舞踊芸術監督 吉田都


私の芸術監督として2年目となる2021/2022シーズンは、就任時に掲げた芸術監督としてのビジョンをさらに推し進めてまいります。まず、バレエ団にとってバランスの良いレパートリーの選択。第二にバレエという芸術により多くの方が触れていただけるような、普及活動や社会貢献活動の充実。そしてダンサーたちのテクニック強化と働く環境の整備です。
2020年初頭より新型コロナウイルスの脅威に世界中が晒され、新国立劇場バレエ団も今シーズンは予定されていた演目を変更するなど、大きな影響を受けました。しかし、この状況だからこそ舞台芸術が果たす役割はより大きくなっていると感じています。その役割を全うすべく、できることから一歩ずつ前進してまいります。

バレエ公演ではまず、2020/2021シーズン開幕作品として予定されていたサー・ピーター・ライトの『白鳥の湖』を新制作で上演いたします。2020年10月からの延期を余儀なくされましたが、満を持して皆様へこの作品をお届けできることを心より喜んでおります。英国らしいドラマティックなプロダクションですので、大原前監督のシーズンより目指している、ダンサーたちの表現力の向上を感じていただけるのではないかと思います。
ホリデーシーズンには、冬の定番となったイーグリング振付の『くるみ割り人形』を、年末から年始にかけてお贈りいたします。クリスマスだけでなく、年越し、新年にもご家族で劇場にお越しいただければ幸いです。
新春の「ニューイヤー・バレエ」では新型コロナウイルスの影響により、一部の公演内容を変更して上演いたします。楽しみにしてくださっているお客様には誠に申し訳ございませんが、皆様のご理解を賜りますようお願い申し上げます。ビントレーの代表作『ペンギン・カフェ』とバランシン『テーマとヴァリエーション』をお楽しみください。
2月には「吉田都セレクション」と銘打ったトリプル・ビルをお届けします。新制作で2020/2021シーズンに上演が叶わなかったファン・マーネン『ファイヴ・タンゴ』、フォーサイスの『精確さによる目眩くスリル』、そしてレパートリーからは洒脱なローラン・プティ『こうもり』より「グラン・カフェ」と、大人の魅力を味わえる三作品をセレクトしました。
4~5月には誰もが幸せな気持ちになる名作のアシュトン版『シンデレラ』を上演。日本では唯一、新国立劇場バレエ団だけが持つ大切なレパートリーです。
シーズンエンディングの6月には、2019/2020シーズンに公演中止となったクリストファー・ウィールドンの『不思議の国のアリス』で華やかに締めくくります。
この他新しい取り組みとして、2月末には「エデュケーショナル・プログラム」と題したバレエを多面的にご紹介する企画をスタートいたします。バレエという舞台芸術の普及に貢献できるようなプログラムとなれば本望です。

ダンス公演では、新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト〈NBJ Choreographic Group〉で生まれた作品を上演する「Dance to the Future」を11月に行います。今回は「Selection in 2021」と題し、過去にご好評をいただいた作品や、2020年3月に上演中止となり公開できなかった作品も皆様へ披露する予定です。
3月の小野寺修二 カンパニーデラシネラ『ふしぎの国のアリス』は、こちらも2020年に公演中止となった作品。大人もこどもも楽しめる、想像力を刺激されるダンス公演の再演にどうぞご期待ください。
7月には初演時に新国立劇場・小劇場をはじめ日本全国で大好評を博した森山開次『NINJA』が中劇場バージョンとして新国立劇場に戻ってきます。広い空間ならではの忍者たちの躍動をお楽しみください。

コロナ禍を通して、舞台芸術というものは出演者がいてスタッフがいるだけでなく、観客の皆様に同じ空間・時間を共にしていただくことで成立する文化であることを、改めて痛感しています。新国立劇場のバレエ、ダンス公演を一人でも多くのお客様にご覧いただき、思いや感動を分かち合えるよう励んでまいります。


舞踊芸術監督 吉田都


私の芸術監督として2年目となる2021/2022シーズンは、就任時に掲げた芸術監督としてのビジョンをさらに推し進めてまいります。まず、バレエ団にとってバランスの良いレパートリーの選択。第二にバレエという芸術により多くの方が触れていただけるような、普及活動や社会貢献活動の充実。そしてダンサーたちのテクニック強化と働く環境の整備です。
2020年初頭より新型コロナウイルスの脅威に世界中が晒され、新国立劇場バレエ団も今シーズンは予定されていた演目を変更するなど、大きな影響を受けました。しかし、この状況だからこそ舞台芸術が果たす役割はより大きくなっていると感じています。その役割を全うすべく、できることから一歩ずつ前進してまいります。

バレエ公演ではまず、2020/2021シーズン開幕作品として予定されていたサー・ピーター・ライトの『白鳥の湖』を新制作で上演いたします。2020年10月からの延期を余儀なくされましたが、満を持して皆様へこの作品をお届けできることを心より喜んでおります。英国らしいドラマティックなプロダクションですので、大原前監督のシーズンより目指している、ダンサーたちの表現力の向上を感じていただけるのではないかと思います。
ホリデーシーズンには、冬の定番となったイーグリング振付の『くるみ割り人形』を、年末から年始にかけてお贈りいたします。クリスマスだけでなく、年越し、新年にもご家族で劇場にお越しいただければ幸いです。
新春の「ニューイヤー・バレエ」では新制作のアシュトン『夏の夜の夢』とバランシン『テーマとヴァリエーション』の華やかなダブル・ビルをお楽しみいただきます。英国らしい演劇的要素とアシュトンならではの独特なステップが詰まったシェイクスピア原作のバレエと、純粋に音楽と踊りの美しさを楽しめるバランシンのアブストラクト・バレエという、趣の異なる二作品をご堪能ください。
2月には「吉田都セレクション」と銘打ったトリプル・ビルをお届けします。新制作で2020/2021シーズンに上演が叶わなかったファン・マーネン『ファイヴ・タンゴ』、フォーサイスの『精確さによる目眩くスリル』、そしてレパートリーからは洒脱なローラン・プティ『こうもり』より「グラン・カフェ」と、大人の魅力を味わえる三作品をセレクトしました。
4~5月には誰もが幸せな気持ちになる名作のアシュトン版『シンデレラ』を上演。日本では唯一、新国立劇場バレエ団だけが持つ大切なレパートリーです。
シーズンエンディングの6月には、2019/2020シーズンに公演中止となったクリストファー・ウィールドンの『不思議の国のアリス』で華やかに締めくくります。
この他新しい取り組みとして、2月末には「エデュケーショナル・プログラム」と題したバレエを多面的にご紹介する企画をスタートいたします。バレエという舞台芸術の普及に貢献できるようなプログラムとなれば本望です。

ダンス公演では、新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト〈NBJ Choreographic Group〉で生まれた作品を上演する「Dance to the Future」を11月に行います。今回は「Selection in 2021」と題し、過去にご好評をいただいた作品や、2020年3月に上演中止となり公開できなかった作品も皆様へ披露する予定です。
3月の小野寺修二 カンパニーデラシネラ『ふしぎの国のアリス』は、こちらも2020年に公演中止となった作品。大人もこどもも楽しめる、想像力を刺激されるダンス公演の再演にどうぞご期待ください。
7月には初演時に新国立劇場・小劇場をはじめ日本全国で大好評を博した森山開次『NINJA』が中劇場バージョンとして新国立劇場に戻ってきます。広い空間ならではの忍者たちの躍動をお楽しみください。

コロナ禍を通して、舞台芸術というものは出演者がいてスタッフがいるだけでなく、観客の皆様に同じ空間・時間を共にしていただくことで成立する文化であることを、改めて痛感しています。新国立劇場のバレエ、ダンス公演を一人でも多くのお客様にご覧いただき、思いや感動を分かち合えるよう励んでまいります。

プロフィール

9歳でバレエを習い始め、1983年ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞受賞。同年、英国ロイヤルバレエ学校に留学。84年、サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ(現バーミンガム・ロイヤルバレエ)へ芸術監督ピーター・ライトに認められて入団。88年にプリンシパル昇格。95年に英国ロイヤルバレエへプリンシパルとして移籍、2010年に退団するまで英国で計22年にわたり最高位プリンシパルを務める。
日本国内では1997年の開場記念公演『眠れる森の美女』をはじめ、新国立劇場バレエ公演での99年『ドン・キホーテ』『シンデレラ』、2000年『ラ・シルフィード』、04年『ライモンダ』ほか、数多くの公演に主演している。
ローザンヌ国際バレエコンクール審査員を務めるほか、後進の育成にも力を注いでいる。バレリーナとしての功績と共にチャリティ活動を通じた社会貢献が認められ、04年「ユネスコ平和芸術家」に任命される。12年には国連UNHCR協会国連難民親善アーティストに任命。
01年芸術選奨文部科学大臣賞、06年英国最優秀女性ダンサー賞、11年第52回毎日芸術賞など受賞多数。07年に紫綬褒章並びに大英帝国勲章(OBE)受賞、17年文化功労者、19年菊池寛賞。