新国立劇場からのお知らせ

「初台アート・ロフト」開設記念レセプションの様子をご紹介


2019年7月4日(木)の開設以来、早くもご来場いただいた多くの方から反響をいただいている「初台アート・ロフト」。

一般公開日に先駆け、前日(7月3日(水))に実施いたしましたマスコミ及び関係者向けの内覧会・記念レセプションの様子をお届けします!


冒頭開会にあたっては、新国立劇場運営財団の尾﨑元規理事長より、「初台アート・ロフト」のネーミングのお披露目に加え、本展の開設を契機にさらなる芸術文化の振興を目指していく旨を、ご協力いただいた関係の皆様への御礼の言葉とあわせてご挨拶として申し上げました。




続くご挨拶として、我が国における舞台美術家の第一人者であり、この度オープニング展示の監修をお務め下さった、妹尾河童氏より約40分にわたるスピーチを頂戴いたしました。


ネーミングについて

新国立劇場の新たに誕生した舞台美術・衣裳展である「初台アート・ロフト」の名称についてこのようなコメントをいただきました。


「"初台"これで場所がわかる。
それから"アート"。芸術とか美術とか、みんなわかる。
"ロフト"、この意味は"屋根裏部屋"です。あるいは、倉庫であれば一番上のところ。そういうところを見学したり、探したりすると、こんな物が残っていたのか!という部屋なわけです。
舞台は江戸時代中期に庶民の楽しみの場として生み出されました。大事にしないと壊れてしまうような"骨董品"から、日本で今現在使用されている物、現代舞台美術を反映した物と共に舞台の全てを見せたいという思いが、"屋根裏部屋"の精神として込められている。
そういう意味で良いネーミングだと思う。」



『NINAGAWA・マクベス』の思い出

伐折羅大将像と記念撮影をする妹尾河童氏

2階ブリッジ部分(通常、開演前にカフェが設置される部分)は、妹尾河童コーナーとして、日本の演劇史に残る『NINAGAWA・マクベス』の舞台美術模型や、同作の装置である伐折羅(ばさら)大将像などを展示しております。

河童氏は『NINAGAWA・マクベス』初演時の苦労話や、わが国を代表する偉大な演出家、故・蜷川幸雄氏との思い出話を熱く語って下さいました。

本展でもとりわけ大きな展示物の一つである伐折羅大将像については、初演時観客に驚きを与えたというだけではなく、当時ライバル関係にあった俳優座と東宝舞台とが合同で舞台装置を造り上げ、美術部門の垣根がなくなった、舞台裏の人々としても記念碑的な作品であることをご紹介いただきました。
一見すれば金属製の像に見える本作ですが、素材はまさかの発泡スチロール。本物の仏像と見紛うほどに、精巧な彫刻と彩色が施されています。

名演として名高い『NINGAWA・マクベス』が、いかにたくさんの方々の努力の下に上演されたかが伺えるお話でした。


河童氏からのご挨拶中、『NINAGAWA・マクベス』を共に作り上げられた、株式会社 俳優座劇場 元顧問 原恒雄様からもお言葉を頂戴しました。

妹尾河童氏と(株)俳優座劇場 元顧問 原恒雄氏

「ひとつの芝居をつくり上げるためには、演出家やプロデューサー、技術家なりが話し合って決めたものを具現化する、舞台美術会社の我々も精神を一にする、こういった精神が現場担当として大切にしていくべきものだと思います。」



当時のお二人の思い出話に花が咲き、盟友ぶりが垣間見られたところで、式次第はフォトセッションに。

(右から)尾﨑元規 新国立劇場運営財団理事長、妹尾河童氏、中島 豊 新国立劇場運営財団常務理事



常務理事 中島 豊による乾杯の挨拶に続き、展示プランナーとしてご助力下さった方々よりお話をいただきました。


〇展示プラン:舞台美術家 伊藤雅子氏


「河童さんと密に連絡を取りつつ、"世界にない美術館をつくろう"、"見て、読んで、触って楽しい美術館を"ということをコンセプトに準備をして参りました。今後もますます発展して、舞台の裏の顔も見られるような展示場所となるよう、ご意見に耳を傾けながら進歩していければと思っております。」


〇展示プラン:舞台衣裳家 清野佳苗氏


「昨年の8月にお話しを頂いてから、約1年かかって今日という日を迎えました。新国立劇場の作品リストの中から、展示品をピックアップするところから始まりました。リストは大変に膨大なもので、それだけの作品があるということは、それだけの美術家が関わっているということ。
そう考えればこの劇場は、イマジネーションの宝庫です。

宝物の断片を、本当にわずかではありますが、皆様に間近でご覧いただければと思い、作品の選定をしました。

まだまだ宝物はたくさんあり、伸びしろがある企画だと思っておりますので、これからもご支援のほどお願いいたします。」

〇衣裳展示:舞台衣裳家 桜井久美氏



「衣裳展というのは、ただマネキンに衣裳を着させれば良い、というものではありません。一度舞台に出てエネルギーを持っている衣裳を飾るにふさわしく、この度マネキン人形自体にも新しい命を吹き込んで展示に至りました。

今回、新国立劇場の建築の素晴らしさ、とりわけ、時間と共に移り変わる太陽光線の美しさに感銘を受けました。光によって表情が変わる表側と、バックステージ・コーナーの趣は、まさしく現代アートのようです。
まだ誰も発掘していないような新国立劇場の一面を活用して、新しいアートが作り出されればと思います。」



終始、なごやかな雰囲気に包まれて、新国立劇場のオープンスペースを活用した舞台美術・衣裳展「初台アート・ロフト」がお披露目となりました。
今後、定期的な展示替えに加えて、関連講座の開催など、さらに新国立劇場が賑やかな場所となるよう努めてまいります。

「初台アート・ロフト」の展望にもぜひご期待ください!