バレエ&ダンス公演関連ニュース
『ジゼル』/小野絢子×福岡雄大 対談
2022年、吉田都舞踊芸術監督による演出で新制作したロマンティック・バレエの不朽の名作『ジゼル』を2025年4月、待望の再演!
そして7月にはイギリスのロイヤルオペラハウスでも上演します。
新国立劇場の"今"を世界に発信する作品、吉田監督演出版『ジゼル』の魅力について、会報誌でジゼル役の小野絢子とアルブレヒト役の福岡雄大が語った対談インタビューを、改めてお届けします。
取材・構成◎ 守山実花(バレエ評論家)
新国立劇場・情報誌 ジ・アトレ 2025 年1月号掲載

【緻密な『ジゼル』 求められる自然な演技】
福岡 小野さんとはさまざまな作品でたくさん共演しているけれど、これまで『ジゼル』を一緒に踊ったのは実は一回だけ。前のプロダクション(セルゲーエフ版)で二〇一七年だったね。
小野 『ジゼル』は二〇一七年と二〇二二年の二回しか出ていないので、そうなりますね。
福岡 今回久しぶりに『ジゼル』で小野さんと組むので、どういったジゼルになるのか、自分はアルブレヒトとしてどう向き合うのか、とても楽しみだな。
小野 二〇二二年に新制作した『ジゼル』は吉田監督が初めて演出を手掛けた、バレエ団にとって大切なもの。吉田監督、ステージングと改訂振付のアラスター・マリオットさん、ジョナサン・ハウエルズさん(演出・改訂振付補佐)の三人が相談しながら決めていくというやり方で、いろいろな方向から作品やキャラクターについて見ることができました。
福岡 新制作の醍醐味だよね。作品が緻密に作り込まれていて、全員が細部まで自然な演技を要求されたけれど、それは英国ロイヤルバレエはじめ海外のバレエ団で普通にやっていることで、それを教えてくれたのだと思っています。気づかされたことがいろいろありました。経験の少ない若いダンサーたちも、あるべき方向に進めたのではないでしょうか。
あとは自分がどれだけ表現できるかですね。第一幕はジゼルとのナチュラルな駆け引きをかっこよくできたら。アルブレヒトがダサかったら嫌だよね?(笑)
小野 (笑)。キャラクターは周りによって形作られていく部分もあると思っていて。
アルブレヒトだけでなく、バチルドやヒラリオンをはじめ、かかわる人たちによってもジゼル像は変わってきます。第一幕はアルブレヒトきっかけの演技が多いので、アルブレヒトに何かされてちょっと照れるとか、相手の演技を受けてから自然に応えることが課題です。自然だけれど きちんと伝わる演技......。
福岡 「計算された自然」というのはあるよね。
小野 そう。でも嘘になってはいけません。大袈裟に演技をすべきということではないけれども、お客様に伝わるようにしなければいけないという難しさがありますね。ジゼルとアルブレヒトのやりとりはマイムのみの表現もあるので、振り返り方、歩き方、ちょっとした呼吸、目線、そういう踊りがない部分も大切にしたいです。
「狂乱の場」は第一幕のハイライトではありますが、大事なのは、どういう積み重ねがあって狂乱へ行きついたのか。それまでのアルブレヒトとの関係、物語を丁寧にしっかり積み上げていくことによって、「狂乱の場」、そして第二幕が生きてくるので、あそこだけ急に際立たせようとは思っていません。自然とあの特別な空気を作り、舞台上、客席、全ての人をドラマに巻き込んでいけたらと思います。
第二幕では女性ダンサーはウィリなので顔の表情は使えず、身体から感情や表情を出さなければいけない。難しいですね。ダンサーとして試されている感じがします。
【五組五様の 演技と踊りで】
福岡 第一幕でアルブレヒト像をどう作るか。本当にジゼルのことが好きなのか。一途......いや、絶対に一途じゃないんですけど、アルブレヒトの心情のどこに重きを置くかで第二幕の見え方が変わるでしょうから、熟考します。
第二幕はまず「悲しい」感情があり、「切ない」、「ジゼルに再会できて嬉しい」、そして「後悔」というような感情の流れです。僕としては最後は「希望」だけど、人によって考え方は違うと思う。アルブレヒトが救われてよかったのかと思う人もいるだろうし。初演の台本だとジゼルが消えた後も続きが少しあるけれど、僕は「ジゼルの物語」として完結させることを念頭に置いています。
今回は小野さんがジゼルなので、前回組んだ木村優里さんと踊った時とは自分の表現方法が異なるものになるかもしれません。さらには公演ごとに、舞台上でお互いが引き出しあうものも違えば、お客様一人ひとりの感情や求めているものも違う。だから演技って面白い。「演技を楽しんでほしい」と監督が話している記事がありましたが、バレエ団で演技を一番楽しんでいるのは僕だと勝手に自負しています。
小野 自他ともに、でしょ。
福岡 演技、楽しんでる?
小野 楽しんでいるけれど、死ぬ役はなかなか消耗が激しい。命を終えてしまう役は、通し稽古や本番で、なぜか稽古とは違う疲れがくるんですよ。稽古で同じことをしているはずなのに、なんでこんなに違う疲れがくるのか不思議に思います。
福岡 生命力を持っていかれる感じがする。死ぬ前ってすごくエネルギーを使うんだよね。経験したことないのに、舞台上では死ぬ前の状態になっているのかな。それだけ振付がすごいってことだよね。そういう風に構成して演出しているんだから。
小野 ジゼルの命は第一幕で尽きているけど、魂はまだ生きている感じがする。身体はないけど、魂はある。その生命力を、第二幕ではすごく使っている気がします。
福岡 "生きてる感"がまだ残っている。第二幕はミルタやウィリたちがピンと張り詰めた空気を作ってくれるので、そこに入っていくだけでウィリの世界に身を置いていると感じられます。初めて踊るダンサーは大変だろうけれど、若い人たちはスポンジみたいな吸収力を持っているからすごく伸びると思う。二回目の上演ということで視野も広がっているし、バレエ団のみんながどんな踊りや表現をするのかも興味があります。
小野 福岡さんは外部で『ジゼル』を演出したこともあるので、いろいろな角度から作品を見ていますよね。その上で今回はどんなアルブヒトになるのか、今から楽しみです。
福岡 主演ペア五キャスト五様で、とても面白くなると思う。演出がとても細かく、一人ひとりのストーリーが見事にできているので、それぞれの演技や踊りはもちろん、構成や話の流れも含めてお楽しみいただければ。お客様の心に届くような舞台を全員で作り上げます!

- 2024/2025シーズン『ジゼル』
2025年4月10日(木) ~ 2025年4月20日(日) 全9回公演
新国立劇場 オペラパレス
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2025年7月24日(木) ~ 2025年7月27日(日) 全5回公演
英国ロイヤルオペラハウス-
オフィシャルスポンサー:株式会社 木下グループ
オフィシャルエアライン:全日本空輸株式会社
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