バレエ&ダンス公演関連ニュース
『コッペリア』スワニルダ役小野絢子/フランツ役 井澤 駿 インタビュー
ローラン・プティ振付ならではのユーモア、しゃれた雰囲気、そして悲哀に満ちた『コッペリア』。
スワニルダ役小野絢子とフランツ役井澤駿が、一味違う踊りと演技力、魅せ方が求められる『コッペリア』の魅力を語る。
文:守山実花(舞踊評論家)
「ジ・アトレ」2023年1月号より
スワニルダ役〔23日(木・祝)・25日(土)18:00〕小野絢子
少女ではなく大人の女性のかわいらしさ 香水の香りがするイメージで
プティ版『コッペリア』で特徴的なのは、観客と対話しているような瞬間が多いこと。新国立劇場バレエ団が上演しているプティさんの作品(『コッペリア』と『こうもり』)は2つともしばしば観客の方に目線を送って話しかけます。ナチュラルだけどナチュラルではなく、お客様も1人の登場人物として存在してもらわないと成り立たない感じを受けます。
振付は他の作品よりさらに自分を一番魅力的にみせる研究が求められます。非常に難しいことですけど、プティ作品の主役は「スター」でいなければいけない。スワニルダもベラもすごくかわいらしく描かれていますが、少女ではなく大人の女性のかわいらしさが必要です。ナチュラルな柔軟剤の匂いではなく香水の香りがするイメージです。成熟した魅力を目指したいと思います。そういう意味では、プティ作品をやるときは、普段の自分からかけ離れた女性にならなければなりませんが、全然違うキャラクターになれる楽しさをとても感じます。
これまで『コッペリア』を演じてこられた方々を見ると、それぞれに個性は違います。約束事はあるものの、それよりも自分を理解して自分がどのように振舞ったら一番魅力的に見えるか、一番お客さんを惹きつけられるか、そして他のキャストと会話を楽しみ、どういうふうにプレゼンテーションするか、そういうことが大切な作品です。
キーマンはコッペリウスです。前回の上演に続きコッペリウスを演じる山本隆之さんは、(コッペリウス役ではありませんでしたが)直接プティさんに習った経験をお持ちですし、その中で学び取ったものが色濃く出ていると思います。お客様にぜひ劇場であの大人の色気溢れるコッペリウスをご覧いただきたいです。
パートナーは知的で勢いのある渡邊峻郁さん。あまり組む機会がないですが、「コッペリア」でまた共演できることを心から嬉しく思っています。
フランツ役〔24日(金)〕井澤 駿
演技・表現の大切さを実感している今 コッペリウス役山本さんからたくさん学びたい
2021年にローラン・プティ版『コッペリア』が新国立劇場で上演された際は、全公演が配信のみの無観客公演でした。配信ならでは緊張感もありましたが、たくさんのお客様が見てくださっていることを感じました。
プティ版の『コッペリア』ではコッペリウスに焦点があたっており、スワニルダと僕が演じるフランツはコッペリウスを際立たせる存在です。まさに最後の場面では、若い恋人たちの幸せな雰囲気とコッペリウスの哀しみが対比されており、フランツたちのハッピーさがあるからこそ、哀しみや切なさが浮かび上がってくるのだと思います。
フランツとスワニルダの関係に注目すると、フランツはコッペリアに夢中で、スワニルダとは気持ちがすれ違うシーンが多く、主役カップルなのに嚙み合っていない点が珍しい作品かもしれません。気持ちが通い合うのは、最後のパ・ド・ドゥです。この関係の変化について、どういう表現をしていけばいいのかを考えていきたいです。
コッペリウス役には山本隆之さんが前回に続き出演されます。前回は山本さんから醸し出されるオーラ、そこから出る表現の力に圧倒されました。立っているだけで伝わってくるものがあります。僕自身とても刺激を受けましたので、若い世代も山本さんから色々と感じて欲しいなと思います。今回またリハーサルをご一緒でき、しかも一緒に舞台に立つことができるので、とても楽しみにしています。
山本さんはテクニック的な部分はもちろん、間の取り方もすごい。まさに‛役者'です。バレエダンサーは、特に若いころは技術に頼りがちなのですが、『ジゼル』で演技・表現の部分の大切さを実感しましたから、山本さんの表現から改めて学びたいですし、プティさんから直接指導受けている山本さんからたくさんのことを吸収し、さらに成長していきたいです。
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