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オペラ『夏の夜の夢』コンセプト説明

マクヴィカー演出の『夏の夜の夢』の舞台は「屋根裏部屋」。今回の新演出でも、マクヴィカー演出のコンセプトはそのままに新演出を行いました。

リハーサル中、新演出にあたったレア・ハウスマンが行ったコンセプト説明をご紹介します。


レア・ハウスマンによるコンセプト説明

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レア・ハウスマンによるコンセプト説明風景

このプロダクションはもともとデイヴィッド・マクヴィカー演出です。そのコンセプトは彼と美術・衣裳デザイナーのレイ・スミスが創り上げました。なぜこのような設定になったのかお話ししましょう。

デイヴィッド・マクヴィカーって子どもっぽいところがある人なのです。"屋根裏部屋"という所には、いろいろな思い出が詰まっています。そして子供たちにとっては、隠れて遊んだりできる遊び場です。そんな意味がこの屋根裏部屋という設定に込められています。オペラと言うより演劇的なアプローチです。屋根裏部屋では、普通の場所では起こらないようなことが起こります。子供たちにとっては、親から逃れられる場所であって、こっそりいたずら書きなんかもできる場所ですね。下手にあるあの階段(人間の役...恋人たちや職人の役が出入りの際に通る)を登って来ることによって、その屋根裏部屋という空間に入ってきてもらいたい。

シェイクスピアの戯曲というのは、理性を捨てて、人間の本性、自分自身の本能でしゃべるように書かれているものが多いのです。原作と違って、オペラではアテネで起こったことは省かれています。原作では、このオペラの物語の前に起こることとして、理性で考えたことと本能で感じたことがもっと深く書かれています。オペラでは最終幕にシーシアスとヒポリタが出てきて、理性の世界が少しだけ垣間見えるという形になっています。しかし特に4人の恋人たちにとっては、現実から逃れてくること、理性から解放されるということがとても重要です。

舞台の時代をヴィクトリア朝時代に設定した理由は、昔より男女の性的役割の差が厳しかった時代だからです。それによって、現実から逃げてきた自分をより強く出せる、という意図があります。この時代はユングをはじめ心理学の研究もよく行われていました。これも恋人たちに言えるのですが、自分の中に二人いる、夢の中の自分と現実の自分、二人がいる。この夢の世界、妖精の世界に来ている時、実は妖精たちの間では戦争が起こっています。人間も決して平和な時代ではない。そのため夢に逃げてきた。妖精たちは王様であっても子供みたいに振る舞います。そんな中に4人の恋人たちが入ってきて、バランスが崩れてうまくいかなくなる。

このプロダクションの妖精たちは、動物的です。人間よりは動物に近いものであると思います。そしてパックたちに乱されて、人間たちもだんだん獣のようになっていく。3幕でシーシアスとヒポリタが登場して、ようやく現実に引き戻されるという構造です。

職人のクインスは、コメディを書いていました。あくまでコメディです。それが伏線のひとつになっています。ピラマスとシスビーの話も恋の話になっていって、4人の恋人たちの話と繋がるようになっているんです。



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マクヴィカー演出『夏の夜の夢』モネ劇場公演より 
舞台は巨大な屋根裏部屋。
人々の衣裳はヴィクトリア朝時代の様式を取り入れている



いよいよ幕が上がる"ニューノーマル時代の新演出版"『夏の夜の夢』は、舞台ならではの創意に満ち溢れ、観客の心の扉を次々に開いていきます。どうぞご期待ください。



オペラ『夏の夜の夢』公演情報

https://www.nntt.jac.go.jp/opera/a-midsummer-nights-dream/