バレエ&ダンス公演関連ニュース

「バレエ・アステラス 2022」作品解説・ダンサーによる見どころ紹介

当公演ではクラシックの名作、ネオクラシックの人気作から「今、現在」を舞踊に映す現代振付家の舞台まで、多彩なスタイルの舞台をご覧いただけます。

当ページの「作品解説」「見どころ紹介」は作品初演順の掲載となっております。


◆作品解説執筆:川島京子

跡見学園女子大学文学部現代文化表現学科准教授

早稲田大学、東京藝術大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。早稲田大学演劇博物館招聘研究員。専門は、舞踊学、バレエ史。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得。2010年博士号取得。著書に『日本バレエの母 エリアナ・パヴロバ』(早稲田大学出版部、2012年)。

◆ダンサーによる見どころ紹介執筆:出演ダンサー


『ジゼル』(8/6 ジェシカ・マカン、中野吉章)

振付:ジャン・コラリ/ジュール・ペロー 音楽:アドルフ・アダン 1841年初演

作品解説


フランス・ロマンティック・バレエの最高傑作として名高い『ジゼル』は、1841年パリ・オペラ座で初演された。ロマンティック・バレエはロマン主義の影響を受け、妖精や魔女といった異界の女性が登場するものが多く、この作品もテオフィル・ゴーチエがオーストリアの民間伝説に伝わる悪霊ヴィリから着想を得て台本を書いた。ヴィリは結婚を目前にして亡くなった哀れな娘たち。夜になると墓から起き上がり、通りすがりの男に取り憑き死ぬまで踊らせる。今回上演されるのは、第一幕で貴族アルブレヒトに裏切られ命を落としたジゼルが、ヴィリに生まれ変わる第二幕。ヴィリの女王ミルタに、墓参りに訪れたアルブレヒトを踊りに誘惑するよう命じられるが、ジゼルは裏切られてもなおアルブレヒトに深い愛情を寄せ、アルブレヒトを守るべく墓の十字架に連れてゆき、離れないようそっと告げて一人踊る。しかし、アルブレヒトはジゼルのあまりに魅惑的な踊りに、遂に十字架を離れ踊りに加わってしまうのである。つまり自らの命を犠牲にしてもよいと思わせるほどのジゼルの美しさが描かれる場面である。

出演者・中野吉章さんによる見どころ紹介

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今回踊る『ジゼル』は表現に力を入れます。あたかも全幕の中のパ・ド・ドゥをご覧いただいているような印象を持っていただけるよう、表現について試行錯誤しています。

ご覧いただくのはジゼルが精霊になった2幕のパ・ド・ドゥですが、観ている皆様には1幕で、互いに恋する二人の様子を思い起こしていただけるような踊りをしたいと意気込んでいます。

『海賊』(8/6, 7 池田理沙子、渡邊峻郁)

振付:マリウス・プティパ 音楽:リッカルド・ドリーゴ、レオン・ミンクス 1856年演

作品解説


『海賊』は、1856年にパリ・オペラ座で初演された全3幕のバレエ。当初はアダン音楽、マジリエ振付によるものであったが、その後、数回にわたってプティパが改訂し、その間に、プーニ、ドリーブ、ドリゴ、ミンクスらの曲が加わった。物語はバイロンの叙事詩からヒントを得たもので、ギリシャを舞台に、勇敢な海賊たちが、奴隷としてトルコに売られた娘たちを救い出すという冒険譚。

このパ・ド・ドゥは、第2幕、ヒロインである奴隷の娘メドゥーラを救い出した海賊たちが、祝宴をあげる場面で踊られる。本来全幕の中では、海賊の首領コンラッドとその忠臣のアリ、メドゥーラの三人で踊るパ・ド・トロワだが、1961年に西側に亡命したソビエトバレエのスーパースター、ルドルフ・ヌレエフがこれをアリとメドゥーラによる二人のパ・ド・ドゥとしてマーゴ・フォンテインとともに世界各地で上演。瞬く間に大人気の演目となった。 オリエンタリズムあふれるメロディーに乗せて、美しいメドゥーラと雄々しい海賊アリが超絶技巧を繰り広げる。

出演者・池田理沙子さんによる見どころ紹介

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男女ともにテクニックを見せ合い盛り上がるというイメージがある作品ですが、個々で技巧を披露するというわけではなく、今回パートナーである渡邊峻郁さんとは、ふたりで信頼し合いながら、ふたりの見せ方でひとつの作品にすることを目指したいね、と話し合ってリハーサルに臨んでいます。

回転やジャンプも多く華やかな作品ですが、単純にテクニック一つひとつを見せるのではなく、音の取り方や身体の使い方に緩急をつけて、流れの中でテクニックを楽しんでいただけるよう研究しています。

出演者・渡邊峻郁さんによる見どころ紹介

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皆さんがよくご存じの『海賊』よりパ・ド・ドゥを池田理沙子さんと踊らせていただきます。ガラで踊られるというイメージがあると思いますが、ただテクニックをお見せするだけでなく、特にアダージオは見せ方で、ふたりの関係性やストーリーが見えるように持っていきたいと思っています。

『海賊』は以前に所属していたトゥールーズ・キャピトル・バレエでは主演したことがあるのですが、日本で踊る機会はあまりなかったので、とても楽しみです。

『サタネラ』(8/7 ムーセーニュ・クララ、アクリ・瑠嘉)

振付:マリウス・プティパ 音楽:チェーザレ・プーニ 1859年初演

作品解説


現在、コンサートやコンクールでおなじみの『サタネラ』のパ・ド・ドゥは、1859年、サンクトペテルブルクのボリショイ劇場に客演したイタリアのバレリーナ、アマリア・フェラリスのためにプティパが振り付けたパ・ド・ドゥ作品で、プティパ自身がフェラリスと踊った。音楽はパガニーニ作曲「ヴェネチアの謝肉祭」をプーニが編曲したもので、バレエのタイトルも『ヴェネチアの謝肉祭』として上演された。しかし、プティパは後にこのパ・ド・ドゥを、自身の作品『サタネラ』(1848、全3幕)の中に組み込んで上演したため、現在では『サタネラ』のパ・ド・ドゥと呼ばれている。プティパの『サタネラ』は、1840年にパリでマジリエによって初演された『悪魔の恋』を改訂したものであり、物語も、ロマンティック期の作品らしく、人間の青年と若く美しい魔女の恋物語。フランスの作家カゾットの小説『悪魔の恋』をもとに、青年が魔女サタネラに恋をし、婚約者を捨ててしまうというストーリーである。

出演者・ムーセーニュ・クララさんによる見どころ紹介

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©️Chris Dève

今回『サタネラ』と『コッペリア』のパ・ド・ドゥの2曲を、アクリ・瑠嘉さんと踊らせていただきます。

『サタネラ』のパ・ド・ドゥは、テクニカルな要素だけでなく、ちょっとした恋の掛け引きやコケティッシュな仕草が、音楽的に組み込まれているところが見どころの一つだと思います。

どちらのパ・ド・ドゥも非常に音楽的な振り付けで、オーケストラの方々の演奏に呼応するような踊りを楽しんでいただけるかと思います。

出演者・アクリ・瑠嘉さんによる見どころ紹介

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©️Andre Uspenski

この作品は初挑戦になります。ガラなどでよく見ていて、いつか踊りたいと思っていた作品なので、今回踊る機会をいただいて嬉しいです。明るい作品で、コーダも盛り上がります。

パートナーのクララさんもサタネラが似合うと思います。英国ロイヤルの公演では全幕作品の中で、ある役を演じることが多いので、今回のようなクラシックバレエのグラン・パ・ド・ドゥを披露する舞台は、ダンサーのすべての面がご覧いただける機会になると思います。

> 音声はこちらからお聞きください

『コッペリア』(8/6 ムーセーニュ・クララ、アクリ・瑠嘉)

振付:アルチュール・サン=レオン 音楽:レオ・ドリーブ 1870年初演

作品解説


『コッペリア』は、1870年パリ・オペラ座で初演された全3幕のバレエ。E.T.A.ホフマンの怪奇小説「砂男」をもとに、ポーランドの村を舞台に陽気な村娘スワニルダと青年フランツが織りなすラブコメディとした。フランツは人形師コッペリウスの家の窓辺で本を読む美しい娘コッペリアに恋をし、スワニルダは焼きもちを焼くが、結局その娘はコッペリウスの作った人形であることがわかり、二人は仲直り。今回上演されるのは、第3幕で幸せに包まれた二人が踊る結婚式のパ・ド・ドゥだ。

この作品は、現在も世界中で上演される人気のあるバレエであるが、初演の直後に起きた普仏戦争によってフランスのバレエは衰退したため、サン=レオンの振付はほとんど残っていない。1884年にプティパがサンクトペテルブルクで新たな振付により『コッペリア』を初演。その後、ロシアで踊り継がれるが、他のクラシックバレエ同様、ロシア革命の際にニコライ・セルゲイエフによってイギリスに伝えられ、1933年にヴィック=ウェルズ・バレエ(現英国ロイヤル・バレエ)で初演された。

出演者・ムーセーニュ・クララさんによる見どころ紹介

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©️Chris Dève

今回『サタネラ』と『コッペリア』のパ・ド・ドゥの2曲を、アクリ・瑠嘉さんと踊らせていただきます。

『コッペリア』は、スワニルダとフランツの結婚式の場面のパ・ド・ドゥで、アダージオはとてもロマンティックで流れるような振り付けです。
どちらのパ・ド・ドゥも非常に音楽的な振り付けで、オーケストラの方々の演奏に呼応するような踊りを楽しんでいただけるかと思います。

私は、2020年にパリ・オペラ座バレエ学校の卒業公演『コッペリア』全幕でスワニルダを踊る予定でした。衣裳を全て新調し、映像の世界配信も予定されていたこともあって、2020年の色々な制限がある中、バレエ学校の全員で意欲的にリハーサルを重ね、とても楽しみにしていた公演でした。学校内の舞台では踊ることができたのですが、コロナの影響でオペラ座の全ての公演がキャンセルになった時期に卒業公演が重なり、ガルニエの舞台で踊ることが残念ながら叶いませんでした。今回ヴァージョンは異なりますが、その『コッペリア』を新国立劇場の素晴らしい舞台で踊る機会をいただけて、心から嬉しく思っています。

パリ・オペラ座バレエ学校の衣裳は、オペラ座の舞台でしか使用されないのですが、「日本を代表する新国立劇場の舞台で、パリ・オペラ座のコッペリアの衣裳で、踊りを日本の皆様にご覧いただけるならとても光栄なことです」とパリ・オペラ座バレエ団・バレエ学校、そして後援会の皆様が例外的に許可をくださいました。ガルニエで披露できなかった『コッペリア』の衣裳を着て、私が新国立劇場という素晴らしい舞台でスワニルダを踊ることをとても喜んでくださっています。そうしたパリでご尽力下さった皆様の特別な想いものせて、日本のお客様のために心を込めて大切に踊りたいと思っています。

出演者・アクリ・瑠嘉さんによる見どころ紹介

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©️Andre Uspenski

『コッペリア』は思い入れのある作品です。英国ロイヤルで初めての全幕主役がこの作品のフランツでした。おそらくこの作品は、これまでいろいろな機会で最も踊っている作品なので、身体にしみ込んでいます。作品も楽しく、この若くてチャーミングな青年というフランツのキャラクターが好きです。アダージオの曲もきれいですし、コーダもものすごくエキサイティングな盛り上がりになっています。見どころがたくさんありますので、ぜひその部分をご覧ください!

> 音声はこちらからお聞きください



『ライモンダ』(8/6, 7 奥野 凜、ロベルト・エナケ)

原振付:マリウス・プティパ 改訂振付:牧 阿佐美 音楽:アレクサンドル・グラズノフ

1898年初演(2004年改訂振付初演)



作品解説

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2022年ブカレスト国立歌劇場公演のポスター

『ライモンダ』は、1898年にマリインスキー劇場で初演された、マリウス・プティパによる最後のグランド・バレエ。物語は、中世のプロヴァンスが舞台。貴族の娘ライモンダが、婚約者である騎士ジャン・ド・ブリエンヌが十字軍の遠征から帰るのを待っている中、彼女に思いを寄せるサラセン人のアブデラクマンにさらわれそうになる。しかし、そこにジャン・ド・ブリエンヌが帰還し、決闘の末二人は結ばれるというもの。今回上演されるのは、第一幕の終盤に、ライモンダが夢の中で、待ち焦がれるジャンヌと踊る幻想的で美しい場面。

『ライモンダ』全幕をレパートリーに持つバレエ団は世界的にも少ないが、新国立劇場では2004年に牧阿佐美の改訂振付により全幕初演。グラズノフの曲想を動きの細部にまで生かした振り付け、ルイザ・スピナテッリの美術とともに中世の絵画を思わせるような演出は大絶賛を博した。2008年2月にはジョン・F・ケネディ・センター主催の日本フェスティバルでも上演。そして、2022年4月にはこの牧阿佐美版がルーマニア国立バレエによってブカレスト国立歌劇場で上演された。

出演者・奥野 さんによる見どころ紹介

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©Lavinia Hutanu

『ライモンダ』のヴァリエーションは私がバレエを始めて、最初に一目惚れしたヴァリエーションです。その思い入れのある作品を日本の有名な牧阿佐美先生の振付で、10年間在籍するブカレスト国立歌劇場バレエ(=ルーマニア国立オペラ座バレエ団)で、プレミアの主役を踊らせてもらうことができ、さらに特別なものとなりました。

私をプレミアキャストに選んでくれたディレクターアドバイザーは10年前バレエ団オーディションを受けて入団した時の芸術監督でした。そんな特別な思いがさらに詰まり、この素晴らしい作品を日本の新国立劇場で踊りたいと思いました。

この夢の場のアダージオは牧先生作品ならではの一部分。優雅な曲に合わせて幻想的な雰囲気の中で、想い合う2人が踊ります。

とても素晴らしく、美しいこの作品を日本の皆さんに観ていただきたいです。



『グラン・パ・クラシック』(8/7 奥村 彩、アレクサンダー・カニャ)

振付:ヴィクトル・グゾフスキー 音楽:フランソワ・オーベール 1949年初演

作品解説


世界中のガラ・コンサートで人気の『グラン・パ・クラシック』は、1949年パリのシャンゼリゼ劇場で初演された。ヴィクトル・グゾフスキー(1902-1974)がフランソワ・オーベールのオペラ『マルコ・スパダ』の音楽に振り付けたものであるが、『マルコ・スパダ』のストーリーとは関係のない独立したパ・ド・ドゥのみの作品である。グゾフスキーは、サンクトペテルブルク出身の振付家で、ベルリン国立歌劇場、マルコワ=ドーリン・バレエ、パリ・オペラ座、バレエ・デ・シャンゼリゼほかヨーロッパの多くのバレエ団でバレエ・マスターを歴任した人物。『グラン・パ・クラシック』は、彼がパリ・オペラ座のバレエ・マスターを務めていた時に、当時エトワールであったイヴェット・ショヴィレとヴラジーミル・スクラトフのために振り付けたもの。オーベールの堂々とした音楽にのせて、跳躍や回転、難度の高いバランスなどバレエならではの見せ場がふんだんに盛り込まれた華麗なパ・ド・ドゥ。

出演者・奥村 彩さんによる見どころ紹介

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©️Katja Strempel

『グラン・パ・クラシック』は、1949 年にパリで振り付けられた作品。コンクールやガラなどでよく目にする作品かと思います。パートナーのアレクサンダー・カニャはパリ・オペラ座バレエ学校を卒業していて、在学中、様々なダンサーがこの作品を踊るのを目の当たりにしてきたそうです。そんな彼の本場仕込みのスタイルが輝く作品です。テクニカルでありながら、エレガンスさが光るのがこの作品の魅力かと思います。



『カルメン』(8/6, 7 石崎双葉、ダミアン・トリオ)

振付:ローラン・プティ 音楽:ジョルジュ・ビゼー 編曲:デヴィッド・ガルフォース 1949年初演

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『カルメン』 ©Ingo Schäfer

作品解説


『カルメン』は 20世紀の巨匠ローラン・プティ(1924-2011)による全一幕のバレエ。プティは1940年パリ・オペラ座バレエ団に入団するも、自由な創作の場を求めてたった4年で退団。ジャン・コクトーやパブロ・ピカソなど当時の前衛芸術家と交流しながら、『旅芸人』(1945)、『若者と死』(1946)など、初期の傑作を次々と発表。そして、彼を一躍時代の寵児に押し上げたのが1949年の『カルメン』である。ビゼーの有名なオペラに基づく、魔性の女カルメンと士官ホセの破滅的な恋の物語であり、主演は、彼のミューズであり後に妻となるジジ・ジャンメール、相手役のホセはプティ自身が踊った。アントニオ・クラ―ヴェの色鮮やかな美術に彩られ、プティ特有の丈の短いスカートで強調される女性の脚線美や、パリのレビュー文化とバレエを融合させたしなるような動きで描いたこの官能的な作品は、一大センセーションを巻き起こした。今回上演されるのは、作品のハイライトである、一夜を共にした二人が踊る寝室のパ・ド・ドゥ。

出演者・石崎双葉さんによる見どころ紹介

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©高橋広樹

今回踊らせて頂くローラン・プティ版の『カルメン』は、今シーズンのカンパニーのレパートリーのひとつで、主役カルメンに選んでいただきました。

30分間という短い時間の中でカルメンの人生を描かなければならず、体力的にも精神的にも大きな課題でした。

けれど、カルメンという難しい役柄をどれだけナチュラルに演じられるかを研究する過程が本当に楽しくて、色々な面で役を通して成長できたと思います。

パートナーのダミアン・トリオのカッコ良いホセ役にもご注目していただきたいです。



『ロメオとジュリエット』(8/6, 7 平田桃子、平野亮一)

振付:ケネス・マクミラン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ 1965年初演

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『ロメオとジュリエット』©AndrewRoss
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『ロメオとジュリエット』 ©AndrejUspenski

作品解説


シェイクスピアの恋愛悲劇『ロメオとジュリエット』は、18世紀末からバレエ化が試みられてきたが、1940年にキーロフ劇場で発表されたレオニード・ラヴロフスキー版は、世界中の振付家に影響を与え、様々な版を生み出すきっかけとなった。特に、1956年ボリショイ劇場バレエのロンドン公演での上演は、演劇の国でありシェイクスピアの故郷でもあるイギリスのバレエ界を大きく触発した。

今回上演されるのは、イギリスの生んだ20世紀の巨匠ケネス・マクミラン(1929-1992)が1965年に英国ロイヤル・バレエでマーゴ・フォンテインとルドルフ・ヌレエフを主演に初演したもの。敵対する貴族に生まれたロメオとジュリエットは、舞踏会で初めて出会い一瞬にして恋に落ちる。舞踏会の後も、興奮冷めやらずバルコニーに出てロメオを想うジュリエット。一方ロメオはジュリエットの部屋を探しあて、二人は再会する。二人の燃え上がる恋心がバレエならではの感情表現に置き換えられ、プロコフィエフの美しい音楽にのせてドラマティックに表現される。

出演者・平田桃子さんによる見どころ紹介

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©Mizuho Hasegawa

『ロメオとジュリエット』は私にとってすごく特別な作品です。全幕を踊って、こんなに心を動かされたのは、この作品が初めてでした。

シェイクスピアのストーリーをマクミランの振付が忠実に表現していて、プロコフィエフの美しく、かつドラマティックな音楽でさらに感情を掻き立てられます。

これぞまさにイギリスを代表する作品であり、総合芸術の象徴だと思います。

今回踊るバルコニーシーンは、一幕を閉じるのにふさわしい、このバレエで最も美しい場面です。

パートナーの平野亮一さんとこのパ・ド・ドゥを踊るのは今回が初めてですが、違うカンパニーで踊る私たちからどんなケミストリーが生まれるのか今からとても楽しみにしております。

出演者・平野亮一さんによる見どころ紹介

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©Johan Persson

『ロメオとジュリエット』は英国ロイヤルバレエの宝だと言える傑作だと思います。

先シーズンでもロメオを演じてやはり素晴らしい作品だと心より感じました。

日本の皆さんにも少しでもこの愛の物語を感じてもらえればと思い作品を選びました。

10代の頃アレッサンドラ・フェリとウェイン・イーグリングの『ロメオとジュリエット』のバルコニーシーンをクラス・レッスン前にいつも見ていた思い出もある作品です。



『トリプティーク~青春三章~』(8/6, 7 新国立劇場バレエ研修所 ほか)

8/6,7・新国立劇場バレエ研修所、渡邊拓朗、仲村 啓、服部由依、菅沼咲希、根本真菜美

振付:牧 阿佐美 音楽:芥川也寸志 1968年初演

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『トリプティーク~青春三章~』 ©SETO Hidemi

作品解説


長く日本のバレエ界を牽引し続け、昨年2021年10月にこの世を去った牧阿佐美が、新国立劇場バレエ研修所に遺した作品。戦後を代表する作曲家芥川也寸志の「弦楽のための三楽章(トリプティーク)」(1953)に振り付けた作品で、1968年3月NHK音楽祭「バレエの夕べ」で初演された。バレエにするにあたり、「青春三章」というサブタイトルをつけ、第一楽章のアレグロでは喜びに満ちた「希望」を、第二楽章「子守唄、アンダンテ」ではメランコリックな「感傷」を、第三楽章「プレスト」では奔放な「情熱」を描いた。牧阿佐美にとっても特別な作品で、1990年にレニングラードのキーロフ劇場(現マリインスキー劇場)、モスクワのダンチェンコ劇場でも披露された。また、2001年より所長を務めた新国立劇場バレエ研修所でも、2011年3月にアメリカ・ワシントンの国際バレエ学校フェスティバル、2013年11月にボリショイバレエ学校創立240周年記念国際バレエフェスティバルでこの作品を上演し、大好評を博した。


『La Pluie (the Rain)』(8/7 ジェシカ・マカン、中野吉章)

振付:アナベラ・ロペス・オチョア 音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 2006年初演

作品解説


アナベル・ロペス・オチョア(1973-)は、オランダのアムステルダムを拠点とするベルギー生まれの女性振付家。ベルギー・アントワープのロイヤル・バレエ学校を卒業後、ヨーロッパのダンスカンパニーで活躍し、2000年頃より振付を手掛ける。2013年にはスコティッシュ・バレエのためにテネシー・ウィリアムズの戯曲を基に振り付けた初の長編バレエ『欲望という名の電車』が大変な評判を呼んだ。現在はヨーロッパ、アメリカを中心に、世界中で彼女の作品が上演されている。

今回上演される『La Pluie(The Rain)』は、2006年にジュネーブ大劇場バレエのセリーヌ・カッソンとブルーノ・ロイのために振り付けられたデュエットで、音楽はJ・S・バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。

薄暗い舞台に青白く浮かび上がる男女の身体。バランスとオフバランスが作り出すゆっくりと流れるようなイマージュが美しく、いつまででも見ていたくなるような詩情溢れる作品だ。

出演者・中野吉章さんによる見どころ紹介

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アナベラ・ロペス・オチョアは世界の70以上のカンパニーに作品を提供しているとても人気のある振付家です。ピッツバーグ・バレエシアターの芸術監督スーザン・ジャフィーがぜひ彼女の作品を当バレエ団で上演したいと切望し、今年の3月にピッツバーグ・バレエでの上演が実現しました。

この作品は、元々の題材はチュニジアとロシアの戦争を描いた幕物バレエの最後に登場するデュエットです。戦争で何も無くなった中、ただ愛だけが残る、というなんとも言えない悲哀が漂う振付となっています。そこにアナベラの振付に特徴的なオフバランスのステップが入り、この作品に深みを与えています。



『On the Nature of Daylight』(8/6 奥村 彩、アレクサンダー・カニャ)

振付:デヴィッド・ドウソン 音楽:マックス・リヒター 2007初演

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『On the Nature of Daylight』

作品解説


『On the Nature of Daylight』は、現在世界中で注目されているイギリスの振付家デイヴィッド・ドウソン(1972-)が、2007年に発表したデュエット。当時ドウソンはオランダ国立バレエのレジデント・コレオグラファーを務めており、オランダ国立バレエの竹島由美子とラファエル・クメス=マルケに振り付けた。音楽はマックス・リヒターの楽曲「On the Nature of Daylight(事物の本性について)」(2004)で、このタイトルは古代ギリシャの哲学者エピクロスの宇宙論を、ローマの哲学者ティトゥス・ルクレティウス・カルスが詩の形式で解説した書からとられている。同じフレーズの繰り返しでありながらも情感に溢れる音楽であり、リヒターは当時のイラク戦争勃発に対するプロテストとして作曲したと述べている。

ドウソンのバレエでは、永劫に繰り返される他者との出会いと魂の共鳴そして別れをテーマに、バレエのボキャブラリーを拡張しつつ切なさと激しさが見事に描かれる。

出演者・奥村 彩さんよる見どころ紹介

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©️Katja Strempel

当作品を振り付けたデヴィッド・ドウソンさんとは、私がオランダ国立バレエ団にいた頃からの長い付き合いで、今までにたくさんの彼の作品を踊る機会に恵まれてきました。

その中でも、この作品を初めてオリジナルキャストである竹島由美子さん(元オランダ国立バレエ・プリンシパル)の舞台で見た時から、いつか踊ることを夢見ていたデュエットです。音楽性や、ダンサーの身体能力を最大限に引き出し、かつ表現力を必要とする デヴィッド・ドウソンの振付の魅力が詰まった作品です。

2人の人間の出会い、リレーションシップ、別れというストーリーにも注目しながら見てください。



『Walk the Demon』(8/6, 7 刈谷円香、ルカ=アンドレア・テッサリーニ)

振付:マルコ・ゲッケ 音楽:アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ 2018年初演

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『Walk the Demon』©Nederlands Dans Theater ©Rahi Rezvani

作品解説


『Walk the Demon』は、世界のダンス界でもひときわ異彩を放つ振付家マルコ・ゲッケ(1972-)が、2018年ネザーランド・ダンス・シアター1に振り付けた作品。

ゲッケは、ドイツのヴッパタール出身。ベルリンのハーゲン劇場でダンサーとして活躍した後、2005年よりシュツットガルト・バレエ団のレジデンス・コレオグラファーとなる。そして、2013年からはネザーランド・ダンス・シアターのアソシエイト・コレオグラファーとして『Hello Earth』(2014)、『Thin Skin』(2015)、『Wake Up Blind』(2016)、『Midnight Raga』(2017)などを立て続けに発表。極めて独創的かつ卓越した振付は世界中で高い評価を受け、多くのバレエ団でレパートリーとして踊られている。

『Walk the Demon』は約30分間の作品で10名のダンサーによって踊られるが、今回は初演キャストでもあった、刈谷円香とルカ=アンドレア・テッサリーニによるデュエット部分が披露される。

ゲッケ特有の薄暗い舞台の上で、小刻みに分断されたような動きがハイスピードで展開され、その独特な世界感に圧倒される。

出演者・刈谷円香さんによる見どころ紹介


マルコ・ゲッケさんには今までにNDTで三作品のクリエーションに参加する機会を頂きました。この『Walk the Demon』はその中でもマルコとの初めてのクリエーションでした。今回踊るデュエットは作品のオープニング部分でリハーサルでも最初に作り始めた部分です。
マルコは情景や形、感情などをダンサーに伝えながら動きを作り上げていくのでパズルのように組み合わさった動きもダンサーにはなんらかの意味を持って続いていきます。オープニングシーンの立っている様子は19世紀に撮られた白黒のポートレート写真に写るドイツ人夫婦だと言われました。このデュエットにストーリーはありませんが、そこから私達なりに理解を含めて踊っています。マルコの独特な世界観を日本の皆様と共有できることが楽しみです。

出演者・ルカ=アンドレア・テッサリーニさんによる見どころ紹介


『Walk the Demon』は30分ほどの作品で、今回踊るのは、オープニングのデュエットの部分です。このシーンは私たち二人にとって、とても大切な場面です。というのもこの作品のクリエーション時に、振付のマルコ・ゲッケさんと私たちダンサー二人の三人で2~3週間スタジオにこもり長い時間を一緒にすごして、作品をつくり始めた場面だからです。アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズの美しい音楽にのせて踊ることができるのも嬉しいです。このクリエーションで素敵な時間をすごせたからこそ、大切に思っている作品です。







『エスカピスト』(8/6, 7 佐々晴香、アンドレア・マリーノ)

チェロ独奏:岡本侑也

振付:アレクサンダー・エクマン 音楽:ミカエル・カールソン 2019初演

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『エスカピスト』©Nils Emil Kungliga Operan

作品解説


『エスカピスト』は、現代ダンス界の奇才アレクサンダー・エクマン(1984-)が、2019年スウェーデン王立バレエのために振り付けた作品。

エクマンはもともとスウェーデン王立バレエ学校、バレエ団出身で、その後ネザーランド・ダンス・シアターⅡとクルベリー・バレエで踊った後、2006年より振付家として活躍し、ヨーロッパを中心に50以上の作品を発表している。中でも有名な作品として、『白鳥の湖』(2014)、『夏の夜の夢』(2015)、そして2017年パリ・オペラ座バレエに振り付けた『PLAY』などがあり、今回上演される『エスカピスト』も含め、いずれも音楽はスウェーデンの作曲家ミカエル・カールソン。

「エスカピスト」とは「現実逃避主義者」の意味で、観客はエスカピストとともに、現実世界から脱し、エクマンの作り出す奇想天外な世界への扉を開く。トータル90分のこの作品の舞台上には、現実では最もありそうもないシュールな世界が次々と描き出される。しかし中には情緒的な美しい場面も織り込まれており、今回踊られるのは初演のオリジナルキャストでもある佐々晴香による「クラシカル・パ・ド・ドゥ」。

出演者・佐々晴香さんによる見どころ紹介

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©Tobias Regell

当作品は2019年にアレクサンダー・エクマンさんがスウェーデン王立バレエ団に振り付けた作品です。

とてもユニークで様々なテイストのシーンが次々と繰り広げられる作品で、観客もダンサーもタイトル通りEskapist(現実逃避者)になれる作品です。

今回私たちが踊る場面は2人のリレーションシップを表しているデュエットで感情の起伏やすれ違い、全て受け入れて共に生きていく...という皆さんも生きていく中で経験するような感情を一つのデュエットの中で素敵なチェロの音色と共に表していきます。