新国立劇場 日本の現代舞台芸術年表

新国立劇場が制作、上演するオペラ、舞踊、演劇は、明治以来それぞれのジャンルが相互に影響し合い、また世界の芸術文化とともに歩んできました。この年表から現在に続く流れを概観し、現代舞台芸術の今を再発見していただけますと幸いです。

監修 
オペラ
昭和音楽大学オペラ研究所
舞踏
川島京子
演劇
佐藤優

明治 1868-1912

太字=劇場関連 国外=国外の出来事
  社会 オペラ 舞踊 演劇
 
1868 (明治元) 明治維新/3月 五箇条の誓文/9月 江戸を明治と改元 国外ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》初演
1869 (2) 戌辰戦争終了 国外ウィーン国立歌劇場開場 国外プティパ《ドン・キホーテ》初演
1870 (3) 国外サン=レオン《コッペリア》初演
1871 (4) 廃藩置県、3府72県となる 国外ヴェルディ《アイーダ》初演
1872 (5) 学制。琉球藩設置
東京府下の劇場に興行免許の交付、小芝居を公認、新設劇場も認可
1873 (6) 紀元節制定。徴兵令発布。地租改正 国外ゾラ《テレーズ・ラカン》序文で自然主義宣言
1874 (7) 国外ムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》初演/J.シュトラウスⅡ世《こうもり》初演 月刊誌「The Japan Punch」に日本最初の《ハムレット》(デンマルクの守)の独白をローマ字で紹介
1875 (8) 国外パリ・オペラ座(ガルニエ宮)開場/ビゼー《カルメン》初演
1876 (9) 廃刀令 国外バイロイト祝祭劇場開場。ワーグナー《ニーベルングの指環》四部作全曲初演
1877 (10) 西南の役、西郷隆盛自刃 国外ライジンガー《白鳥の湖》モスクワ・ボリショイ劇場で初演/プティパ《バヤデルカ》初演
1878 (11) 新富座 内外の照明にガス灯を使用した新富座新装開場
1879 (12) 琉球処分、沖縄県とする 国外チャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》初演 国外イプセン《人形の家》初演(近代戯曲の始まり)
1880 (13) 文部省に音楽取調掛(後の東京音楽学校)を設置
1881 (14) 芝公園に能楽堂できる(初の一般能楽堂) 国外オッフェンバック《ホフマン物語》初演
1882 (15) 国外ワーグナー《パルジファル》初演 国外アドルフ・ラ・ロンジュ、ドイツ座を創設、近代写実劇を上演
1883 (16) 鹿鳴館 鹿鳴館開設 国外メトロポリタン歌劇場開場
1884 (17) 秩父事件 坪内逍遙訳《該撤奇談自由太刀余波鋭鋒》(ジュリアス・シーザー)
1885 (18) 大阪・戎座で《ヴェニスの商人》初演
1887 (20) 東京音楽学校 東京音楽学校・美術学校開設 国外ヴェルディ《オテロ》初演 国外アントワーヌ、パリに自由劇場創設(近代劇運動の始まり)
1888 (21) 国外ストリンドベリ《令嬢ジュリー》初演
1889 (22) 歌舞伎座 大日本帝国憲法発布
歌舞伎座落成
国外ベルリンに自由舞台創立
川上音二郎「オッペケペー節」をうたう
1890 (23) 第1回衆議院議員選挙/第1回帝国議会招集/教育勅語発布 国外マスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》初演/ボロディン《イーゴリ公》初演/チャイコフスキー《スペードの女王》初演 国外プティパ《眠れる森の美女》初演 国外イプセン《ヘッダ・ガブラー》初演
1891 (24) 大津事件 国外ヴエデキント《春のめざめ》初演
1892 (25) 国外レオンカヴァッロ《道化師》初演 国外ロイ・フラー、パリのフォリー・ベルジェールにデビュー/イワーノフ《くるみ割り人形》初演
1893 (26) 明治座 明治座開場 国外ヴェルディ《ファルスタッフ》初演/フンパーディンク《ヘンゼルとグレーテル》初演
1894 (27) 日清戦争_水野年方 日清戦争(→1895) 赤十字募金募集音楽会でアマチュアの歌手らによりグノー《ファウスト》第1幕の舞台上演 国外オスカー・ワイルド《サロメ》初演
1895 (28) 下関条約、台湾などを獲得 国外プティパ、イワーノフ《白鳥の湖》(蘇演版)マリインスキー劇場で初演
1896 (29) 国外プッチーニ《ラ・ボエーム》初演 国外チェーホフ《かもめ》アレクサンドリンスキー劇場で初演
1897 (30) 国外アントワーヌ劇場開場/エドモンド・ロスタン《シラノ・ド・ベルジュラック》初演
1898 (31) 国外モスクワ芸術座創立《かもめ》上演
1899 (32) 川上音二郎一行、第一次欧米巡業
1900 (33) 義和団の乱 国外プッチーニ《トスカ》初演 国外パリ万博で川上音二郎、川上貞奴が公演/イサドラ・ダンカン、欧州で活動し始める
1901 (34) 八幡製鉄所 官営八幡製鐵所完成 写真は前年(1900)の建設時
足尾銅山鉱毒事件で田中正造直訴
国外ドヴォルザーク《ルサルカ》初演 高安月郊訳《社会の敵》、初のイプセン戯曲翻訳/太田ひさ(花子)コペンハーゲン博覧会へ
1902 (35) 日英同盟締結 国外ドビュッシー《ペレアスとメリザンド》初演
この頃、文壇を中心にワーグナー・ブームが起こる
国外ゴーリキー《どん底》初演
1903 (36) 小学校国定教科書令公布 東京音楽学校奏楽堂でグルック《オルフォイス》(《オルフェオとエウリディーチェ》)を上演/(日本における初めての本格的なオペラ上演)。エウリディーチェ役を柴田(三浦)環が演じる 国外モスクワ芸術座、《桜の園》初演、チェーホフ没。アイルランド国民演劇協会設立
川上音二郎一座、貞奴出演で《オセロ》を明治座で翻案上演(正劇運動、日本の女優第一号)
1904 (37) 日露戦争乃木大将、統合元帥 日露戦争(→1905) 国外ヤナーチェク《イェヌーファ》初演/プッチーニ《蝶々夫人》初演
坪内逍遥《新楽劇論》刊行
国外イサドラ・ダンカン、ベルリン近郊に舞踊学校を開設
坪内逍遙《新楽劇論》で初めて「舞踊」という語が使われる
1905 (38) 日本海海戦。ポーツマス条約日比谷焼打事件 国外R.シュトラウス《サロメ》初演/レハール《メリー・ウィドウ》初演
市川高麗蔵(七代目松本幸四郎)らにより、歌舞伎座で北村季晴《露営の夢》上演
国外バーナード・ショー《人と超人》初演
花子、ロンドンのサボイ劇場に出演
1906 (39) 巡業劇団のバンドマン喜歌劇団、初来日。1921年まで計12回来日し、浅草オペラに影響を与える/小松耕輔《羽衣》初演/東儀鉄笛《常闇》(とこやみ)(坪内逍遥作)初演 高木徳子、渡米。トゥ・ダンスを修得(1914年帰国) 国外イプセン没
文芸協会(前期)発足、坪内逍遙作《沓手鳥孤城落月》で旗揚げ、続いて逍遙訳・演出で《ヴェニスの商人》(シェイクスピア)上演(本邦初翻訳劇)
1907 (40) 小松耕輔《霊鐘》(小林愛雄作)初演、グノー《ファウスト》第1幕の舞台上演 国外フォーキン《瀕死の白鳥》(出演パヴロワ)初演 《ハムレット》(抜粋)本邦初演(文芸協会、逍遙訳)
1908 (41) 有楽座 赤旗事件
有楽座開館
貞奴、帝国劇場女優養成所初代所長に。第1期生に森律子や田村俊子ら/藤沢浅二郎、東京俳優養成所設立
1909 (42) 伊藤博文暗殺 国外R.シュトラウス《エレクトラ》初演
山田耕作(耕筰)の小歌劇《誓いの星》上演
国外ディアギレフ、パリのシャトレ座で「ロシア・シーズン」開催(バレエ・リュス第1回公演)/フォーキン《アルミードの館》《クレオパトラ》《レ・シルフィード》ほか初演
帝劇附属技芸学校にミス・ミークスが舞踊教師として着任
二代目市川左団次・小山内薫「自由劇場」創立、旗揚げ公演はイプセン作・森林太郎(鴎外)訳《ジョン・ガブリエル・ボルグマン》で有楽座にて上演
1910 (43) 大逆事件 韓国併合/大逆事件 国外マリウス・プティパ没/ルドルフ・フォン=ラバン、ミュンヘンに舞踊学校設立/ダルクローズ、ドレスデンにリトミック学校設立(翌年ヘレラウへ移転) 自由劇場第2回公演、ヴェデキント作・森鴎外訳《出発半時間前》、チェーホフ作・小山内薫訳《犬》(結婚申し込み)を有楽座で上演、チェーホフ戯曲本邦初演/自由劇場第3回公演、ゴーリキー作・小山内薫訳《夜の宿》(どん底)を有楽座で上演
1911 (44) 国外R.シュトラウス《ばらの騎士》初演
帝劇に歌劇部(14年洋劇部と改称)を創設、柴田環と契約しプリマドンナに迎える。同時に歌劇部練習生を採用
帝劇開場記念公演でミークス振付《フラワーダンス》上演(日本初の洋舞作品)/帝劇でミークス振付《クラウドバレー》上演(「バレー」と名のつく最初の作品)/帝劇が歌劇部を創設し、第一期生に石井漠、小森敏、沢モリノ等を採用
国外バレエ・リュス、フォーキン《薔薇の精》《ペトルーシュカ》初演
《ハムレット》を文芸協会(後期)が坪内逍遥訳で全幕上演。第1回試演会でイプセン作・島村抱月訳《人形の家》を松井須磨子主演で帝劇で上演/二代目市川左団次が明治座で岡本綺堂作《修禅寺物語》初演
1912 (45/大正元年) 7.30 明治天皇崩御、大正に改元 帝劇の招きでローシー来日、帝劇のオペラを指導 石井漠、帝劇歌劇部第1回公演歌劇《熊野》で初舞台
国外バレエ・リュス、ニジンスキー《牧神の午後》初演(ニジンスキー振付家デビュー)
帝劇歌劇部主任教師にローシーが来日。日本に初めてダンス・クラシックの技法がもたらされる/伊藤道郎、声楽研究のため渡欧
伊庭孝・上山草人ら近代劇協会を結成、旗揚げは、イプセン作・千葉掬香訳《ヘッダ・ガアブレル》を有楽座で/小山内薫、モスクワ経由でヨーロッパへ視察(第一次渡欧)