バレエ&ダンス公演関連ニュース

【インタビュー】『String SAGA』五月女 遥/石山 蓮

世界初演を控える『String SAGA』は、新国立劇場バレエ団で活躍後、振付家として実績を重ねる宝満直也による意欲作だ。久石譲の音楽、また、紡績の糸が紡がれてゆく工程に着想し、新たな表現を探求する本作。宝満とともに創作に取り組むダンサー、五月女遥と石山蓮に、クリエーションへの思いを聞いた。


インタビュー・文●加藤智子 〈ライター〉

「ジ・アトレ」2026年6月号より


振付家のもと皆でクリエーションして新たな景色が見られるのが楽しい

そ五月女遥_1.jpg

五月女 宝満くんの振付作品は、彼が新国立劇場バレエ団に在籍していた頃から踊ってきました。彼がバレエ団を離れて振付家の道を進み、昨年は文化庁の新進芸術家海外研修員としてドイツで学び、さらに成長して帰ってきた中でのバレエ団委嘱作品ですから、同期入団の仲間として本当に嬉しく、一緒に素敵な作品を創ることができたらと思っています。


ダンサーとしてもストイックな宝満くんは、振付でも、ダンサーへの要求や装置、衣裳、照明に至るまで、全てにおいて妥協しません。やれることが限られる時も、その中で最大限に追求し続けます。その振付は、なぜこんなにたくさん引き出しがあるんだろうと思わせられるほど毎回テイストが異なり、常に新たなものが生まれます。バレエ団のダンサーが振り付けた作品を上演する「DANCE to the Future」では毎回作品を発表していましたが、コメディ作品を創ったかと思えば、宝満くんと私が踊った『Disconnect』のような濃密なデュエットも。最近は全幕バレエでも才能を発揮されています。彼の作品を踊る時はいつも、どんな作品になるのだろうとワクワクします。

振付の発想は、彼が日常生活で触れたものから生まれるのかなと感じています。ある時彼が、お店で食べた料理について喋りながら、そのメニューをモチーフに「作品を創れないかと思っている」とポロッと洩らしたんです(笑)。今回の作品では、糸が紡がれ、織物が織り上げられていく様を表現していくと話されていましたが、それもきっと、日常の中できれいな織物との出会いがあったのではないかなと勝手に想像しています。

今回、私は「Twist(撚る)」というパートにメインで出演します。私が踊るパートの久石譲さんの音楽はテンポが速く、しかも宝満くんの振付は一つのカウントにひとつの動きが入ることが多く、とてもハードな踊りで、Twistという言葉通り、身体をねじりながらの動きが印象的です。クリエーションの場では常に必死で、振付家の意図を咄嗟にキャッチし、即座に動いて見せることが求められます。

この作品には若いダンサーも出演しますが、作品が創られる過程において年齢や経験は関係なく、お互い刺激し合って創り上げることが大切です。振付家のもと、みんなでクリエーションすることで新たな景色を見られることがとても楽しいです。

明確なストーリーのない作品ですが、ダンサーたちはそれぞれに思いを抱いて踊ります。お客さまにも、様々な感じ方をしていただける作品になるのではないでしょうか。皆さまに"何か"が届くよう、舞台で全てを出し切りたいと思います。

振付家とのクリエーションは発見と学びの連続!ワクワクが止まりません

い石山蓮.jpg

石山 「Twist(撚る)」と「Flick & Spin(弾く、紡ぐ)」というパートに出演します。振付の宝満直也さんとは今回が"初めまして"。クリエーションでは、宝満さんから渡された振りを、できる限り漏れのないよう、自分の身体に落とし込んでいくことを大事にしています。振付家のイメージ通りに動くことはもちろん、その上で提案、発信をしてともに創り上げていきたいと思い、インプットだけでなくアウトプットも積極的にしています。

音楽は、久石譲さんの「Viola Saga」。本当に素晴らしい音楽です。たとえば山田悠貴さんと僕が二人で踊るパート「Flick & Spin」で使われる曲は、五拍子。バレエで五拍子はそれほど多く登場しませんが、『ラ・バヤデール』のブロンズアイドル(黄金の神像)のヴァリエーションも五拍子ですね。ただ今回は、テンポがすごく速いだけでなく、一つひとつの拍に対し一つひとつ振りが入ることが多く、印象は大きく異なります。飛んで、跳ねて、回って弾ける、男性ならではの力強い動きをたくさん詰め込み、楽しく創ってきたので、この先、よりしんどい思いをするのは自分かもしれません(笑)。各々で別の振りを踊りつつ、急にユニゾンになって息を合わせ、また一瞬にして別の動きに分かれるという変化の多い振付で、接触して相手を投げる場面も。どんどんクオリティを上げていくことで、それぞれの個性も出てくるのではないかと思いますが、まずは宝満さんのイメージに沿って、踊り込んでいます。山田さんと僕がこれまで演じてきた、『夏の夜の夢』のパックや『シンデレラ』の道化などを彷彿とさせるような瞬間もあるでしょう。ドキドキやヒリヒリする感覚を味わっていただける場面になると思いますが、一番は、ワクワク感。自分も本当にワクワクしています。

6つのパートでは、それぞれ、糸を作っていく工程が表現されますが、宝満さんは、しばしば「糸がパーッと出てくるイメージで」などと指示され、撚る、捻るといった動きのアイデアが振付に落とし込まれる様を体感しています。

振付家の方と一緒に作品を創っていく作業はとても刺激的。2023年には福田圭吾さんのデュエット作品の創作に取り組みましたが、「自分はこんなふうに動けるんだ」「こんな動きに発展するんだ!」という驚きがありました。新発見は今回もたくさんあります。この経験を自分の"引き出し"にできるかどうかはわかりませんが、蓄積していきたい。─いつか振付に取り組んでみたいか? それは、これからダンサーとしてどんな経験を積んでいくかによると感じています。

2025/2026シーズン 新国立劇場バレエ団 ダブル・ビル 「String SAGA/暗やみから解き放たれて」

2026年7月3日(金)~5 日(日) 全4回公演
新国立劇場 中劇場

公演情報