフィス、チケットぴあで取扱。
公演当日に残席がある場合のみボックスオフィス(窓口・電話)で取扱。要学生証。
ボックスオフィス(窓口・電話)のみ取扱。要障害者手帳等。
10名以上でのご観劇の場合は新国立劇場営業部(TEL:03‐5352‐5745)までお問い合わせください。