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【インタビュー】こどものためのバレエ劇場2026『人魚姫~ある少女の物語~』米沢 唯/速水 渉悟/奥村 康祐
2024年に世界初演された、アンデルセン童話「人魚姫」をモチーフにしたバレエ『人魚姫~ある少女の物語~』が、今年の「新国立劇場 こどものためのバレエ劇場」にて再演される。海で溺れた王子を人魚姫が救ったことから始まる、淡く切ない恋物語の振付を手掛けるのは、新国立劇場バレエ団で活躍した貝川鐵夫。貝川の信頼も厚く、初演から本作に携わるダンサー、人魚姫役の米沢唯、王子役の速水渉悟、深海の女王役の奥村康祐に話を聞いた。
インタビュー・文●功刀千曉 〈ライター〉
「ジ・アトレ」2026年6月号より
幸せな気持ちが滲む 美しくも悲しいパ・ド・ドゥ
─貝川鐵夫さん振付の『人魚姫』の印象や魅力は。
米沢 私は、初演は本番を降板してしまったのでクリエーションのみの参加での印象になります。貝川さんのそれまでの作品はどこか陰のある仄暗い印象でしたが、この作品はとても明るく素敵だなと思いました。同時に、少し意外でした(笑)。
速水 とても美しい作品。劇中で使われる「タイスの瞑想曲」が好きで、曲を聴くだけで胸に込み上げるものがあります。その音楽に乗せて踊るパ・ド・ドゥがとても素敵です。
米沢 人魚姫が、楽しかった記憶の中の王子と踊る最後のパ・ド・ドゥですね。それまでは軽やかな雰囲気で進んでいた物語が、あの楽曲に乗って、ぐっと深いところへ引き込まれるような。美しく、幸せだけど、どこか悲しいパ・ド・ドゥです。
速水 親の決めた婚約者がいることに葛藤を抱きつつも自由で溌溂とした王子から、人魚姫の記憶の中の王子へ。それまでの天真爛漫とはまた違う表情やイメージで踊りました。
奥村 アンデルセンの原作に基づく悲しい結末の余韻も魅力です。あのラストを
どう受け止めるのか─人それぞれの感じ方ができる作品だと思います。
言葉なき表現を立ち上げる、リハーサルで生まれた関係性

─深海の女王(タコ)は、踊りや仕草から言葉が聞こえるような濃厚なキャラクター造形でした。
奥村 人魚姫の「足が欲しい」という願いを叶える代わりに「声」を奪う。物語の鍵を握る深海の女王を、コミカルかつ残酷なキャラクターとして創り上げました。リハーサルでは、用意した台詞を喋りながら振付を固めていったので、それが舞台上にも表れていたのだと思います。
米沢 しっかりと対価を求める厳しさを持ちながら、人情味もあり、王子に婚約者がいると知った人魚姫に寄り添う存在でもある女王。決して「悪」一色で描かれていないのも本作の魅力。創作の過程で、奥村さんと話し合いを重ねた結果、だんだん女王が「母」のような存在になっていきました。そこには奥村さんと私の普段の関係性も反映されているように感じます。
また、台詞を発しないバレエで「声が出ない」という設定を表現することにも難しさがありました。王子に婚約者がいると知ったときの葛藤をどう立ち上げるか。視線の交わし方や、感情の運び方を試行錯誤しました。
速水 あのシーンも、時間をかけました。王子は、貝川さんから「自分なりの気まずさを表現してほしい」と言われ、それをもとに形にしていったので、目を合わせるか、視線を逸らすか、ダンサーごとに異なる表現になったと思います。その上で、人魚姫側のお芝居をどう組み立てるか。そこに女王が登場して─。
奥村 当初、女王の出番はなかったのですが、途中から、居ても立ってもいられず、お節介を焼くように出て行くことになりました。
─皆さんで創っていくところも大きかったのですね。
奥村 貝川さんからは大きな道筋をいただき、細かなテイストはダンサーに委ねてくれました。バレエ団でともに踊ってきた関係性もあり、任せてもらえたのだと思います。
速水 そして本番を終えたとき、誰よりも喜ぶ貝川さんの姿が印象的でした。ダンサー以上に、作品がどう受け止められるのか緊張されていたのでしょう。
米沢 嬉しさのあまり、"喜びの舞"を踊っていましたよね。
それぞれの思いを胸に、再びこの物語を生きる
─再演に向けての意気込みを。

奥村 前回は、本番直前に米沢さんの降板があり、なんとか作品を形にすることに精一杯だった面もあります。ただその中でも、僕も貝川さんも本番を経験したことで見えてきたものがある。ブラッシュアップした新しい『人魚姫』にしたいと思います。
速水 僕にとっても、米沢さんの不在は大きなものでした。それだけに、人魚姫と王子として再び踊れることを嬉しく思います。そして深海の女王が奥村さんだという心強さ。この三人で改めて作品に向き合い、良い舞台をお届けしたいです。
米沢 入院中にみんなが送ってくれたメッセージや動画が思い出深いというのは、少し変な話かもしれませんが。私にとってさまざまな思いのある作品です。
前回、本番を踊っていないため、作品全体については、いまだにどこか輪郭の定まらない感覚もあります。人魚姫として踊り切ったときにどんな感情が残るのか─私自身も楽しみにしています。そして、こうして速水さんと奥村さんとこの作品を踊れることに、心から感謝しています。
絵日記の主役は誰?
─子どもの頃の夏の思い出。
速水 夏休みといえば、やっぱり宿題。すぐに終わらせる派とギリギリ派、どちらでしたか。
奥村 最初は頑張るけど、途中でピタリと止まってしまって、気が付くと夏休みが終わりかけていて(笑)。ギリギリで追い込むタイプでした。絵日記もまとめて書いて、もはや「日」記じゃないという。
米沢 私は早めに終わらせるタイプでした。ドリルも一週間くらいで全部終わらせて、自由研究も「この
日までにやる」と計画を立てて取り組んでいました。
速水 素晴らしい。僕は、唯さんのような方に助けてもらう側で(笑)。始業式の日に友達に見せてもらって、必死で書き写すタイプでした。
─子どもたちに、どんな体験を届けたいですか?
米沢 楽しい夏休みの思い出として、日記に「新国立劇場バレエ団の『人魚姫』を観に行きました」
と書きたくなるような舞台になればいいな。
速水・奥村 日記に書いてくれたら嬉しいね。
米沢 でも......絵日記に描かれるのは、きっと深海の女王だと思う(笑)。
奥村 どうかな。人魚姫に想いを寄せたとか、王子様がかっこよかったとかがメインで、最後にタコも面白かった、くらいじゃないかな(笑)。
米沢 絵日記の主役は誰になるのか─センター目指して頑張りましょう!
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